初めて
「ねぇ、休憩時間眠らせてくれない?」
執務室にて膝枕で眠る王子様を見つめながら、何でこんな事になったのか思いを巡らせる。
「え!私が殿下の執務室ですか?」
「マーガレット嬢頼む!人が居なくて困っているんだ!」
「無理ですよ!まだ3年の新人ですよ?!」
「宰相補佐の推薦なんだ!これは決定だから!明日から頼むな。」
立ち去る上司を憎く思いながら、宰相を恨む。宰相補佐は学生時代の同級生で、学生の頃から成績を競っていた。殿下の側近であり公爵家嫡男の方で、伯爵家でありながら生意気な口を聞く私にもライバルだからと許してくれていた。宰相補佐であるロバート様の推薦なら…いや!やっぱりおかしいでしょ!私はしがない文官なのに。
「マーガレット移動って本当?!」
「明日からだって…嫌だな。ここの職場最高だったのに。」
「どこに移動なの?」
「殿下の執務室。最悪じゃない?」
「…羨ましい。あの見目麗しい殿下だよ。何で嫌なのよ?普通だったら雲の上の方なんだから!」
「学生時代から高位貴族って苦手なのよね。その最上位じゃない…私の代わりに行く?」
認められるわけないじゃないと呆れた目で言われる。ですよねー。
「マーガレット嬢明日から頼むね。」
帰り廊下を歩いていると、ロバート様にこっそり呼ばれ頼まれる。
「何故私なのですか?新人ですよ?」
「マーガレット嬢は私が認める才女だからね。誰かいないかって言われたら、君を推薦する他ないよね。」
「卒業して3年ですよ?ここでは埋没してますよ。」
「いやいや、君の上司達からは良いことしか聞かないよ。だから今回反対は起きなかった。それが君の評価だよ。」
ぐぬぬ…そんなに褒められたら何も言えない。ロバート様に認めらるのは嬉しい。恋愛感情を抱いたことは無かったけど、私はロバート様を尊敬しているし大好きなのだ。
「殿下は少し気難しいけど基本人には優しいし、もし何かあったら私に言ってくれたらいいからね。」
「…わかりました。ダメだったらすぐ戻してくださいね。」
「欲が無いなー。学生時代の君はもっとガツガツしていたのに。」
「うっ…社会に出て色々学びました。」
「殿下は優しいけど甘くはないからね。明日から頑張って。じゃお疲れ様。」
お疲れ様ですと家に帰る。疲れたな。ロバート様には呆れられてしまったし…学生時代の様にガツガツなんていけないよ。王宮なんて賢い人達の集まりだし、令嬢なんて結婚までの腰掛けとか嫌味言われるし。殿下の執務室でダメなら辞めようかな。婚約者でも探して領地に引きこもるのも悪くないよね。
「マギーおかえり。遅かったな。」
「ただいまお父様。あの私婚約者探そうかな。」
「どうした?仕事は辞めるのか?探していいなら探すが。」
「移動になって…もしかしたら辞めるかも。そうなったら結婚するのもいいかもって思って。」
「打診はしとくが無理はしないように。いつもマギーは仕事を楽しそうにしているじゎないか。辞めたら後悔するかもしれない。ゆっくり考えなさい。」
「ありがとうお父様。」
頭を撫でられお父様の優しさを感じる。でも20歳になったしそろそろ独り立ちするか、結婚して家を出るか考えないといけない。あと少しして兄が結婚したらお嫁さんが家に来るし、どうしようか。あ、ロバート様にも結婚相手探してもらおうかな。良い人紹介してくれそうだし。今度聞いてみよう。
「マーガレット·エールです。今日からよろしくお願いいたします。」
「アルバートだ。よろしく頼むな。宰相補佐から優秀だと聞いている。」
「ありがとうございます。」
アルバート殿下を遠くから見たことはあったが、近くで見ると神々しい。眩しいくらいに整っている。キリッとした藍色の瞳に撫でつけられた黒髪がさらに凛々しさを醸し出している。
「君の席はあちらだ。わからない事があったらそこにいるルッソに聞いてくれ。なるべく私を煩わさないように。」
「はい!承知しております!」
煩わさないですよ!怖っ!ルッソ様お願いしますと慌てて向かう。やっぱり雲の上なんて関わるべきじゃないな。
ルッソ様は丁寧に仕事を教えてくれ、与えられた仕事に没頭していたら声をかけられる。
「マーガレット嬢何度か声をかけたのだが」
「殿下!すいません!」
「いや、集中するのはいい事だ。休憩時間だから休みなさい。」
「え?もう休憩時間ですか?」
そうだよと微笑む殿下は意外と可愛らしい。笑うとこんな感じなんだな。
「はい!仕事は忘れてご飯食べてきな。」
「殿下はお昼どうされるのですか?」
「私はココで食べるから大丈夫だよ。はい!休憩時間無くなっちゃうから。」
部屋から出され食堂へと向かう。怖い人では無さそう。ロバート様も殿下は優しいって言ってた気がする。昼からも頑張ろう!




