↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後ブレーメン  作者: まーサンタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/21

第16小節 「開幕の瞬間」



⸻


地区コンクール当日。


⸻


朝から空気が違っていた。


⸻


会場となる県立文化ホールには、


各学校の制服を着た生徒たちが次々と集まっている。


⸻


大きな楽器ケース。


緊張した表情。


真剣な眼差し。


⸻


そこには、


この日のために努力してきた音楽が集まっていた。


⸻


「……すごいな。」


⸻


白石玲央(しらいし れお)は、


会場の雰囲気を見渡して呟く。


⸻


「みんな、本気だ。」


⸻


隣で水野美琴(みずの みこと)が小さく頷く。


⸻


「私たちも……その中にいるんですよね。」


⸻


その言葉に、


神谷奏(かみや かなで)は静かに笑った。


⸻


「そうだよ。」


⸻


「ここまで来た。」


⸻


⸻


客席


⸻


観客席には、


青葉ヶ丘学園の関係者も姿を見せていた。


⸻


桐谷響子(きりたに きょうこ)はもちろん、


教頭や数名の教師たち。


⸻


普段は厳しい表情を見せる教頭も、


今日は静かにステージを見つめていた。


⸻


「……ここまで来ましたか。」


⸻


小さく呟く。


⸻


その隣の教師が微笑む。


⸻


「生徒たちの力ですね。」


⸻


教頭は答えず、


ただ舞台へ視線を向けた。


⸻


⸻


そして。


⸻


客席の一番後ろ。


⸻


壁にもたれながら、


一人の男性が立っていた。


⸻


黒川蓮司(くろかわ れんじ)。


⸻


透の父親。


⸻


腕を組み、


静かに息子たちの姿を見守っている。


⸻


誰にも声をかけない。


⸻


ただ。


⸻


そこにいた。


⸻


⸻


待機時間


⸻


「次は……。」


⸻


アナウンスが響く。


⸻


上位常連校の演奏が始まる。


⸻


奏たちは客席で他校の演奏を聴いていた。


⸻


圧倒的な音。


揃ったリズム。


完成された表現。


⸻


「……すごい。」


⸻


美琴は思わず呟く。


⸻


玲央も真剣な表情で舞台を見る。


⸻


「俺たち、あれと戦うのか。」


⸻


不安ではない。


⸻


ただ。


⸻


自分たちがどこまで届くのか。


⸻


その現実を感じていた。


⸻


⸻


それぞれの緊張


⸻


しかし。


⸻


普段一番強気な玲央が、


今日は落ち着かなかった。


⸻


何度も時計を見る。


⸻


何度もチューバケースを確認する。


⸻


「玲央。」


⸻


奏が声をかける。


⸻


「さっきから五回目。」


⸻


「何が?」


⸻


「ケース開けるの。」


⸻


玲央は気まずそうに目を逸らす。


⸻


「……ちゃんと入ってるか確認してるだけ。」


⸻


透が小さく笑う。


⸻


「落ち着けよ。」


⸻


「お前が一番騒がしい。」


⸻


「お前は平気そうだな。」


⸻


玲央が聞く。


⸻


透は一瞬黙った。


⸻


「……。」


⸻


そして。


⸻


「別に。」


⸻


そう答える。


⸻


しかし。


⸻


奏は気づいていた。


⸻


透の手。


⸻


トランペットケースの持ち手を握る手には、


汗がにじんでいる。


⸻


⸻


「透も緊張してるんだ。」


⸻


美琴が驚く。


⸻


透はすぐに睨む。


⸻


「当たり前だろ。」


⸻


「何だと思ってる。」


⸻


「俺だって人間だ。」


⸻


その返答に、


三人は少し笑った。


⸻


いつもの透だった。


⸻


⸻


ライバルの舞台


⸻


そして。


⸻


会場の空気が変わる。


⸻


「次の団体は……」


⸻


アナウンスが流れる。


⸻


「白鷹学院高等学校。」


⸻


⸻


奏たちは顔を上げた。


⸻


ライバル。


⸻


朝倉悠真(あさくら ゆうま)の学校。


⸻


⸻


舞台袖から、


白鷹学院のメンバーが現れる。


⸻


無駄のない動き。


迷いのない表情。


⸻


その中心に、


悠真がいた。


⸻


彼もまた、


小編成でのエントリー。


⸻


人数ではなく、


音で勝負する学校。


⸻


⸻


舞台へ上がった悠真は、


客席を一度見渡す。


⸻


その表情には、


余裕があった。


⸻


緊張など感じさせない。


⸻


⸻


「すごい……。」


⸻


美琴が呟く。


⸻


玲央は息を飲む。


⸻


透は黙って舞台を見る。


⸻


奏だけは、


悠真の姿から目を離さなかった。


⸻


(強い。)


⸻


直感で分かる。


⸻


彼は本気だ。


⸻


⸻


指揮者が舞台中央へ立つ。


⸻


会場が静まり返る。


⸻


楽器を構える。


⸻


息を合わせる。


⸻


そして。


⸻


指揮棒が、


ゆっくりと振り上げられる。


⸻


その瞬間。


⸻


白鷹学院の音楽が、


始まろうとしていた。


⸻


第16章


「開幕の瞬間」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。