湖
「膝枕しますか?」
「ん?してくれるの?」
「…寝たいのかと。」
「ありがとう。してくれるなら言葉に甘えようかな。」
私がしたいみたいじゃないか。向かいに座っていた殿下が隣に移動してくる。
「メグに出会えて良かったよ。」
「大袈裟ですよ。はい。殿下どうぞ。」
「アルだよ?アルって呼んで。」
「馬車内は良くないですか?」
「咄嗟に呼んじゃうでしょ?呼び方に慣れないとね。ね?メグ。」
「…アル様。」
恥ずかしい。愛称で男性を呼ぶことなどないのに、何故殿下を愛称で呼んでいるのか。嬉しそうに殿下は私の頭を撫で横になる。
「おやすみ。」
「ゆっくり眠ってください。おやすみなさい。」
不思議な関係だわ。雲の上である殿下と膝枕仲間になり休みに一緒にお出かけするなんて。殿下って婚約者居なかったよね?え?居たっけ。居たなら大問題だな。あとで聞くか。寝息が聞こえる。目の下に小さなホクロがある。肌綺麗だな。
「…外でも見とこう。」
綺麗すぎる殿下を見ていたら変な気持ちになったので、窓から街並みを見ていたら段々森に入っていく。綺麗な景色だな。
「殿下着くそうですよ。」
揺すって起こす。最初は戸惑っていたが段々慣れてきて今では気にせず揺する。じゃないと深い眠りに落ちた殿下が起きてくれないのだ。
「嫌だ。」
「何がですか?」
「メグが殿下ってまた呼ぶ。」
「アル様起きてください。」
「よく寝た。ありがとう。本当癒されるよ。」
満足そうに殿下が起き上がる。どんな我儘だ。眠れるようになった殿下は前より生き生きして見える。
「着いたよ!さぁ行こう。」
「アル様最近楽しそうですね?眠れると違いますか?」
「そうだね。凄く癒やされてるからね。」
「そうなんですね。」
いつまでするのだろうか。私もずっと居るわけでは無いしどうするのだろう。
「あ、そういえば。気になったのですが。」
「うん?何?何でも聞いて。」
「アル様って婚約者っているのですか?」
「え?今さら?居ないよ。居たらメグとこうやって出かけないよ。私は一途だからね。」
「そうなんですね。居たら抹殺されたらどうしようかと思いました。」
「安心して。メグだけだよ。」
「安心では無いですね。」
アハハってアル様は楽しそうに笑っている。私は部下なのでそんな事言われても困るのだが。この奥が綺麗なんだとエスコートされる。
「わぁ!湖が澄んでいて綺麗ですね!こんな場所あるのですね。初めて知りました。」
「王家の管理地だからね。私も久しぶりに来たよ。」
「え?そんな所に私入って良いんですか?」
「私が連れてきたのだから大丈夫だよ。座ろう。」
いつの間にかピクニックセットが用意されている。王家に使える方たちはやはり優秀だわ。良い天気だなー。暖かい陽射しが心地良い。
「落ち着くね。メグはロバートと仲良いの?名前で呼び合ってるよね?」
「そうですね。学生時代良くしていただきした。生意気な私に優しくしてくれ3年間いつも話していた気がします。」
「羨ましい。私もメグと一緒に学生時代を過ごしたかったな。ロバートに恋したりしなかった?格好良いでしょ?」
「無いですね。勝手ながらライバルだと思っていました。皆さん憧れてましたが私は戦友のような気持ちでしたね。」
「本当?ロバートが令嬢と仲良いなんて珍しいから気になってたんだよね。ご飯食べる?散策する?」
「ご飯食べたいです!」
「メグはいつもご飯だね。」
笑いながら用意をしてくれる。侍女の方がさっと現れ準備をしてくれ食べれるようにしてくれた。
「はい。あーん。」
「え?」
「落ちちゃうよ?早く。」
慌てて食べる。何故殿下に食べさせてもらっているのか…嬉しそうに次も待っている。意味が分からない。
「あの…自分で食べれます。」
「うん。膝枕のお礼だから気にしないで?」
「は?むぐっ…」
口に次々と食べ物が運ばれどんどん食べてしまう。やっぱり王宮のご飯美味しい。いつも昼出してくれるご飯も美味しいんだよね。私はご飯のために膝枕してる所もある。
「お腹いっぱいなった?」
「やっぱり最高に美味しいですね。お腹いっぱいです。殿下食べました?」
「…」
「アル様!」
「うん。食べたよ。」
にっこり笑う殿下を憎たらしく思う。誰も居ないのだから殿下でよくない?私悪くないよね?
「ロバート様ならそんな事しないのに。」
ぐいっと腕を掴まれ引き寄せられたと思った瞬間、殿下が目の前に居て唇が重なる。え?口付けされてる?
「…最低!」
涙が出てくる。バッと立ち上がり走る。嫁入り前なのに!初めてだったのに!なんでこんな事するの!うわーん!唇を手の甲で擦りながらとにかく走る。もう帰る!!
「ゴメン!」
一生懸命走ったのに気付けば殿下の腕の中に居る。殿下も走ってきたようで息が乱れている。ギュッと抱きしめられる。
「…帰ります。離してください。」
「嫌だ。離したらもう私を見てくれなくなる。」
「…今まで通り接します。」
「君が好きなんだ。ロバートの事を口にしたからヤキモチを妬いた。」
「…え?殿下が?私を?」
「メグがいたら癒やされる。ずっと一緒に居て欲しい。」
「えっ…と、ゴメンなさい。無理です。」
「え…そんなはっきり断る?」
「急に口付けするような方は嫌いです。」
「…ごめん。」
腕の力が弱まり殿下から離れる。顔を見る真っ青な顔をして落ち込んでいる。無理!走って逃げ侍女さん達の元へ急ぐ。帰りたいと伝えると慌ただしくなり、殿下の許可が出たらしく侍女さん達が乗ってきた馬車で家に送ってくれた。




