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オカルト科学"界"の僕と多次元魔法"海"の私  作者: 坂水 雨木
第三章、異世界海上同棲生活with星と煙と他色々。
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第九話、西の神様について。

『深満様が思慮深い人でよかったね』

『うん。ともだちになった』

『シー。レメイラに定着したとはいえ、抱えた知識は途方もないものです。アースの情報は適宜交渉していくことにしました』


 海底神、深満(ふかみつ)様の浄化を完了し挨拶を終えた僕らは、それぞれ気を抜いて海上を漂っていた。クゥレはぼんやりのほほんとして、ツィヤもどことなくリラックスしているようで光の公転速度が遅い。


 ちらと下を見て、だらりとしているハユレさんとピシッと直立したリィムさんを眺める。


「リィムさーん。アタシちょー疲れましたよー」

「ハユレさん何かしていましたか?」

「してましたよ!こう……リィムさんの壁になってました」

「……むしろ壁になっていたのは私では?前に立ってたの私ですよね?」

「――わ、わぁ!今日も雪は綺麗だなぁー!」


 露骨すぎる言葉に嘆息している。呆れた顔のリィムさんも可愛い。


『リィムさんリィムさーん!』

「ん……ジン?私のこと呼んだ?」


 ふ、やれやれ。リィムさん。僕たち、意思疎通できるようになったんですよね。たまに忘れるけど。

 言葉を交わせる、心で通じ合っている……これもう実質恋人じゃん。


『へへへ、やー、海底神、東の神様の騒動は終わりましたね。思ったよりあっさりでよかったですよー』

「?ふふっ、海も落ち着いたわね。あなたも嬉しいのね。よかったわ」

『近いけど遠い……。これが僕らの距離感ですね』

「ん、ええ。全部解決までは遠いから、まだまだ頑張らなくちゃ」


 微笑み、呟いた言葉の先は遠い海の果て、西の海上に向いているようだった。

 雪に降られ、冬の風に白金の髪が靡いている。


 映画のエピローグのようなワンシーンは見惚れるほどに綺麗で、僕もなんとなく近寄って作中に入り込む。

 位置をずらして背中合わせ。自力で吹かせた風は僕の髪も揺らし、冬の冷たさだけが僕と彼女の差だろう。つまりそれは、僕と彼女の今の距離。


 遠くを見つめ、出そうになる欠伸を嚙み殺し作品に入り込む。

 脳裏に浮かぶのは映画でもなくリィムさんでもなく、今現在僕が入り込んでいるおふざけでもなく、先ほどの深満様浄化作戦だった。


『……』


 深満様の浄化は、正直何がどうなって上手くいったのかよくわからなかった。だからクゥレに聞いた。"ひみつ"とかなんとか言っていたものの種明かしだ。


 流れとしては、僕がポルターガイストを使って深満様と妖怪たちのいる海水底部を掴んだ。ポルターガイストは切れてもエネルギーそのものは残るので、ツィヤが謎の力で増幅して海水を海上まで持ち上げた。海の上に深満様たちを押し出した後は、クゥレが深海石を粒子状にして神様たちの内部に強引に取り込ませて融合させ、深海石と身体を馴染ませてレメイラに適応させた。


 ということになる。

 羅列しても終盤は正直微妙だけど、ツィヤがわかりやすく教えてくれた。


 別の世界からレメイラにやってきたため、生物として霊寄りの状況でも肉体はあると言える。だけど、その肉の身体はレメイラとの結び付きが薄く中途半端にアースの状態を引きずっているため不安定になっている。

 なら、レメイラの情報を肉の身体に入れ込んでレメイラの住人にしてしまえばいい。そこで登場したのがレメイラの力そのものと言える深海石だった。結果、浄化成功。


 結局はまあ、上手くいったからいいんだけどね。

 東の神様問題はこれで一件落着だ。あとは宇宙戦争と西の神様だけど……。


『ツィヤ』

『シー。はい』

『西の神様の情報って何かわかってる?』

『ジンゴの知っていること以上はありません。何が必要ですか?』

『何かってわけでもないんだけどさ。東の問題解決して、西はどうなってるのかなって』

『シー。そうですね。わたしはあまり海上神の調査に動いていなかったためわかりませんが、ジンゴも知っている情報として挙げられるものがあります』


 ぽつぽつと既知の情報を挙げていく。


 一、竜の姿をしている。

 二、怒り狂っている。

 三、徐々に十七都市へ近づいている。

 四、意思疎通は可能。(クゥレ曰く怒っていて怖い)

 五、周囲に極大の嵐を起こしている。

 六、嵐と共に深力もまき散らしているため魔法術の効きは悪い。


『……ふむ』


 知らない情報があったんだけど?既知っていったいなんだろうね。


『竜神様、嵐作ってるんだ』

『シー。はい』

『魔法術の効き悪いんだ』

『シー。はい』

『どうすればいいかな』

『海上神がレメイラに現出した理由、原因がわからなければ対処も難しいでしょう。海底神、深満西ノ海蛇フカミツニシノカイジャ様との浄化により意図せず海上神の情報は深まりましたが、未だ予想の域を出ません。わたしたちの優先度は低いです。希望があれば調査に動きますが、どうしますか?』

『うーん……とりあえず、海上神の予想?が何だか教えてもらえると嬉しい』

『シー。わかりました』


 ツィヤが言うに、海上神は海中の深力乱れにより表出したのではないかと。

 以前、リィムさんのお母さんが竜巻が出来たとか深力溜まりが生まれたとか言っていた。


 深力は深海石から出たエネルギーが海に溶け込んだものであり、深海石そのものも深力と言える。

 海中に海流があるように、深力にだって流れがある。海流に乗ってエネルギーが流れているようにも思えるが、根本的に深力は海そのものに溶け込んでいるのだ。海流より深く根源的なもの。それが星脈だった。


 レメイラとて惑星であることには変わらない。

 恒星があって、惑星があって、衛星があって。

 水に満ちて深海とかいう別世界に繋がる道があるとしても、一個の惑星であることは事実。つまりそれは、ツィヤたちの見知った星脈も存在するということ。


 星脈とは、ざっくり星々それぞれの持つエネルギーの通り道を指す。

 恒星の周りを公転し、自転も行う惑星はいつだってエネルギーを生みエネルギーを巡らせている。ただ闇雲にまき散らすわけではなく、規則正しくエネルギーを運用しているのだ。その運用として惑星自身がエネルギーの効率的運用を行うために整備したものが星脈だ。


 まるで星に意思があるようにも聞こえるが、別にそんなことはない。

 風が岩を削り、川が大地を削り、海が浸食し、また干上がりと自然のままに世界を変えていくように、ただ流れやすいようにと長い時間をかけて作られただけのこと。


 つまるところ、海の中の深力は星脈に沿って流れている。


 そしてここからが本題だ。

 ツィヤが海上神の変化を感じ取ったのは二回。


 一回目は僕らが海水を持ち上げた時。

 二回目は深満様たちが深海石と同化した時。

 

 このことから、海上神は深力の流れ、星脈の変化に関心を寄せていると言える。というか、より怒り狂ったそうなので高確率で星脈の変化を嫌っている。

 当たり前の話だけど、大質量の海水を持ち上げれば深力だって揺れ動くし、神格を失ったとはいえ超高位の存在が深海石取り込んで急に現れたら世界に影響も与える。それだけ神格者なんてものは強大なのだ。


 要するになんというか……。


『……割と僕らのせいでこっち向かってきてる?』

『シー、ニー。そうとも言い切れません。海上神が星脈の乱れにより現出したと考えるならば、現在より前の段階で根本の原因となる何かが起きていなければ辻褄が合いません』

『ほっ、そっか。よかったー』


 いやよくはないけど。少なくとも僕とかクゥレが原因ってなってないならよかったー。


『じゃあ、何が原因なんだろうね』

『シー。わたしたちの予想では、深力以上にレメイラ固有であり、なおかつ超大なものかと思われます』

『……それ、深海穴のこと?』

『シー。はい。一切の予兆なく生まれる異界への通り道です。わたしたちの観測上レメイラの他に見られていない、特有の現象です』

『ふーむ……』


 ピカピカ光って楽しそうだな。

 にしても深海穴か。普通に筋通ってるし、何よりツィヤが言っているってことはかなり信憑性高いんだよね。どうしよう。

 今の話ってあれだよね。今まで深海穴いっぱい生まれてきたし、たまたま十七都市付近が多かったから神様こっち向かってきてるよって、そんな感じの話だよね。


 海上神的にはたぶん、"おまえらー!(十七都市に向けて)勝手に星脈乱すなー!許さんぞー!!"って感じ。うん。割と合ってそうで困る。


『……はぁー』


 頭が疲れる。息を吐いて肩を回して、ぐーっと伸びをして軽く身体を動かす。

 空を飛び、ぼんやり漂ってリィムさんを見て、さっきの僕みたいにリィムさんと並んで髪を靡かせているクゥレを見て。


『はは……はぁ』


 ちんまい煙の身体がもくもく流れていて全然様になっていなかった。

 軽く笑って、もう一度溜め息を吐いて。


 雪雲の空を見上げ、すり抜けていく雪に手のひらを翳し、とりあえずと思う。


『……とりあえず、全部リィムさんに話してみるかぁ』


 人任せ、ばんざーいっ。

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