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間話2 王命での結婚も良いもの。なのか…?


 引き継ぎゼロ領主&成人したてのエドガルド(15)は、自棄を起こしていた。


「なんで魔石の売上も税収も余ってるのにただ貯めるだけで新事業を起こさないんだよ、あの日和見親父は……」

「まあ、ポジティブに言えば安寧。ネガティブに言えば停滞。ですかねえ……」

「引き継ぎゼロなら、やりたい放題しても良いってことだよな?魔石分を元手にゴリゴリに新事業を起こしてやるか」


 こうして火球ビジネスのために、まずは保管庫用のガラス製の宮殿を荒野に建てた時に、王宮から特使が書状を届けに屋敷を訪問したのだ。


「ぇえ!?フレアワース家に今月中にエメライン姫が嫁いでくる……。これは、対応出来ない俺は死刑でお家取り潰しってこと?」

「いいえ、王命による結婚ですからっ!そちらへの持参金代わりに2年間の国税を前年度の半額にするとのことです」

「まあ、年の近い貴族女性はデビュタントでやらかした俺と結婚して焼き殺されたくないからって逃げるように婚約し終わってたからこちらとしてはありがたいけどさ……姫って普段何食べるの?領地の食事が合わないとか言われて倒れられても怖いんだけど。それにMPが少なすぎて王家の役立たずって悪口言われてるんだろう?魔力差で死なないのか??」


 エドガルドが不安を口にすると、特使は笑って答えた。


「大丈夫ですよー。姫はおっとりとされた性格で、物心ついた頃から大声を出されたところは誰も見たことがありませんし。王家から姫の主治医も派遣されてきますから、その指示に従っていただければ」

「えぇー…」

「それでは書状の2枚目に記載の通り、3日後に衣装合わせと姫との交流がありますので、MP1にしてからの転移をよろしくお願いしますね。式でフレアワース殿に身につけていただく儀式用の魔封じのサークレットはこちらで準備しております。式の日は新郎の衣装はこちらで準備済ですので、朝に王宮にいらっしゃるだけで充分ですから」


 数日後、朝から荒野の50平方メートルほどを集中して焼き払い、地下11メートルまでの地層をガラス化させてMP1にしてきたエドガルドは、念の為魔封じの腕輪を身につけて渋々王宮へ訪問した。当日と同じ控室で衣装に袖を通し、サークレットを身につけるとMPの自然回復は緩やかになった。


 そして、結界石の間に通された。ここは部屋中の壁に結界石が埋め込まれていて、部屋の中央の奥にはエドガルドの背丈より大きな結界石が鎮座していた。


「当日はここで立っていてくださいね。正面の陛下が立つ場所の隣には白とピンクのクラウドフロマージュを生けた花瓶を飾ってありますから、そこを目印にしてください。音楽が鳴り始めたら姫が王妃様と入場されますから」


(ここ、戦時中とかの緊急事態に王宮で働く人々が逃げ込むための部屋じゃないか…)


 エドガルドは自分が人間扱いされていないことに少し凹んでいると、後方の扉が開く音が聞こえた。


「なんだかこのドレス、見た目より生地が軽くて歩きやすいわね」

「当日はベールを被っての入場となりますから、足元にお気をつけくださいましね?姫様。同じ刺繍を施した普段着も5着準備中ですから、フレアワース領ではそちらを着てくださいね」


 振り返ると、淡雪のような女性が侍女に連れられて入ってきた。彼女は絹糸のような白い髪に淡い緑の目をしていて、ミルクに薄紅色の花弁を溶かし込んだような肌をしていた。ティアラを着けて花嫁衣装に身を包んだ彼女は、女神のように美しかった。


(もしかして、彼女がエメライン姫。なのか?)


 エメラインはエドガルドを見ると、華やいだ表情をして駆け寄ってきた。


(この人、今まで公務で見てきた人の中でも1番下心が無いわ)


「貴方がエドガルド・フレアワースさんですか?私はエメラインよ。基本的に毎日3食食べられてお昼寝タイム30分と午後のおやつと睡眠時間8時間が保証されていれば文句はないわ。これからよろしくお願いね」


(え、こんな美女が俺を見て、駆け寄って来た。だと……!?)


 エドガルドは無意識に頭上から炎の小鳥とハートマークを乱舞させていた。それから式のデモンストレーションを終えた後にエメラインとお茶をしたが、彼は姫の笑顔に終始夢見心地だったため、ほぼ内容を覚えていなかった。その後姫の主治医と面談の時にエドガルドは、ある言葉を繰り返し何度も言われた。


「いいですか、フレアワース伯爵。くれぐれも、姫さまとの同衾前には必ずMPを0にしてくださいね!?今も姫のMPの最大値は5なんです。0にし忘れたりなんかしたら、伯爵の自然回復した魔力漏れですら消滅の危機がありますからね!?念のため初夜には魔封じの首輪を陛下から賜る予定とお聞きしていますけれども……頼みますよ!!」

「そ、そんなに命懸けなんですか……」

「はい、おっしゃる通りです!」


(魔力差が絶望的なのに、なんで姫はあんなに綺麗に笑っていられたんだ…?)


 エドガルドは4歳から同性の家庭教師としか、ほぼ会話をする機会がなかったため、女性の心などわかるはずもなかった。



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