ラノベは、令嬢を悪役にすると人気が出るらしい。
主人公は男性ですが、今回は悪役令嬢ものなので女性になります。
一見すると無理があるように思えるかもしれません。
しかし、異性装や性別をまたぐ役柄は古典にもよくあります。
なので問題ありません。
悪役令嬢は、乙女ゲームに出てくる、悪いお嬢様のことらしいです。
乙女ゲームはやったことがないのですが、異性の好感度を上げるゲームだと思います。
ただ、主人公は異性を攻略しようとしないようです。
攻略せずにどうやって好感度を上げるのか、少し悩みました。
ここは作者の腕の見せ所ですね。
また、「断罪イベント」というものも重要らしいです。
悪役令嬢が大勢の前で罪を暴かれる場面のことです。
今回は、これらを一通り入れました。
かなり王道の悪役令嬢ものになったと思います。
俺は、悪役令嬢になった。
「おーほっほっほ!」
※このセリフを使うことで、悪役令嬢を読者に素早く認識してもらうことができます。
「その首飾り、いただきますわ」
「や、やめてください」
「悪役ですので」
※破滅フラグがたちました。ここは覚えておいてください。
「は、犯罪者!」
「悪役令嬢ですわ」
「何が違うのです!」
扇子を閉じ、しばらく考えた。
「……違いませんわね」
俺はそっと首飾りを身に着けて去った。
七歳の誕生日、階段で転んで頭を打った。
庶民的で善良な自分を思い出した。
メイドに熱い紅茶をかけ、庭師の花を踏み、家庭教師を三人辞めさせていた。
しかし今は違う。
「メイド……今までごめんなさい」
メイドは驚いた顔をした。
「お芋、あげますから……」
※お芋を登場させることで、悪役令嬢が庶民的で親しみやすい性格に変わったことを、説明せず直感的に伝えることができます。
その日から、私は誰にも意地悪をしなくなった。
「お芋って、焼くと甘くなるんですね」
「……はい?」
「すごいですね」
それから八年が過ぎた。
十五歳。私は王立学園に入学した。
王子が話しかけてきた。
「以前の君なら、そんなものに興味を示さなかった」
「お芋、お嫌いですか?」
「……いや」
「半分どうぞ」
※かわいい
騎士にも話しかけた。
「剣のお稽古、疲れませんか?」
「これが仕事ですので」
「お芋食べます?」
「……いただきます」
※かわいい
魔術師にも話しかけた。
「魔法って、お芋を早く焼けますか?」
「私の魔術を何だと思っている」
「焼けないんですか?」
「……焼ける」
※かわいい
こうして、私は三人と親しくなった。
ある日、ピンク髪の少女が現れた。
※ヒロインです。
私は彼女に、ふかした芋を分けた。
「……私に?」
「はい。半分どうぞ」
少女は芋を受け取り、しばらく見つめていた。
そして泣いた。
※いじめたのではありません。
私は王子殿下から距離を取ることにした。
※安心してください。これは少し高度な悪役令嬢テクニックです。
意外かもしれませんが、悪役令嬢は一度引くことで相手を追わせます。
「殿下には、あの方の方がお似合いですわ」
「待ってくれ!」
やはり王子は私を追ってきた。
※ここでは「もう遅い」しません。
「……やっぱり僕は君が好きだ」
王子は私の手を取った。
※ほら、このとおり。
そして卒業の日を迎えた。
卒業パーティー。
※ライトノベルでは、ここで「断罪イベント」が起きます。
大広間に衛兵が入ってきた。
「紅茶による傷害、花壇の損壊、家庭教師三名への業務妨害で、あなたを断罪する!」
メイドが証言した。
「紅茶は熱かったです。でも、お芋は温かかったです」
※法と赦しは別のものです。
判決、有罪。庭園の植え直し三年。
翌日、王子は鍬を持ってやってきた。
騎士も来た。
魔術師も来た。
ピンク髪の少女も来た。
みんなで芋を植えた。
三年後、庭園には花が咲いた。
「今年のお芋、大きいですね」
私はもう「おーほっほっほ」と笑わなかった。
※悪役令嬢ではなくなったためです。
今回は悪役令嬢ものに挑戦しました。
前世の記憶を取り戻して善良になり、王子たちに好かれる。
そんな王道展開に、「断罪イベント」も入れてみました。
心を入れ替えても、過去の罪は消えません。
メイドは主人公を赦しましたが、法は赦しませんでした。
庭園を植え直す三年間は、ただの刑罰ではありません。
自分で壊したものを、自分の手で育て直す時間です。
鍬を持って集まった王子たちも、罪を肩代わりするのではなく、償いに寄り添っています。
お芋も大きくなりました。
悪役令嬢ものは、罪と赦し、断罪と再生を描くのに非常に適した形式だと分かりました。
今回は、かなりラノベの本質に近づけたのではないでしょうか




