↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械少女の涙は蒼穹に還る ~メガリマギアの灯火  作者: しきもとえいき
第19章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
169/237

金枝の鳥籠Ⅷ ~郷愁と恐れ

次回、ルルリアとセフィリアを描きます。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

また是非ご一読ください。

予告と少し食い違う場合がありますが、話が長くなる場合、話を2分割しております。

広い心で大目に見てくださいませ。

「で?」


 ルルリアは腕を組んだ。


「セフィリアは、私に何をさせたいの?」


「まずは、お茶を」


「お茶って言えば、逃げ道を塞いでない感じになると思ってるでしょ」


「いいえ。逃げ道を塞ぐ時は、もう少し違う言葉を使います」


「聞きたくなかったなあ、その答え」


 ミレーネは微笑む。


「セフィリア様は、ルルリア様とお話ししたいと望んでおられます」


「私だけ?」


「皆様も、ご一緒に」


 ミレーネの視線が、ルミナリスへ向いた。


「ルミナリス様。あなた様のお話も、ぜひ伺いたいとのことです」


 ルルリアの足が、半歩だけ動いた。

 自分でも気づかないくらいの、小さな動きだったが、それはルミナリスの前へと出る動きだった。

 ルミナリスが静かにこちらを見る。


「ルルリア」


「ん。大丈夫」


「まだ何も言っていません」


「言いそうな顔してた」


「そうですか」


「うん。ルミィは分かりやすいからね」


 本当は違う。

 分かりやすいのは、自分の方だ。

 ルミィを帳簿の上に乗せたくない。

 ルミィに値札をつける目を向けさせたくない。

 それだけで、足が前に出た。


 オルクスが短く問う。


「誘いに応じる必要はあるのか」


 ルルリアはミレーネを見た。

 ミレーネは、何も言わない。

 言わないということは、こちらに選ばせている。

 選ばせる形にしている。

 セフィリアのやり方だ。


「ある」


 ルルリアは答えた。


「部品がいる。中空魔導骨、銀青鋼、微細魔導環、魔鉄鋼、火喰い玉石。ここで断ったら、火花おじさんは作れない」


「別口で探すこともできる」


 バルカが言った。


「時間がかかるけどね」


「かかる」


「私たちには、その時間があんまりない」


 星の羅針盤。精霊の庭。アルゲントルム人。

 ルミィが進まなければならない道。

 ルルリアは、それを邪魔したくなかった。


 でも、それだけではない。

 古巣の気配。鳥籠の紋。反乱に向かう荷。

 人の行き先を見る部隊の匂い。


 見ないふりをすれば、また誰かが帳簿に閉じ込められるかもしれない。


「それに、また契約とかで誰かを縛り、搾り取る」


 ルルリアは声を落とした。


「なら、私が見た方がいい。私が一番、あの人たちのやり方を知ってる」


「辛く筈ですが、何故?」


 ルミナリスが問う。

 ルルリアは笑った。


「つらいよ」


 今度は、すぐに言えた。


「でも、つらいからってルミィに任せる方が、もっと嫌」


 ルミナリスは一瞬だけ黙った。

 そして、静かに頷く。


「分かりました。では、共に行きます」


「うん。お願い」


 オルクスも頷いた。


「わしも行く」


「おじいちゃんは、変な契約書見つけたら斬ってね」


「紙を斬ればよいのか」


「できれば契約そのものを」


「それは難儀だな」


 イグニスが低く燃えた。


「俺は何を焼けばいいんだ? 焼き分けるのは中々難しいんだが」


「だから焼かないでってば」


 オルクスがまじめな顔で言い放った。


「焔を連れて鳥籠へ入るのだ。燃える覚悟くらいはさせておけ」


「言い方は怖いけど、ちょっと頼もしいのが困る」


 ミレーネは、それらのやり取りを静かに見ていた。

 そして、ほんのわずかに目を細めた。


「ルルリア様は、変わられましたね。すっかりと外の方になられたようです」


「そう?」


「はい」


「可愛くなった?」


「それは以前から」


「うわ、そういう返しも嫌だな」


「以前のルルリア様なら、まず私に合わせて笑い、こちらが欲しい言葉を探り、場を丸くすることを選んだでしょう」


 ルルリアの笑みが少し止まった。

 ミレーネは続ける。


「今は、先に誰を守るかを決めておられる」


 その言葉は、意外だった。

 褒められた気がした。

 だが、ゴルデンオストの帳簿室の者に褒められると、どうにも背筋が落ち着かない。


「それ、セフィリア様にも言われそう」


「すでに仰っておりました」


「うわあ、先回りされてる」


「セフィリア様は、あなたをよく覚えておいでです」


 ルルリアは返事をしなかった。

 覚えている。

 その言葉は、嬉しくもり、痛くもあった。


 拾って助けてくれた。

 食べ物をくれ、靴をくれた。

 寝る場所をくれた。綺麗な服もくれた。

 熱を出した夜に、額を拭いてくれた。


 でも、同じ手が鳥籠も作った。

 同じ声が、泣き方すら道具になると教えた。

 同じ人の近くで、自分の体には隠れ鬼が仕込まれていた。


 セフィリアがそれを知っていたのか。

 知らなかったのか。

 それすら、ルルリアにはまだ分からない。

 分からないから、苦しい。


「案内して」


 ルルリアは言った。


「ただし、先に言っておくけど、私、戻るつもりはないから」


 ミレーネは静かに頭を下げた。


「承知しております」


「嘘」


「はい。少しだけ」


「ほんと嫌い、その感じ」


「ありがとうございます」


「褒めてない!」


 ルルリアの声に、いつもの調子がわずかに戻る。

 バルカが工房の奥から、焦げた小片を投げてよこした。

 ルルリアは慌てて受け取る。


「なにこれ」


「焦げた制御輪の欠片だ。銀青鋼と微細魔導環に近づけると熱を持つ。火喰い玉石は近づけると冷える。魔鉄鋼は鳴る。偽物を掴まされたくなけりゃ持ってろ」


「え、くれるの?」


「貸すだけだ。なくしたら耳を引っ張って炉に突っ込む」


「この町の人、すぐ物騒なこと言う」


「早く行け。炉が冷める」


「ありがと、火花おじさん」


「その呼び名を広めたら、装具の足首をわざと軋ませるぞ」


「職人として最低!」


 バルカは指を鳴らし、鉄扉を閉め、その音が、岩の腹に重く響いた。

 何かの蓋が同じように閉じられたと感じ、ルルリア自分に喝を入れた。

 ミレーネに案内され、三人と一つの焔は路地へ出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。