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第6話 先輩、僕の夢に近づかないでください!

うっかり眠ってしまった僕は、

冷たいものに触れた気がした。

その冷たい感触が、まだ残っている……。


僕、触覚がある?


僕はそっと目を開けた。

机の上には飲み干されたビール缶があり、

空気には芳香剤の匂いが漂っていた。


僕は目を見開いた。

目がすごく痛い!


僕は、自分が個室の中にいると確信した。

点滅する照明が、何度も僕の顔を照らしている。


僕は手を持ち上げ、指が一本も欠けていないか確かめた。

そして慌てて、自分の顔と体を触った。


さらにスマホを取り出す。

黒い画面には、怯えた僕の顔が映っていた。


全部ある。

本当によかった。


異世界の英雄に転生できると思っていた僕は、

まさか球体になっていた。


しかも、狂った女神の広範囲石化術を止めるため、

僕は必死に光って気を引くしかなかった。


あれは全部、悪夢だったのか?


「いやいや、元二郎。今日の『裙類』仮装を忘れるのはまだしも、

なんでずっと恵子を見てるんだよ。やっぱり気があるんだろ!」


「先輩、そういうこと言わないでくださいよ!」


後ろから先輩の声がして、僕はびくっとした。

見ると、恵子は口元を押さえてくすっと笑っていた。


僕は思わず唾を飲み込む。

そして、少しだけ淡い失望も覚えた。


「別に、わざとじゃないのに……。」


あれ?

なんで急に体が動かないんだ?


さっき、裙類仮装って言った?

先輩は何を着てるんだ?


どうしてか、振り向くなと直感が叫んでいた。


「どうした、元二郎?

なんで突っ立ってるんだよ。」


先輩の手が僕の肩に乗る。

たくましい腕と、剃ったあとの脇がすぐ近くにあった。


そのすぐそばで、

制汗剤の匂いが僕の鼻に入り込む。

脇が見える服って、いったい何なんだ?


「先輩、近すぎます!」


「元二郎、こっち向けって。

ついでにビールもう一本開けてくれよ。乾杯しようぜ!」


その瞬間、赤い裾がふわっと揺れた。

そして、先輩の引き締まった日に焼けた太ももが見えた。


いかにもアウトドアが好きそうな脚だった。

なんで太ももなんか見えてるんだよ!


「元二郎?

早くこっち向けって!」


先輩の声はやけに優しかった。

しかも、布の感触まで伝わってくる。


でも、一回衝撃を受けたくらいなら、

もう平気なはずだ。


だって人間には免疫ってものがあるし……。


目の前が暗くなった。

そのあと、体を軽く揺さぶられる。


「元二郎?

なんで目を閉じてるんだ?

気分でも悪いのか?」


まずい。

僕は目を開けてしまった。


すると先輩は、ソファにゆったり座っていた。

しかも、ぴちぴちのチャイナドレス姿で。


隣では同僚たちが大笑いしている。


なんだ。

旗袍だったのか!


「僕の中の旗袍の印象を汚さないでくださいよおおおっ!」


「桃晝、どうしたの?」


僕は叫んだあと、自分が草の上に寝転んでいると気づいた。

草が擦れるざわざわした感触が、風に乗って僕の肌を撫でていく。


アフーは驚いた顔で僕を見ていた。


「えっ、お前……いや、僕?

僕、戻ったの?」


僕は驚いて手を持ち上げ、自分の全身を触った。

それから金色の髪を指にくるくる巻きつける。


「へへ、黑牙が桃星からの証明の手紙を受け取ったんだ。

あの魔道具師匠が、確かに同意したってね。


桃星が記憶と魔力の軌跡を持ち去ることを、ちゃんと認めてた。

だから黑牙が確認を終えて、『身分』をお前に返したんだよ!」


「はぁ?

あいつ、僕を先に攻撃してきたんだよ?


そんな簡単に返すの?」


僕はとても信じられなかった。

すると女神は「ちっ」と舌打ちした。


「当然でしょ。

だって、この女神である私が保証したんだから!」





「ふん、一般民衆……。」





「は?

今、何て言ったの?」


「何でもないわ。

あの怖いやつが、

もう僕たちのところに来ないといいけど!」


「あとで黑牙が直々に、お前を村のみんなに紹介してくれる。

白爪は今、部分的に光って点滅できるようになってるんだ。


黑牙は、

それがいったい何を意味するのか研究したいらしい。

だから僕たちは先に、この近くを少し見て回ろう。」


「お前、あいつを攻撃したのか?」


「してないよ。

あれも手段の一つだし。

そんな疑うような目で見るなよ。

私、本当に口で言っただけだから……。」


アフーは突然、僕に袋を渡してきた。

中には小さなおにぎりがいくつも入っていた。


「これは私の手作りのおやつだよ。

あとで食べてみて!


まずは一番癒やされる場所へ行こう。

『百盞花圃』を体験してみようよ!」


「癒やし? わあ!」


僕は手首に、何かねばっとしたものが触れるのを感じた。

青い球みたいなやつで、形もちょっと定まっていない。


「そう、この辺にはスライムがたくさんいるんだ!」


その球みたいな顔が、くるっとこっちを向いた。

黒い点みたいな目が、きょろきょろと動いている。


僕の目の前で、

口の触手みたいなものを揺らしていた。

ぽよぽよと水っぽい音まで聞こえる。


僕は近くにあった大きな石を持ち上げた。

そして一番近くの一匹を見た瞬間、すぐアフーに止められた。


さらに、僕が握っていた石も手で弾き飛ばされた。


「何するんだよ?」


「今までの経験だよ。

初心者冒険者って、

スライムを倒して戦い方を練習するだろ?」


「違うよ。ここのスライムは人懐っこくて、危なくないんだ。

ほら、僕が手を出すと集まってきて、

ごはんを欲しがるんだよ。


すごく可愛いし、すごく癒やされるんだから!」


アフーは続けて、

手にしていたパンみたいなものを僕に分けてくれた。


「おにぎりはちゃんとしまっておいて。

勝手にあげちゃだめだよ。

これはスライム専用の餌だから。

わあ、本当に可愛い!」


僕は、餌を奪い合うスライムたちを嬉しそうに撫でるアフーを見た。

僕の足元にも、何匹か集まってきている。


揺れている触手みたいなものを持ち上げて、僕を見上げていた。


うん。

ここまで色々ありすぎて、僕も少し気が張っていた。


こういう癒やしっぽい触れ合いは、体験しておくべきかもしれない。


僕はアフーにもらった餌を地面に置いた。

するとスライムたちは僕を一度見て、そのまま四方に散っていった。


えっ?


「桃晝、ちぎってあげないと。

じゃないと、あの子たち食べられないよ!」


まあ、こういうのは焦っても仕方ない。

とりあえずアフーのやり方を見てみよう。


僕はもう一度餌を拾い上げて、手で細かくちぎった。

すると、一匹のスライムが僕の前を通りかかる。


僕は慌ててにこにこしながら差し出した。

するとスライムは、すぐに顔を上げた。





そいつは、あからさまに嫌そうな顔で僕を見た。

そのまま、つるりと滑っていってしまった!





なんでそんな反応なんだ?

今、絶対に可愛くない表情をしたよね?


「桃晝、目の前に差し出しちゃだめだよ。

地面にそっと置かないと。


そんなふうにすると、

食べ物を恵んでるみたいになるでしょ!」


アフーは楽しそうに、

一匹のスライムを抱き上げて揉んでいた。


あれは何なんだ。

あんな妙な生き物、また僕に近づいてきたら……。


やっぱり大きな石を探しに行ったほうがいいのかな。

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