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オカルト科学"界"の僕と多次元魔法"海"の私  作者: 坂水 雨木
第三章、異世界海上同棲生活with星と煙と他色々。
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第二話、レメイラ宇宙戦争。

 銀河連邦平和維持軍、並びに新銀河統一連邦。

 我らが惑星レメイラ近郊で激しい攻防を繰り広げている宇宙艦隊の名前である。


 一見前者(平和維持軍)が軍隊なので悪い方かと思うが、そんなことはない。最初にレメイラに攻め入って来たのは新銀河統一連邦であった。だからといって銀河連邦平和維持軍が良い奴らなのかと言うとそれも違う。彼らは彼らで「守ってやるからみかじめ料寄越しな」という話をとてもとても丁寧に伝えてきたらしい。


 技術交流と称して現地(レメイラ)の魔法術や深海石関連の技術を根こそぎ手に入れようとしていたとかしていないとか。結構な争いが始まってしまった今となっては真実は闇の中。


 とりあえずレメイラ側は革命派(新銀河統一連邦のこと)の攻撃を完璧に防ぎ切り、穏健派(銀河連邦平和維持軍のこと)の脅迫を完璧に跳ね除けて今に至る。


 僕の取り憑き先であるリィムさんは宇宙のアレコレに関わっていないので、詳細な情報はすべて共星種のツィヤから聞いた。

 分厚い雪雲に阻まれて見えないが、今も空の上ではビーム砲をバカスカ撃ち合っているらしい。急に世界観が変わって混乱してしまったのは僕だけだろうか。僕だけか。ツィヤもクゥレも平然としていたしリィムさんも――訂正、リィムさんも驚いてたかも。お揃いですね。やった。


『――ていうか今朝ので思い出したけどさ、レメイラってよく宇宙からの攻撃防げてるよね。純エネルギーの結晶?だっけ。あれもめちゃくちゃ危なかったじゃん』


 そういえば、と眼下でテキパキ働くリィムさんから目を逸らして隣に問いかける。

 

『シー。そうですね。わたしもレメイラの戦闘――軍事力についてあまり関心はなかったため調べていませんでしたが、今回の攻勢をきっかけに少々調べてみました』

『どうだった?』

『シー。興味深い情報でしたよ。ジンゴの関わる怪異ほどではありませんが、"魔法術"や"深創体"といった特殊な技術体系を構築しているだけのことはあります。レメイラという一個の惑星が単一の世界を内包していると言えるほどでした』

『ふむ……』


 ピカピカ光りながら嬉しそうに話してくれる。

 なるほど…………。


『つまり?』

『シー。レメイラ対宇宙全域であってもレメイラが勝利する可能性が高いということです』


 こちらの拡張宇宙全域を調べたわけではないのでわかりませんが、と付け加えた。

 なるほどわかった。要するにレメイラがすごいってことだね。それも僕が思っていたものの数十倍はすごいってことだ。


『おっけー。わかったよ、ありがとう』

『シー。どういたしまして』


 ツィヤのおかげでレメイラの軍事力的なものがわかりはしたけれど、わかったから何?ともなってしまう。

 リィムさんのお父さんが軍人だから、リィムさん経由でその辺の話は少し流れてくる。それによると、基本方針は専守防衛。そもそもこちらから攻め入る理由もないし飛び散ってきた火の粉を振り払うだけにするみたいだ。


 穏やかな気質のレメイラ人らしい考えだけど、根本的な解決はしないなぁ、というのが僕の正直な気持ちだったりする。

 穏健派相手はともかく、革命派相手はささっと撃退してお家にでも帰ってもらえばいいのにと思うのだ。そう簡単にいかないのが大人の事情というやつなのだろう。知らないけど。


 とにもかくにも、こちらの軍事力が圧倒的に上であっても、それを行使する気がないのであれば意味はない。宇宙での戦争は継続、リィムさんの心労も継続、僕の心配も継続。幽霊は辛いぜ。


『ジンゴー、われがせんそうとめてきてやろうか?』

『やめておきなさい。ちなみにどうやって止めるつもり?』

『われがわーってひろがって、ぎゅーってのみこんでおしまい!』

『はいだめです。色々大混乱になる未来しか見えないからだめねー』


 むふーっと胸を張っていたクゥレに念力を使いくるくると振り回す。

 わーきゃー言っている姿は完全にマリテュールと被っているが、クゥレは正しく知的生命体である。何なら僕より高次元な生物――いや粒子雲霊種なので、僕より賢いかもしれない……。


『もっとはやくー!ひゅーってやれ!』


 いやないわ。

 お望み通り、無言でひゅーっと強く振り回してあげた。さながら人力ジェットコースター。


 楽しそうなクゥレはさておき、視線も意識も戻して我が愛しのリィムさんを見つめる。


『……むーん』


 軽く唸る。

 異種族との面談を終えてドームの自室に戻り、今度は宇宙人(・・・)との会話を始めたリィムさんを見つめる。ついでに彼女の前に座る女の子も見つめる。


「――さ、今日もお話しましょうか?」

「うん。今日はどっちが先に話すの?シェラから?お姉ちゃんから?」

「そうねぇ。ふふ、シェラはどっちがいい?」

「えー。じゃあシェラから!」

「いいわよ。どこまで聞いたかしら」

「うーん、ええっとねー――」


 仲睦まじい二人の様子と会話の内容はともかくとして。


 リィムさんの目の前に座る少女、名前はシェラタンと言う。

 色抜きしたかのような真っ白の髪と色素の薄い肌を持っており、瞳は青銀と紫銀のオッドアイ。どちらも銀色がかっているものの、一目で色が違うとわかるくらいには左右異なっている。


 こちらの世界に来て色々な種族や人を見てはきたけれど、さすがにこんな目立つ特徴的な姿をした人はいなかった。日本ではもちろん、レメイラでもオッドアイは初めてだった。

 ちなみに着ている服はごく普通のシャツとスカートだったりする。白い髪を顔の左右で結ったおさげツインテールスタイル。僕より幼く見えるが、そこは宇宙人なので何とも言えない。話だけ聞いていたら普通に子供っぽい感じだけどね。


 シェラタンがどうして宇宙人なのかという話になるが、端的に、この子は宇宙から降ってきたのだ。

 大気がどうとか惑星の重力がどうとか、諸々の問題は無視するとしてシェラタンは宇宙から降ってきた。宇宙船に乗ってではなく、普通に生身で。


 正直意味がわからないけれど、僕も女の子が空から降ってくる光景を見てしまったから嘘はつけない。

 しかしどうにも、シェラタン自身もどうして自分がレメイラにいるのかわからないらしくリィムさんは困っていた。暫定宇宙人を家に連れ帰るわけにもいかず、毎日職場に来てお話する日々だ。情報収集とも言い換えられる。まあ、リィムさんが面倒がらずに楽しそうにお喋りしているから、そこはいいかな。


『ジンゴ』

『はいなに?』

『われとおはなししよ』

『いいよ。何話す?』

『うーん……あのこどもがそらのふねと同じってはなし?』

『おっけー。――……おっけー?』


 何?どういうこと?


『ごめんクゥレ、どういう意味?』

『ジンゴはばかだな』

『はい暴言する口はチャックねー』

『むぐぐ、むぐー!むふふふー』


 クゥレはちっちゃいので簡単に口を塞げた。呼吸を妨げないくらいに手で口を覆ってあげると、最初はもがもが言ってすぐ笑い始めた。普通に楽しまれてもこちらは楽しくないので、ささっと手を外す。


『ほら話戻して。クゥレ、どういう意味?』

『んふふふー。うん。ええと、リィムのそばにこどもがいるだろう?』

『うん。いるね』

『あのこどもが、われたちの上?そらの上でわーわーやってるやつらのなかまなの』

『仲間って、どういう意味で言ってるのよそれ』

『うーん?なかまはなかまだぞ。ビーム撃ったり、ひゅんってとんだり、シールドつかったり。こうげきもぼうぎょもかんぺきだ』

『……それ、もしかしてだけど宇宙戦艦のこと言ってる?』

『あ、うん。それそれ。宇宙戦艦。かっこいいやつ』


 "まあわれのほうがかっこいいけど"というセリフは聞き流して、というか聞き流さざるを得なかった。


 戯れてくるクゥレと適当に遊びながら、改めて少女、シェラタンを見る。


「――それでね、シェラはお料理も得意になったの!」

「ふふ、そうなの。よかったわね。最近も作った?」

「う……あんまり作ってないかも。だってシェラが作るより美味しいの作ってくれるんだもん」


 表情豊かにリィムさんとお喋りを続けるシェラタンはどこを取っても普通の人間のようにしか見えず、とてもじゃないが人外、それも宇宙戦艦に類するものだとは到底思えなかった。


『でもなぁ』


 ちらとクゥレを見て。

 クゥレって僕より存在位階的に上だし、この子が間違えたことってないんだよね……。それってつまり、シェラタンが宇宙戦艦ってことになるんだけど……。


 もう一度少女を見て。


『……はぁ』


 溜め息を一つ。

 もうだめだ。僕に理解できる範疇を超えてしまったらしい。これはさすがに、早々お手上げだよ。

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