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番外編XII.レヴェッカ・ドフェルは転生者 後編

 キードゥル83年11月


(な、なんでっ!? どうやって入ってきたの!?)


 わたしはびっくりした。わたしたちの後ろに二人の男女がいたのだ。

 ルードルフも驚いたようだが、武官らしく剣を構えている。


「……どうやって入った?」


 ルードルフが警戒した様子で声をかける。

 赤褐色の髪の女と、灰色の髪に黒いメッシュの入った男。


(イケメンだっ!)


「……」


 ルードルフの問いかけに、男女は答えない。

 しらを切らしたルードルフは剣を引き抜こうとした。


「キャハッ」


 ルードルフの剣は抜けなかった。

 まるで鍵でもかけられたかのように。


「貴様! 私の剣に何を!?」

「さァ? ()()()()、君の剣が錆びちャッてたんじャない?」


 女は愉しそうに笑う。声――というよりかは、喋り方が変な人だ。


「いいのォ? 君とあたしが戦ったら君は死んじャうと思うけどォ」

「……いい加減にしろ。ルーラ、其方は面白がるな。本題を話すぞ」


 ルーラと呼ばれた女と、もう一人の男はわたしたちを通り過ぎて、マリナ様の横に立つ。


「マリナ様、その者たちは……?」

「……」


 マリナ様はニコリと微笑んで、立ち上がった。


「こちらは、〈運命の女神〉ルーラ様。そして、こちらが〈虚偽の神〉シェズカレト様です」

「よッろしくねェ」

「……」


(神様って、ホントにいるんだ……?)


 わたしはそう思った。日本では八百万の神々、という神道があるし、他国にもいろいろな宗教、宗派がある。でも、わたしはそこまで神、という存在を信じていなかった。


「え、いや……本当の話なのですか、マリナ様?」


 わたしの思いとは別に、ルードルフは信じられないようだ。


「えぇ。わたくしは、〈運命の女神の遣い〉と呼ばれる存在なのです」

「そ。あたしの手伝いをしてくれる存在さァ。世界で唯一。一人だけの存在ッ」


(よく分からないけど……とりあえず、マリナ様は〈運命の女神の遣い〉という凄い方なんだわ)


「理解しましたわ」

「……理解が早くて助かる」


 〈虚偽の神〉様はボソッとそう呟いた。


(……これは褒めてもらえたのよね? 喜んでいいわよねっ!)


「マリナ、精霊のことも」

「分かりました、シェズカレト様」


 〈虚偽の神〉様の言葉に、マリナ様は頷く。


「イグニス」


 マリナ様がそう言うと、しばらくして謎の生物が現れた。妖精だろうか。


「ヤァ、あるジ〜」

「これはわたくしの専属精霊、イグニスです。精霊界でのトップ――八大精霊という精霊の一人です」

「ヨッ、主の下僕共」


 燃えるような赤の髪を揺らして、イグニスはそう言った。


(……殺してやろうかな)


 レヴェッカはそう思いつつ、それを封じ込めてニコリと微笑んだ。


「初めまして。レヴェッカ・ドフェルと申しますわ」

「……」


 そう言われたイグニスは黙った。


「イグニス、そういった呼び名はよくありませんよ」


 マリナ様がそう言って窘める。


(あぁ、女神様のようだわっ!)


「イグニス、彼らとはわたくしの目的にも仲良くしてほしいのです」

「……はーイ」



 不貞腐れつつ、イグニスはそう言った。表面上だけでも取り繕ってはくれるだろう。


「あの、マリナ様、目的とは?」

「……わたくしの目的。それは、一番になることです」

「一番?」


 わたしの疑問に、マリナ様は愉しそうに頷く。


「わたくしは一番でありたいのです。わたくしは()()()の国がほしい」

「……っ、それ、は……!」


 ルードルフが反応する。


(どういう意味よ?)


 いつも冷静で余裕そうでウザったらしいのに。


(変なの)


「……それが、マリナ様のお望みであれば」


 ルードルフがそう言うと、マリナ様はニッコリ微笑んだ。


「……あの、〈運命の女神〉様と〈虚偽の神〉様はマリナ様に協力する、ということなのですか?」


 わたしは恐る恐るそう口にした。


「んー? あァ、そうさ」

「……マリナ様は〈運命の女神〉様のお手伝いをする立場なのでは……?」

「あッはは! キミにしては賢いねェ。……〈遣い〉というのは、神から特別扱いされる立場だ。マリナはもうすでにあたしのお手伝いをしてくれててねェ。それに、これもお手伝いの一環と言ッてもいいのさッ」


 〈運命の女神〉様は愉しそうにそう言った。


(わたし、馬鹿にされてる気がするんだけど)


 信仰していないとはいえ、神に不敬を働くのは流石にやめておきたい。


 そうして、このメンバーでマリナ様の目的を遂行することとなった。



 ◇◆◇



「疲れた……」


(何時からだったかな。人が目の前で死んでいくことに、躊躇わなくなったのって)


 マリナ様と主の盟約を結んでから約六年。

 マリナ様がいつもと変わらぬ笑顔で命令を下すものだから、もっと頑張ろうと思ってしまう。

 頑張るのが当然なのだと。


 ルードルフは武官ということもあって、少々は慣れていたようだが、流石に躊躇はあったらしい。

 最近ではわたしと同じく慣れているらしいけれど。


「ルードルフ、レヴェッカ。次はイグニスとの仕事です」


(イグニスかぁ……)


 一応、イグニスに対して、表面上は敬った態度だけど、それでも会わないことに越したことはない。


「今度ヒサミトラールから使者としてやってくるラシェル・ヴァソール。彼女の暗殺です」


 ニコニコとマリナ様はいつも通りの笑顔を崩さない。


(なんで、人の暗殺を命じるのに、そんなに平然としていられるんだろう……?)



 わたしは、少しだけマリナ様が不気味に見えていた。


(でも、マリナ様は〈聖女〉だもの。きっと、そのラシェル・ヴァソールは悪い人なのよ)


 いつもそう思ってわたしは人を殺す。だって、そう思わなきゃ、やっていけないじゃない。


 そう、悪いヤツは殺さなきゃ。マリナ様は優しく、美しく、きっと、正しいのだもの。


(だから……きっと、大丈夫よ)

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