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オカルト科学"界"の僕と多次元魔法"海"の私  作者: 坂水 雨木
第三章、異世界海上同棲生活with星と煙と他色々。
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第七話、東の神様対策戦2

 僕らレメイラ海底神調査隊。討伐隊ではなく調査隊なのがミソだ。

 魔法船に乗り東の海へやってきた一行(人間二、妖精一、星一、幽霊一)。特殊な能力により海底を進んでいた神とその取り巻きを強制的に海上まで移送することに成功した。


 問題は一つ。


【キュエエエエエエエエエ!!】

【キョゴオオオオオオオオ!!】

【キャガアアアアアアアア!!】


 その神様が大変お怒りなこと。

 原因は明白。無理やり浮上させられたことですよね。ゴメンナサイ。


『海底神、自我ないのかな』

『シー。そのようです。長らく生物からの信仰を失い、残った力もレメイラを移動するために使っているようですね。わたしからの干渉を跳ね除けられなかったこともそうですが、こうして近くで見ればわかります。あまり見ない例ですので、なかなかに興味深いです』


 ピカピカ光って楽しそうだね。

 さっきの超常現象(海底から一定範囲の水ごと妖怪含め神様を浮上させること)を起こしたとは思えない元気さだった。


【キョゴオオオ!!】


 叫ぶ神様。三匹……一匹なのかな。一蛇が叫ぶ。


 僕ら、ていうか僕か。何がどうなってるのか一切わからないけど、海底神はしっかり僕らを認識しているので、どうもポルターガイストの根本原因になっているっぽい僕を睨んで叫んでいる。

 リィムさんたちに意識が向かないよう、クゥレとツィヤと僕の三人で神様の直上にやってきていた。めっちゃ睨まれてる。怖い。


『怖いけど、この神様僕に触れられないみたいなんだよね』

『シー。超越種としての格が既に衰えているためでしょう。神格として世界の狭間を認識できても、掴み引き寄せ触れるための力が残っていないためわたしたちに影響はありません』

『すっごく噛み付き攻撃してきてるのは?』

『考えるだけの力を失い本能で行動していると思われます』


 悲しいね。ひたすら僕らに噛み付いて、水のレーザーっぽいの撃ってきてるけど全部当たらないんだ。妖怪はおろおろしてるし……あ、そっか。妖怪は神様ほどの格がないから僕のこと認識できないのか。

 つまり、妖怪には虚空を睨んでひたすら暴れる神様が見えていると……。


【キュエエエエエ!!】


 おっとそのバブルレーザーは視界が悪くなるからやめてほしいな。

 完全に観客気分だけど、狙われているのは事実なのでさっきから海底神の攻撃は一通り浴びている。


 頭が三つあるから、それぞれ使ってくる攻撃技も違う。

 左の一蛇目は主に泡のバブルレーザー。二蛇目は直線型の水レーザー。三蛇目は霧状のレーザー。高速で白い霧が広がるのでレーザーというよりもうただの霧と言った方が正しいかもしれない。何もダメージを受けない僕だからいいけれど、一度海上に霧が広がってすべてを凍り付かせていたのを見て顔が引きつった。


 格を失いかけて理性を無くしても、そこは神様。笑えないくらい強大な存在だった。


『ふっ、そんなレーザー効かなぁあああ!!噛み付きは無理!?おお暗い世界……』

『ジンゴー』

『うわっ!急に貫通して出てこないでよ。顔だけ蛇から出てるとホラーだから』

『んふふ、ジンゴも頭しか出てないぞ。ふふふ』

『そう?そうだった』


 お互いホラーでけらけら笑い合う。


『ていうかクゥレ、準備できたの?』

『もうちょっと。石がたりないんだ』

『石?』


 クゥレが秘密秘密とむふむふ笑っていたことを覚えているだろうか。僕は覚えている。

 そもそもの話、こうして今僕らが海底神の上でわたわたしているのはクゥレによる浄化を待っているからだ。目の前の妖精が"まかせて!"と自信満々に言っていたから、僕とツィヤが協力して海底神を海上まで引きずり出した。


 見るからにボロボロで荒魂っぽい海底神を鎮める方法はクゥレしか知らず、当のクゥレはもうちょっとと時間を欲していた。もちろん何をしているのかは知らない。


『あ、ひみつひみつ。われなんにも言ってない』

『はいはいそうですか』

『うん。もうちょっとだけまて』

『りょーかい』


 とのことだったので、しょうがなく巨大な海蛇頭三匹に襲われながらツィヤの近くに行く。


『ツィヤ』

『シー。なんでしょうか』

『宇宙戦争の方はどうなってるかわかる?』

『シー。はい。戦況をお伝えしますか?』

『うん。お願い』


 ピカリと光って、滔々と上空遥か高くの戦様を教えてくれる。


 穏健派と革命派は膠着状態からあまり変わらず、時折小競り合いが起きている程度だった。小競り合いと言っても特大ビームで惑星破壊とかそんなレベルなので規模が凄まじいわけではあるんだけど。


 ただどうにも、ちょっと状況が変わってきているようでもあるらしい。

 ツィヤにも原因はわからないらしいが、穏健派革命派共に離反者が出ているとか。一部の艦が隊を離脱し、少々離れた宙域に留まっていると言う。別に双方の勢力から離れた艦が合流して第三勢力になっているわけではなく、数隻ほどのグループが五個六個と作られているようだ。


 ちょっと意味が分からない。まあずっと意味不明な状況だから今さらではあるか。とにかく、宇宙の方はそんな複雑怪奇な状況に陥っているらしい。一切なんにも見えないから全然わからないね!


『――できた!』

『お、もういいの?』

『うん。われのちからをみるがよい!』


 舌っ足らずに尊大な口調で妖精が空を飛ぶ。途中白い霧が広がり、凍てついた空気を切り裂く水のレーザーが空を貫く。ついでに僕も貫かれた。ノーダメージである。


 クゥレは僕らから離れ、海底神より少々離れた海上に立つ。

 両手をぱっと広げ、目を閉じてむむむと眉間に皺を寄せている。


『えいっ』


 軽い掛け声と共に手を振り上げる。途端、ざぱんと水飛沫を上げて海中より物体が――石が出てくる。

 それも尋常じゃない数だ。十、二十、三十。すぐ数えるのを止めた。軽く百以上はあるだろう。


「深海石……?」

「深海石ですねー……」


 何の石かと思っていたらリィムさんたちが答えをくれた。

 なるほど深海石。レメイラ特有のエネルギー体だね。


 その深海石をどうするのか。連続したバブルレーザーで視界が泡だらけになりながら見つめる。この泡、実は爆発して意味不明な衝撃波放つんだよね。僕知ってるよ。生身だったら木っ端微塵さ。ははは。笑えない。


 クゥレは何やら両手を前に持ってきてグッと握る。

 瞬間、宙に浮いていた多量の深海石が綺麗さっぱり消えてなくなった。


『ん?』


 嘘だ。消えてはなくなってないかもしれない。薄っすら霧っぽくなって広がっている。白い霧のおかげで深海石の青色に色付いたところがわかりやすい。


『ふふーん』


 にやりと笑ったクゥレが手を広げ、ザっと勢いよく振るった。

 青い霧が風に吹かれたように動き、海底神と妖怪にぶつかる――。


【――キュエエエエ!?!?】

【――キョゴオオオ!?!?】

【――キャガアアア!?!?】

 

 一斉に悲鳴を上げる海蛇たち。三匹揃って同じタイミングとは仲いいね。


『ってうわっ!頭、振り回さないで、ほしいんだけ、ど!?』

『ジンゴ、ぶつかっても問題はありませんよ』

『知ってるよ!気分ね気分!!』

『シー。そうでしたか』


 平常運転過ぎるツィヤは当たり前にぐわんぐわん振り回される頭に呑み込まれ出てきて呑み込まれと繰り返していた。こうして見るとすごいホラーだ……。


『クゥレ!』

『ぬふふ、われのゆうしはみたかー?』

『見たよ。見たけど、君何したのさ』

『なに?……うーん、われがまえやったのと同じこと?』


 前っていつの話だ。ぜんっぜん思いつかない。


『ツィヤ、わかる?』

『シー。はい。わたしはクゥレの行いを理解しているため、説明が可能です』

『わーわー!ツィヤ言っちゃだめだぞ!』

『シー。わかっています。ジンゴ、申し訳ありませんがお伝えすることはできません』

『はいはい。そういうことね。僕に考えろと』

『うん。がんばれ』


 適当な応援は聞き流し、少し考えてみる。

 無作為に暴れ回る神様と苦しむ妖怪と、距離を取るリィムさんたちと。


 入ってくる情報はいったん無視し、さっきのクゥレの動きを思い出す。

 深海石を海から持ち上げて、霧状にして神様たちにぶつけた。言葉にするとこれだけだ。以前同じことをクゥレがやったと言うけど、僕はその以前を知らない。知ってるのかもしれないけど思い出せない。


 クゥレが粒子雲霊種であることを……粒子?


『深海石を粒子状にして、神様たちの体内から直接魔法術を行使した、とか』


 これは結構的を射ていると思う。僕、天才では?


『くふふ、ざんねーん!はずれだ!』


 僕、無才だった。


『はぁ。正解は?』

『んとね。われね。さいしょは今のからだじゃなかっただろう?』

『まあそうね』

『われはすごいからじぶんでがんばって今のわれになってるけど、あいつらすごくないから』

『あ、そう』

『うん』


 ナチュラルに神様たちを見下す発言、さすが現在進行形の上位種。


『ツィヤ。クゥレと海底神たちってどっちの方が格的に上なの?』

『シー。難しい判断ですが、信仰を保持した完全な状態であれば海底神の方が上です。現状は言うまでもなくクゥレが上であり、個として完結した存在と見ればそもそもの形態としてクゥレの方が上だと考えられます。ジンゴの言う"格"をどのように表現するかにもよります。単純な戦闘力、生物としての存在、他者への影響力。あらゆるものを考慮し総合的に考えた場合、完全体海底神とクゥレでは圧倒的に海底神が勝ります。ただし、一個体としては完全体海底神よりもクゥレの方が存在格は上でしょう』

『……つまり?』

『今の海底神とクゥレは比べるべくもなくクゥレの方が上です』

『おっけー。わかった。ありがとう』


 ピカリと光って返事をしてくる。持つべき友はやっぱり共星種だね!


『ごめんクゥレ。話の続きお願い』

『うん。あいつらすごくないから、われがてだすけしてあげたの』

『手助け?』

『そう。ちゃんとしたからだもてるように、われがレメイラのパワーあげたの』

『……あー、なるほど』


 なんとなくわかったかも。

 つまりあれだ。クゥレから見たら海底神と妖怪はレメイラに馴染めてない霊体みたいな感じだったんだ。だから、ちゃんとレメイラに定着させるため深海石を取り込ませたと。


 僕の世界の神様で言う、巫女に憑依させた状況、みたいな。巫女の代わりにちゃんとした肉体を用意して、一時的な憑依じゃなくて永続的な受肉?をさせた感じかな。


 下を見る。

 

【――キュエエ!?!?】

【――キョゴオ!?!?】

【――キャガア!?!?】


 苦しみ暴れる三蛇。

 海上に倒れ藻掻く妖怪たち。


『これ、大丈夫なの?』

『へいき。からだがなおってるしょうこ!』


 むん、と胸を張るクゥレは自信に満ちていた。


『これ、平気なの?』


 心配だったので横を向いて小声でツィヤに聞いてみる。


『シー。はい。問題ないでしょう。淀み削れた精神の正常化、レメイラへの肉体の適応を同時に行っているようです。深海石の力に適応するため、それ相応の痛みは伴いますが死ぬことはありません』

『そっか……』


 下を見る。

 三種のレーザーをまき散らす海底神がいる。


『そっかぁ……』


 僕の心配は、まだ尽きそうになかった。

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