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空白の魔法使い  作者: 小里花織
第二章 集いし魔法使いたち
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第十一話 黒幕

「これがその」

「うん」


机の上にあるそ(・)れ(・)を見て、思わず口角が上がってしまう。

これが……


「これのおかげで犯人に近づけそうだな。ありがとう。よる」

「どういたしまして。こっちこそケーキありがとう」


もぐもぐとケーキを頬張るよる。


一日中探し物をしてもらったのだ。

これくらいの報酬はあって然るべきだろう。


「でも、犯人は一体誰なんだろう」

「それを考えるのがかりちゃんの役目でしょ?」

「まぁね」


意識せずとも表情筋がひきつってしまう。


「そらとかたなけん君を疑うのはいいけど、そらは今日凄く頑張ってたし白だと思うけどね。はい正座」

「なんで正座……」

「あーんしたげるから」

「この年になって幼馴染にあーんされる気持ちを考えて」

「中学校で人気だった美少女がJKになってあーんしてくれるシチュエーションを考えて」

「正座がなかったら最高だったかもな。正座する理由無くない?」

「じゃああげない」

「すいませんいただきます」


数日前にもしたような返事を正直に答え、床に正座する。

差し出されたよるの食べかけのスプーンを口に入れると甘い味が鼻を突き抜けた。


おいしい。

紗菜に人気のスイーツ店を聞いておいてよかった。


ちなみに、今更間接キスがどうとか意識するような間柄ではない。

普段から同じ皿の飯を食べてるのだから。


「新婚みたい」

「拒否する。兄妹。よるが妹」

「まさかのかりちゃんの妹になれる!?アリかも……」

「うちはすでに妹が3人もいるからやっぱペット枠でいいかな」

「じゃあ死刑」

「もぎゅ」


口の中に生クリームを突っ込まれ、締まりのない声が漏れる。


何してるんだろう僕。

とりあえず、犯人の考察をしなきゃな。


口に突っ込まれた生クリームを飲み込む。

すでによるはケーキに夢中だった。


頭の中を真っ白にし、一旦深呼吸をする。

落ち着いて、長く時間をかけてまばたきをし、再度深呼吸する。

今までの情報が脳内を錯綜、異常なほど回転が速くなった頭で思考の海へと突入する。


(犯人は、今も僕たちのことを警戒しているのか?だとしたらどこから僕たちの情報を入手しているんだ?)


様々な考えが浮かんでは消える。

全ての物事を整理し、考える。

今までの言葉、情報の数々を照らし合わせる。


『伊藤さんは操られてた……』

『あれ、体が暴走に追いついていなかった』

『水もらってもいいか……』

『確か入山さんという方が……』

『五里って女子から話しかけないでって……』

『知りえるはずのない情報……』

『沙振は氷属性、五里さんは雷属性……』

『私が入山ですが……』

『そるぁの今後の学校生活に……』


「……!」


点と点が、繋がった。


「よる!」

「わぁぁ!びっくりしたぁ」

「わかったんだよ!」

「へ?」


ポカーンとした顔で、手を洗っていたよるがこちらを振り向く。

彼女が持っていたタオルが宙を舞い、呆けた彼女の顔にパサリとかかる。

そんな彼女の手をとり、興奮する気持ちが抑えられず話し始める。


「犯人は多分沙振だ。あいつがなんで今の伊藤さんの情報を知っていたと思う?」

「むぐ……うぇ?そういう情報網をもってるんでしょ。犯人だと決めつけるには焦りすぎじゃない?」

「違う。仮に沙振を犯人だと仮定すると、全て辻褄が合うんだよ。その理由はまず前の授業が体育だったこ……」


どたん。


「えぇ!?かりちゃん!?」

「ごめん。足がしびれた」


話していて気づかなかった。

つい先ほどまで正座をしていたのに急に立ち上がったのだ。

急に足が電流が走ったような感覚に襲われ、体を支えられず前のめりに倒れてしまう。

当然、手を握っていたよるごと。

つまり、今は仰向けのよるに倒れこむような位置関係なわけで……。


「わーっ!」

「痛っ!」


押し倒されることに我慢できなくなったよるが能力で爆発を起こし、壁に叩きつけられる。

()()()()()()()()()()|。


「あっ。ご、ごめんかりちゃん。大丈夫?」


よるが心配して駆け寄ってくるが、心配いらない。

むしろ()()()()()だ。


「ああ。よる、もう必要ない」

「え?あ、いいの?本当に?」

「もう大丈夫だ。答えは出た」


そう言ってしびれが抜けた足を起こして立ち上がる。

突然おかしなことを言い出し、首を傾げたよるだが、すぐに理解が追いついたのか、こちらの言葉の意味がわかったようだ。


犯人は、()()()()()()


――――――――――――――――――――――――――


放課後。それは学生……特に華の高校生にとって最も重要な時間。

部活、バイト、デート、はたまた自分のためにゆっくりしてもいいかもしれない。

そんな時間に自分は何をしているのだろうか。

後ろから彼を……北白狩也(きたしろかりや)を襲い、この廃屋に連れてきた。

黒髪にどす黒くついた赤いメッシュ。

特別整っているわけでもない平凡な顔つき。

細く筋肉がついた肉体は、ここまで運ぶのにもかなり苦労した。

ただ、無能力の彼は縛りつけた椅子から抜け出すのは不可能だろう。

しかし、真犯人までたどり着いたのなら、なんとしても彼は始末しなくてはならない。

能力を使用してしまえば、身元がバレる危険もある。

首をロープで絞め、自殺に見せかけてしまえばいいのだ。

そして、輪にしたロープを持ち、彼に近づく。


「おっと。もう処刑の時間か?」


風前の灯となった自分の命を気にする素振りもなく、目の前の彼は口を開いた。


――――――――――――――――――――――――――


周りが見えない。

恐らく目隠しをされているのだろう。

椅子に縛られ、体の自由もきかない。

だが、目の前にいる誰かが自分の発言に驚いたのは気配でわかった。


「さーて。少し茶番劇が過ぎたね。気づいていたのかは知らないけど」


絶体絶命のピンチすら気にせず話す。

目の前の誰かが少し後退したのがわかった。


「想楽に疑いの目が向いたのはそっちにとって都合がいいことだった。想楽があの事件を起こしたのなら、こちらの個人的調査を邪魔するだろう。だけど想楽はそんな事しなかった。たなけんも同じだ。調査の後で事実確認しても、彼らは真面目に調査していた。じゃあ、そんな裏がとれている人たちを僕が疑うのか?」

「……!」

「今の反応、やっぱり僕らが想楽とたなけんを疑っていたことを知ってたんだな」


まずい、というように、目の前の誰かが狼狽えた気がした。


「僕が想楽とたなけんを疑っていることを知っているのは一人だけだ。じゃあその一人、宵野夜繰(よいのよるくる)が犯人だ」


そう言った。

目の前の誰かがため息をつく。

そのまま無言でこちらにロープを掛けようとしている気がする。


「って、言うと思ったか?」


ロープを持った手が止まった気配がした。


「よると何年一緒にいると思ってる。彼女と僕はこの春から東京に来た。伊藤さんなんていう人、知ってるわけがない。知ってたとしてもあんなことをする人間じゃねえよ。よるは」

「……。」

「よるは、僕がお前に盗聴機と盗撮機を仕掛けられてることまで察してくれた。ほんと、幼馴染ってものは末恐ろしい。昨日までの僕とよるの話は、お前を欺くための茶番だよ」


そして、爆弾を放り込む。


「そもそも、想楽が疑われるその状況を作ったのは、僕なんだから」


そう。

想楽を悪人に仕立て上げたのは、紛れもない、北白狩也なのだ。


「事件解決には、早めに噂を流して動くことが重要だったし、何より事件の調査をする理由作りになるからな。仲良くしてる女の子が疑われてますー。だから事件の解決をしたいんですーってね」

「……っ」

「やっとわかったか?お前はまんまとこちらの術中にはまったんだよ」


少々煽りぎみに言うが、目の前の相手はまだこちらの命を奪うことはない。

警戒しているのか。

慎重な奴だ。


「さてと……。そうしてお前は疑われなかったわけだが。そうなるとこちらの調査の進展が気になるだろう。クラス内でも人望の厚いよるがいることだしな。想楽を疑わせたのはそうしてお前をおびきだすための罠ってわけだ」


相手は何も言わない。


「もちろん、そうして作戦通りお前は餌に食いついた。想楽の噂を知っていてなお、自分は情報通ではないと言った。僕が聞き込みをしたときに、肩を叩くふりをして盗聴機をしかけた。ずいぶんと焦ったな。それに、想楽を心配していたあの言葉も嘘じゃない。お前の行動で他人が疑われるのが嫌だったのか?」


ここまで言われれば、相手も自分の身元が割れていることに気づいたことだろう。


「そうだろう。仮役職の……いや、今は現職のクラス委員にして、水属性の能力者、京口鏡弥(きょうくちきょうや)!」

「フフ……。流石だよ。北白君」


目隠しが外される。

場所は……どこだかわからない廃屋だった。

そして目の前に立っているのは、予想通り、眼鏡をかけたクラス委員だった。


「君の言うとおりさ。こうして君を縛りつけたのも、伊藤さんに特殊な細工……もとい薬を盛ったのも僕だ」


彼の眼鏡のレンズが、怪しく、そして白く光った。

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