何で
何故王子様が私にもたれ掛かって寝ているのだろう。殿下の執務室勤務になり1週間…先程業務の話をソファーに座りしている内に、何故か肩にずっしりとした重みを感じた。
慌てて声が出たが殿下の返事が無く、寝息が聞こえたのだ。珍しい。眠る殿下など見たことがない。執務室勤務になって分かったが、殿下は早朝から遅くまでずっと働いている。
「どうしようかな…もう少ししたら起きるかな?」
お昼休み直前の出来事で休憩時間になった今、どうしようかと悩んでいる。お腹すいたな。誰か帰って来ないかな。
「殿下いますか?」
ロバート様だ!助けてもらえる!もたれ掛かって寝ている殿下を見て、目を見開き驚いている。
「助けてください。」
「いつから?」
「先程です。起こしていいですか?お腹空いたんです…。」
「ん…」
あ、起きた?と思ったけど、また寝息が聞こえる。ダメかー。もう少し寝させてやってとロバート様は出ていってしまった。
「マーガレット嬢これ。」
戻ってきたロバート様の手には食べ物が!もうお腹ペコペコだよー。受け取ろうと動いた時、殿下がズルズルと滑り膝枕した形になってしまう。
「起きないですね。」
「起きないな。珍しい。」
「まぁいいか。いただきます!お腹空いてたんで嬉しいです。」
膝に殿下を乗せたままサンドイッチをいただく。美味しい!もぐもぐと食べていると膝上の殿下が動く。起きた?
「…おはようございます。」
「エール嬢?…!!」
殿下が飛び起きる。焦る殿下が周りを見渡しロバート様を見て驚いている。
「私寝ていた?」
「はい。半時間くらいですかね。」
「驚きましたよ。用事出来たら寝てるんですから。マーガレット嬢にお礼言ってくださいね。」
「すまない!ご飯もここで?」
「ロバート様が先程持ってきてくれました。殿下も食べますか?」
「いや…エール嬢が食べて。ロバート向こうで話を聞くよ。エール嬢は休憩時間延ばしてくれていいからね。本当ごめんね。」
ロバート様を連れて殿下が出て行った。肩痛いな。んーっと伸びをして体を動かす。固まっちゃった。殿下疲れてたのかな?
「エール嬢少し残って貰ってもいい?」
「はい!」
退勤時間になり帰ろと支度をしていたら殿下に声をかけられる。何か失敗した?えーどうしよう。慌てて殿下の元へ向かうと、にこやかな顔をしている。
「何か間違ってましたか?」
「いや、違う。エール嬢は間違いなく丁寧な仕事をしてくれているよ。これなんだけど。」
はいって箱をくれる。箱を開けると綺麗な髪飾りが入っていて慌てて殿下を見る。
「殿下?!」
「今日のお詫び。」
「受け取れません!」
「それとお願いがあって…その分も入ってる。」
「お願いですか?何でしょう?私に出来るな事なら何でも。」
「君にしか頼めない。膝枕をして欲しい。」
「は?」
「私眠れないんだ。毎日2〜3時間で目が覚めてしまい熟睡出来ない。それが今日半時間眠っただけで頭がすっきりして疲れが取れたんだ。」
眠れないなんて耐えられない。私は毎日8時間寝ないと体調が悪くなってしまうから辛さがわかる。
「膝枕は今ですか?」
「今日は昼のがあったから大丈夫。明日から昼か帰り半時間だけ時間を貰えたら…。毎日じゃなくてもいいから。」
「いいですよ。そんなお願いならいくらでも。これはお返ししますね。」
「いや、でも!」
「膝枕で受け取れません。」
「何かお礼はしたい。」
「んー…お昼の時はお昼ご飯用意してくれたら嬉しいです。お腹空いちゃいますから。」
「それでいいの?」
「はい。殿下が眠れないのは国の損失ですからね。私でお役に立てるなら対価なんていらないですよ。」
ありがとうと微笑む殿下は、今まで見た誰よりも綺麗な顔をしていて直視出来なかった。
「マーガレット嬢遅くなってごめんね。気をつけてかえってね。」
え?名前?と思ったがまた明日ねと部屋から出される。ロバート様が名前で呼んでるからかな?まぁいいか。
「マーガレット嬢今日お昼いい?」
次の日からご飯が用意され膝枕を提供する日々が始まった。帰りの時はお菓子を用意してくれて、半時間経ったら起こして少しの時間会話をするという謎の時を過ごしている。殿下は普段とは違いプライベートな事など色々喋ってくれる。
「明日休みだね。何処か行くの?」
「いえ。特に予定は無いので家でボーッとします。」
「私と出かけない?明日は時間あるんだ。」
「え?私が殿下とですか?」
「そう。湖行こう。」
あ、休みも寝たいのかと思い、いいですよと返事をする。迎えに行くと言われたので固辞し、執務室で待ち合わせと約束をして帰る。休みだから余計寝たいだろうな。眠れないなんて本当可哀想。
「おはよう。普段の制服姿も可愛いけど、普段着はさらに可愛いね。毎日見たいな。」
「ありがとうございます。さすが殿下は社交辞令が上手いですね。」
「私は立場上勘違いされるような社交辞令は言わないよ。今日はメグって呼ぶね。私の事はアルって呼んでね。」
「え?はい。わかりました?え?」
今日はお忍びデートだからねって微笑む殿下に手を取られ歩き出す。高級ながら質素な馬車に案内され、乗り込みと行こうと出発する。何かずっと殿下のペースに巻き込まれている気がする。大丈夫かな。




