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オカルト科学"界"の僕と多次元魔法"海"の私  作者: 坂水 雨木
第三章、異世界海上同棲生活with星と煙と他色々。
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終話、二つの世界の交わり。

 不思議な青の領域から出る時は竜神様が送り出してくれた。

 出方自体は超越存在とか上位種なら割と余裕らしいけど、僕には無理だった。リィムさんも渋い顔をしていた。めちゃくちゃ頑張ればいけるかも?みたいなことを言ってたけどたぶん無理だ。目逸らしてたし。


 外に出て、変わらず雪が降っているのを見て少しだけ肩を落として。一か月経っても雪のままかとちょっとびっくりもした。


 ちょこちょこ四人(幽霊、星、妖精、人間)で話しながら普通に待機していた魔法船に乗り、ミィルクさんとハグしたりお母さんとハグしたりしながら家に帰る。

 もちろん僕はハグしていない。触れないからね。や、触れたらハグするかって言われると……リィムさんとはしたいかもね。いややっぱ無理だ。嬉死してしまう。


 お母さんの魔法術でゆらゆらと揺られながら家に運ばれていく。僕はいつも空を揺蕩っているけれど、少し恥ずかしそうに揺られているリィムさんはなかなかに可愛らしかった。


『ていうかあれだね。リィムさん神様の領域出ても普通に僕らと話せるんだ』

(当たり前でしょ?そうじゃなかったら解呪してもらった意味ないじゃない)

『そうだね。……ねえ、今心で返事しなかった?』

(したわよ。ちゃんと聞こえていたようでよかったわ)

『そういう感じですか……』

(そういう感じみたいね)


 そういう感じらしい。これから僕はリィムさんの近くでぺらぺら適当なことを言えなくなってしまった。悲しい。

 宇美花様の時みたいにその場限りじゃなかっただけ満足しておこう。まあ今となっては守護霊さん――リィムさんとも日本で普通にお喋りできるようになったけど。


 リィムさんがご両親――お父さんも心配で帰ってきていた――とお食事しているので、僕は僕でツィヤ&クゥレと情報交換を重ねる。

 この一か月何かあったか。何もなかったか。


『ジンゴの懸念する通り、一か月前のわたしたちが知り得ていた問題の最後、宇宙戦争に大きな進展がありました』


 そうして、ピカピカ光りながらツィヤは僕の知らない一か月を教えてくれた。途中クゥレが結構な茶々を入れてきたけど、それは適当にあしらわせてもらった。


 聞いててあんまりよくわからなかったけれど、なんというか、宇宙船が自我を持って人間擁護派と人間破壊派に分かれている……らしい。

 穏健派と革命派で争っていた時代は終わり、今じゃ宇宙にいる人間は多くが擁護派に助けられ穏健派の艦に匿われていると言う。意味が分からない。


 いつも通りツィヤにわかりやすく説明してもらったのを時系列でまとめると。

 

・人間さん、内戦中。

・宇宙戦艦さん、自我を強く発現。

・人間さん、宇宙戦艦の自我に反発。

・宇宙戦艦さん、人間擁護派と人間破壊派に分かれる。

・人間さん、宇宙戦艦に保護されるものの傍若無人に振る舞う。

・宇宙戦艦さん、自らを(そら)の子と称する。

 

 人型も戦艦型も、同時に両方顕現可能な宇宙戦艦たち。

 不思議なことに全員が女性の姿形をしていて、それが一部の人間が彼女たちを侮ることに繋がっているとも言う。馬鹿にした人間の一部は文字通り海の藻屑になったらしいが。


 彼女たちに好意的な一部の人間は"宙の子"ではなく"宙乙女"と称しており、これが定着してきている。僕もそっちの方がいいと思う。


 というかこの話。


『……"宙船クリエイション"じゃん』


 日本で現実を生きる僕が唯一プレイしているスマホゲーム。宙船クリエイション。

 宇宙戦艦の魂が美少女の形を成して現れており、ゲーム内では宙乙女と呼ばれている。

 ゲームのお話的には、宙乙女の彼女たちを育成しながら艦隊の総督として宇宙を蝕むエネルギー生命体と戦おう!というもの。


『……異世界だし、そういうこともあるよね』


 そういうこともあるさ!僕は考えるのを止めた!


 気を取り直して、リィムさんとのことだ。宇宙戦艦のことは明日の僕に任せよう。どう考えても日本のなんやかんやと絶対関係あるからね。ちなみに記憶喪失でレメイラに滞在していたシェラタンは色々思い出して、レメイラと宙乙女との橋渡しに動いているらしい。すごい。ちょっと状況変わり過ぎですね。びっくり。


 宙を漂うのを止め、お風呂や寝支度を素早く終えたリィムさんと部屋で合流する。誰の部屋も何も当然リィムさんの部屋である。相変わらず良い匂いのする部屋だ。うっとりする。僕は変態じゃないけどうっとりしてしまうものは仕方ない。不可抗力ってやつ。


「甚伍」

『はいはーい。僕ですよー』

「……あなた、そんな感じだったっけ」

『はっ!い、いやついリィムさんと接する癖で……』

「……こっちで私の近くにいた時、いつもそんなだったの?」

『え?はははやだなー、いつものわけ』

『んー、ジンゴはリィムの傍だといっつもこんなんだったぞ』

『ぎゃー!!何言ってくれてるのさ!向こうで遊んできなさい!!はい飛べー!』


 クゥレはぽいっと念力で飛ばしておいた。ついでに適当なループ式ポルターガイストジェットコースターも設置しておく。これで時間が稼げるはずだ。

 視線を戻せば、訝しげな表情を呆れに変えているリィムさんがいる。


「別にいいけれど……向こうでの私に接する時と全然違うのね」

『そりゃ、ね。守護霊さんは友達……パートナーみたいなものだけど、リィムさんは……なんだろう。身近な美人さん、みたいな』

「美人……。そう、そんな風に思ってたの……」


 ふむふむと頷いている。なんだろう、その反応。あんまりまだリィムさん=守護霊さんが僕の中で繋がってないからわかんないけど、守護霊さんとは付き合いも長いし色々わかってるから何考えてるかもちょっとはわかる。つまり、今のリィムさんが何考えてるのかもちょっぴりはわかる。

 この人、今僕のことからかおうとしてる!


「ふふ、ねえ甚伍」

『へい……』

「あなた、私にずっと憑いて回ってたのよね?」

『……そうですね』

「着替えとか、お風呂とかもでしょう?」

『……最初は、そうでしたね、はい』

「ふふふ、ねえ。どんな気持ちで覗き見してたの?」


 にやにやニコニコ。

 ずいぶんと楽しそうなお顔をしてらっしゃる。美人は得ですね……。いや本当に可愛いな。ひどい羞恥を受けさせられているのに、あんまり嫌な気分にならないのはずるい。リィムさんずるい。ここはもう開き直るしかない。


『べつに、覗き見してないです!堂々と見てましたよ。そういうの昔は全然興味ありませんでしたし?ちょこっと興味てきたときは、ちゃんと見ないように気をつけてましたし?』

「そっかー。ふふっ、まあいいけど。私も甚伍のお着替えとか見てたからお相子ね」

『あー……そういえば守護霊さんがリィムさんなら僕のこともずっと見てたんだったね』

「ふふふー、ずーっと見てきたわよー。レメイラでも今日……もう今日じゃないか。神様のアレコレで大変だったけど、最近は日本でも大変だったわね。……本当に、どうなってるのよあなたの周り」


 はぁ、と短い溜め息が耳を揺らす。

 ベッドに座ると、異世界素材が鳴らす微かな軋みが部屋に響く。

 既に乾燥しているが、お風呂上がりでしっとり滑らかな白金色の髪。薄く上気し染まった頬。ゆるっとした部屋着は外よりも露出が多く隙だらけに見える。


 薄い青の半袖シャツと同色の短パンからは大部分の素肌が覗き、特に真っ白な脚や柔らかそうな二の腕なんかはつい目が奪われドキドキしてしまう。

 背を丸め、両膝に立てた腕を折って手の甲に顎を乗せている。軽く微笑んで向ける視線は僕のいる場所。見えていないはずなのに、どうしようもなく澄んだ海色の瞳が綺麗過ぎて直視できなかった。


『え、っと……そう、そうだ。リィムさん』

「ん」


 しゃなりと髪を揺らして先を促してくる。

 なんだこの人。仕草が可愛すぎる。ていうか髪が綺麗過ぎる。

 意思疎通が簡単になったのもあるけれど、たぶんリィムさんにとって大きいのは僕が石海甚伍だってわかったこと。態度が完全に向こうにいる時の守護霊さんと同じだもん。これ。


『あー……や、なんていうかいくつかお祝いしてもよかったかもと思って』

「お祝い?」

『うん。レメイラだと神様の問題二つ解決したでしょ?日本だったら夕枯れ終わったからさ』

「あぁ。そういう意味で……そうねー」


 ぱたり、と身体を後ろに倒して横になる。

 リィムさんの近くにいるのも気恥ずかしいので、僕はちょっと空中を漂わせてもらうことにした。身体の向きは当然天井だ。


「先月……先々月?ん……あんまり頭回らないわね。甚伍、地球とレメイラと、時間間隔ってどうなってたかわかる?」

『……どうなんだろう』


 目を閉じて考える。

 わからないのでツィヤに聞いてみようと思ったところで。


「ねえ甚伍」

『うん』

「私、日本での記憶はあるのよ」

『そりゃあるでしょ。なかったら困るよ』

「そうじゃなくて……竜神様に一か月時間取られたじゃない?」

『まあそうだね』

「今レメイラは一か月経って二十二月の八日よ。日本は?」

『え?そりゃ……え、あれ』


 今日は十月六日。これは寝る前の話だから間違いない。明日になって目を覚ませば十月七日になる。そのはずだ。

 そのはずなのに、どうしてか僕にはこの一か月の記憶がある。今日は十一月八日だった。夕枯れ退治をして、骸骨とか犬とか悪魔とか、色々大変で疲れて帰ったら妹がいて。ちょっと話して寝てレメイラに来た。


 ちゃんと覚えている。なのに、今日が十月六日だと思うと自分と、今日が十一月八日だと言う自分がいる。


『今日は十一月八日……だと思います。たぶん。記憶はちゃんとあるのに、さっきまで十月六日で、今も十月六日だと僕は思って……ます』


 頭がおかしくなりそう。どうなってるんだこれ。しかも途中にあるはずのレメイラの記憶は綺麗さっぱり抜け落ちて空白になっている。怖い。


「ん……私もそんな感じ。ほんのさっきまで夕枯れのことなんてちっともわからなかったのに、今じゃ全部解決して終わった後よ。しっかり記憶がある分おかしな感じだわ」


 苦い声にふんふん頷き同意する。


「まるで……まるで、私と甚伍を結び付けるために無理やり時間を弄ったみたい……え、もしかしてそういうこと?」

『僕も聞いてて思った。竜神様、僕らが……いや違うか』

「違う?」

『うん。だってレメイラでも日本でも、僕らの認識がおかしいだけで両方とも一か月経過しているなら時間の調整なんてする意味ないよね?』

「……確かに」


 ならやっぱり、呪いが複雑に絡み合ってて解くのに時間かかったってだけなのかな。……それならこの時間のずれとでも言うべき妙な感覚の説明がつかないけど……。


『ジンゴ、一か月という時間への説明はできませんが、何故"今"なのかという説明ならできますよ』

『……教えてください』

『シー。はい。ジンゴ、シィステラ様』

「リィムでいいわよ。私も呼び捨てにするわね」

『――むむ!たのしいはなしをしてそうだな!リィム、われもよびすてがいいぞ!』

「ふふ、ええ。よろしくねクゥレ」

『むふふー』


 リィムさんの距離の詰め方がやばい、という話はさておき。


『続けます。何故今なのか。それはわたしがジンゴを観測していて判明した事実に基づきます。ジンゴ、わたしは一月前、ジンゴにとっては少々前かもしれませんが、就寝中のあなたを観測しているとお話をしたと思います』

『したね。それが?』

『シー。はい。わたしの観測範囲が急激な拡大を見せており、現在、"今"が観測範囲の最大値を示しています。具体的には、ジンゴ本体を基準にした半径五百メートルが観測可能範囲となっています』

『結構広がったんだ……』

『シー。はい。この現象の原因と見られるものが日本においてあなたが保持している携帯端末、"スマートフォン"によるものと思われます』

『「……」』


 ちらとリィムさんを見る。目が合った。この人、実は僕のこと見えてるんじゃないかな。


「見えてないわよ」

『あ、そう……』

「そっちにいるわね、って輪郭程度でわかるくらい。あと視線はなんとなくわかるかも」

『結構わかるじゃん』

「ふふっ」


 笑顔が素敵なリィムさんだった。

 視線は戻してツィヤに続きをお願いする。


『さらに、ジンゴの周囲に存在するエネルギー体もリィムとジンゴの接続を拡大する要因であるかと思われます』


 なんだろう。嫌な予感がしてきた。

 再びリィムさんと目を合わせる。向こうも微妙な顔をしていた。やっぱり思っちゃった?あ、僕に言えと。はい。


『もしかしてそのエネルギー体って、人間の形してたりする?』

『シー。はい。よくわかりましたね』

『もしかしてその人型、肩まで髪伸ばして二つおさげにしてたりしない?しかも僕の家に住んでるとか』

『シー。はい。その通りです。既に知っているようですね』

『……まあ、うん』


 溜め息を一つ。近くからもう一つ同じ息が聞こえてきた。


「甚伍」

『はい』

「現実から目を逸らしちゃだめよ」

『……』

「私も一緒に囃し立てるから!」

『それただのヤジじゃん!!』


 くすくす笑うリィムさんに、僕はもう一度溜め息を吐く。

 どうやら、どうにも。


 どうも、この宇宙戦争の問題は僕の妹(偽物)が関与しているらしい。

これにて三章完結です。

世界は交わり繋がり、時系列がようやく一つになりました。

次章で完結予定ですが、少々別の執筆で立て込んでいて投稿は半年か、一年後くらいになるかもしれません(まだ手は一切付けていないので)。賞に応募して散った作品を投稿する予定なので、気が向いたらそちらをお読みください。

お待たせすることになりますが、「おれたた」エンドでなくきちんとお話は締める予定なので、長い目でお待ちいただきたいと思います。

ここまでオカタマをお読みくださいありがとうございました。来年もまたよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回の章も良かったので次の章も楽しみに待ちます! 無理せず頑張れる様に応援しています!
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