↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後ブレーメン  作者: まーサンタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/21

第12小節 「初めてのライバル」



⸻


地区コンクールまで、あと一か月。


⸻


放課後ブレーメンは毎日のように練習を重ねていた。


一年生二人も基礎練習を繰り返し、


少しずつ吹奏楽部らしい音になってきている。


⸻


「よし、今日はここまで!」


⸻


桐谷響子(きりたに きょうこ)が笑顔で手を叩く。


⸻


「みんなに知らせがあります。」


⸻


部員たちが顔を上げる。


⸻


「今週末、地区の強豪校との合同練習が決まりました。」


⸻


「えっ!」


⸻


美琴が目を丸くする。


⸻


「強豪校ですか?」


⸻


桐谷は頷いた。


⸻


「コンクール常連校よ。」


⸻


「きっと勉強になる。」


⸻


奏は静かに拳を握る。


⸻


「……お願いします。」


⸻


合同練習


⸻


週末。


市民文化ホール。


⸻


広いリハーサル室には、


数十人規模の吹奏楽部が集まっていた。


⸻


「人数、多いな……。」


玲央が思わず呟く。


⸻


「緊張します……。」


美琴も周囲を見回す。


⸻


その中で透だけは腕を組み、


静かに周囲を観察していた。


⸻


強豪校の演奏が始まる。


⸻


圧倒的だった。


⸻


息の揃い方。


音の厚み。


一糸乱れぬ演奏。


⸻


玲央は思わず息をのむ。


⸻


「すげぇ……。」


⸻


奏も目を離せなかった。


⸻


(これが地区の上位校……。)


⸻


エース奏者


⸻


休憩時間。


⸻


一人の男子生徒が透の前に立った。


⸻


制服の胸には、


強豪校・白鷹学院の校章。


⸻


トランペットケースを肩に掛けた二年生。


⸻


白鷹学院のエース奏者、


朝倉悠真(あさくら ゆうま)。


⸻


「昨日動画で見たよ。」


⸻


朝倉は笑う。


⸻


「君が途中から出てきたトランペットだろ?」


⸻


透は無言。


⸻


「なかなか良かった。」


⸻


「でも。」


⸻


朝倉は鼻で笑う。


⸻


「所詮、話題になっただけだよな。」


⸻


透の眉が動く。


⸻


「地区コンクールは遊びじゃない。」


⸻


「一曲成功したくらいで勝てるほど甘くない。」


⸻


透は何も言わない。


⸻


朝倉は今度は奏へ視線を向けた。


⸻


「あんたが部長?」


⸻


奏は静かに答える。


⸻


「違う。」


⸻


「へぇ。」


⸻


「でも指揮してるのはあんただろ。」


⸻


朝倉はニヤリと笑う。


⸻


「そういえば。」


⸻


「昔、本番で演奏止まった奴ってあんた?」


⸻


その一言で、


奏の表情が固まる。


⸻


「才能があるって騒がれて。」


⸻


「本番で真っ白になって終わった。」


⸻


「有名だったよな。」


⸻


透の拳が震える。


⸻


「てめぇ……。」


⸻


一歩踏み出そうとした、その瞬間。


⸻


「ふざけるな!!」


⸻


先に声を上げたのは玲央だった。


⸻


「人の過去を笑って楽しいのか!」


⸻


「奏は逃げてない!」


⸻


「今も俺たちを引っ張ってくれてる!」


⸻


玲央は今にも掴みかかりそうな勢いだった。


⸻


美琴が慌てて止める。


⸻


「玲央君!」


⸻


その姿を見て、


透はふっと息を吐いた。


⸻


(……危ねぇ。)


⸻


さっきまで頭に血が上っていた。


⸻


でも。


⸻


玲央が自分以上に怒ってくれた。


⸻


そのおかげで、


透は冷静さを取り戻す。


⸻


透は一歩前へ出る。


⸻


朝倉の目を真っ直ぐ見据える。


⸻


そして、


静かに言った。


⸻


「うちの大将を甘く見るな。」


⸻


その声には怒鳴るような勢いはなかった。


⸻


だからこそ、


重く響いた。


⸻


「今はまだ、お前が上かもしれねぇ。」


⸻


「でも。」


⸻


「その差は、俺たちがひっくり返す。」


⸻


朝倉は鼻で笑う。


⸻


「大口だけは一人前だな。」


⸻


「地区で当たったら教えてやるよ。」


⸻


そう言い残し、


踵を返して歩いていく。


⸻


「せいぜい一回戦敗退しないようにな。」


⸻


その背中を見送りながら、


誰も言葉を発しなかった。


⸻


やがて奏が小さく笑う。


⸻


「ありがとう。」


⸻


玲央は照れくさそうに頭をかく。


⸻


「仲間だからな。」


⸻


透はぶっきらぼうに鼻を鳴らす。


⸻


「……勘違いするな。」


⸻


「大将を馬鹿にされるのが気に食わなかっただけだ。」


⸻


その言葉に、


美琴は思わず笑った。


⸻


地区コンクールまで、


残り一か月。


⸻


放課後ブレーメンは、


初めて「超えるべき相手」と出会った。


⸻


そして四人は、


心の中で同じことを誓う。


⸻


――絶対に負けない。


⸻


第12章


「初めてのライバル」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。