28話目
数ヶ月ぶりの投稿です。
約束通りカッツと合流後、旅を再開する一行。
日課であるネィル先生による訓練と勉強にカッツも加わり、ひとまずの目的であるジグラッドへ会う為にダイカランドを目指した。
運がよければ向こうからこちらへ来る可能性があるということも手伝い、無理な行程を踏まずに夜には道中の宿場で休み、拍子抜けするほど危険も無く順調に続いていたのだが・・・。
その日は日差しが無く、今にも雨が降りそうな天気の中、クーネが体調を崩していた。
安全を取り、その日は宿場を出ずに休養することになった。
「大丈夫ですか?」
ベッドに横たわるクーネに優しく声をかけるエルミス。
「うん・・・。ありがとうエルミス。でもこれって、お腹痛いし眩暈もするんだけど・・・、アレなのかな・・・?」
顔を半分毛布で隠し恥しそうに問いかける。
「時期的にもそうでしょうね。無理しないでゆっくり休んでください。」
「うぅ・・・。クーネと言う女性になって少しは女の体という物に慣れつつあるけど、これだけは本気でキツイ・・・。もうヤダ・・・。」
「子供を産むためにも女性には必要なことなんですから諦めてください。」
クスッと笑うエルミスに「産みたくないやい!」と言いたくなるも、不意に意識を失いそうになり頭を振って意識を保つ。
深く息を吐き少し落ち着かせると、
「それじゃお言葉に甘えて休ませてもらうね。少し寝とくよ。」
「はい、おやすみなさい。」
目を閉じるクーネを見て静かに部屋を出るエルミス。
扉が閉まりしばらくするとクーネは上半身を起こし自らの手を見つめ、動きを確認するように開いたり閉じたりし始めた。
上半身だけでしばらく身体を動かした後、再び横になり目を閉じる。
「・・・うん、もう少しかな?」
一言つぶやくとそのまま眠りへとついた。
エルミスは部屋を出た後、隣の部屋の扉を叩き、中から返事をもらい扉を開ける。
中にはテーブルを挟んでネィルとカッツが向かい合って座っていた。
「どう、クー姉ちゃん落ち着いた?」
「はい、今は眠っていると思います。でもまだよろしくない様なので、以前と同じようにしばらくは休んだほうがいいのかな、と。カッツさんもそれでよろしいですか?」
ネィルの質問に答えつつ、その横に座りカッツへと声をかける。
「え!あ、はい。その、僕にはよくわからないことなのでここはあなた達にお任せします。」
少ししどろもどろとしながら答えるカッツ。ただエルミスの言葉にひとつ気になったことがあった。
「あの、『以前と同じ』と言うことは前にもこんなことがあったんですか?」
「はい、クーネさんはどうやら重い方らしく、以前も大事を取って安静にしてもらってたんです。」
答えを聞き腕を組んで悩み始めるカッツ。その様子を不思議そうに二人が眺めていると、
「あの、考えたらちゃんと聞いたことが無かったですけど、二人はどうやってクーネと知り合ったんですか?」
不意の質問にエルミスは困ったようにネィルを見るが、特に気にする様子も無く、
「クー姉ちゃんが旅を始めたのは知ってるでしょ?旅の途中のソーグ草原で私とちょっと一悶着あったんだけど、逆にそれをきっかけとして仲良くなれたんだ。
・・・ただ、出来ればこのときのことは話したくないなぁ。私もクー姉ちゃんもお互いに大泣きしちゃうくらい恥ずかしかったから。」
カッツは何があったか気にはなったものの、やんわりと壁を張られた事にあまり深入りはしない方がよさそうだと察し、納得することにした。
「エルミスお姉ちゃんはちょうどその時にはぐれてた私を見つけてくれて、そのままクー姉ちゃんと仲良くなったんだよね。」
「え?あ、そう、そうでしたね。二人とも泣いてるからあの時は何事かと思いましたよ。」
「そうですか・・・。」
再び考え始めるカッツだが、今度はすぐに口を開き、
「こんな事言うのも変だとは思うんですが・・・。この数日、一緒に旅をしてて何か微妙な違和感があるんですよね。」
その言葉に少し引きつる表情のエルミスと感心するように目を細めるネィル。そんな二人には気付かずそのまま語り続ける。
「クーネには違わないんですけど、何と言うか付き合ってた頃と雰囲気が変わったと言うか・・・。
いえ、気のせいですよね、やっぱり。僕が村からいなくなった後もいろいろあったみたいだし、少しくらい変わってても当然ですよね。すいません、変な事を言ってしまいました。」
謝るカッツだったが、今度は逆にネィルのほうが質問をしてくる。
「いいんだけどね。でも何で急にそんなこと思ったの?直接クー姉ちゃんに聞いてみたほうがすっきりしたんじゃないの?」
口つぐむカッツだったが、エルミスのほうをチラッと見た後、意を決して恥かしそうにその質問に答えた。
「えっと、今回のクーネの事なんです。子供の頃からずっと一緒だったけど、その・・・、女性特有の体調不良の時・・・でも、こんな風に寝込むほど酷くなったのは見たことなくて・・・。
なのに以前も同じような事があったと聞いて、かすかに感じてた違和感が余計に気になってしまったもので。
いえ、他意はないんです。女性ならそういうこともあるかもですし、男の僕にはわからないし・・・。忘れてください!」
こういう話に慣れていないカッツは大きく首を振りながら手も前に出し大げさに振る。
カッツはこの話を終わらせようとしたものの、その違和感に興味を持ったネィルが逃がしてくれなかった。
「せっかくだし昔のクー姉ちゃんのことを教えてよ。もしかしたら昔を知らない私達だからこそ何か気付けるかもしれないし、ね?」
カッツは少し躊躇したものの、大まかにクーネのことを話し始める。
カッツにとってクーネは気の優しいしっかりしたお姉さん、といった感じで、個人的に言えば旅に出るような性格とは思っていなかった。
しかし、3年前に起きた衝撃を思えば少しくらい変わっていてもおかしくは無いとも思っている。
それでも以前と比べてずいぶんと活発になったと感じていたのだった。
無理矢理その気持ちを考えすぎだと抑え込んでいたものの、ネィルに話しているうちに抑えきれなくなってきていた。
カッツの話を聞き終えた時、ネィルはとんでもないことを口にした。
「うん、私の知ってるクー姉ちゃんとは別人だね。お兄ちゃんの違和感は間違いないよ。」
「ネィルさん!?」
「えっ!?それってどういう・・・!」
ネィルに対して同時に声を上げる二人。
だが、特に様子を変えることも無くあっさりと
「別人だよって言ったの。まるで誰かが乗り移ってるとしか思えないほどにね。」
「そんな!?いやでも待ってください。違和感があるといっても別人と言うほどじゃないですし、さすがにそれは考えが飛躍しすぎじゃないかと・・・。」
「うんそうだね。私もそう思う。」
カッツの否定をあっさり受け入れ、自らの言を取り消し、
「お兄さんと別れてからクー姉ちゃんもいろいろあったみたいだし、少しくらい変わってて当然だよ。それこそ3年もあれば人が変わったようになる場合もあるでしょ。
でも、だからこそ違和感を感じても普通に接してあげて欲しいんだ。気にしすぎてよそよそしくなっちゃったらクー姉ちゃんも悲しいと思うし。」
「そう・・・ですよね。もしかしたらその原因の一部には僕のせいの所もあるだろうし、せっかく許してもらったのにここでまた変な態度を取ってたら嫌われてもおかしくないですよね。
ネィルさん、ありがとう。ちょっと考えすぎてたみたいです。」
椅子から立ち上がり思い切り背伸びをする。
「んんーっっと!変に考えてたのが馬鹿みたいでしたね。おかげですっきりしました!僕、ちょっと軽めに何か食べてきますね。お二人はどうします?」
「私はお腹すいてないからいいよ。」
「あ、私も今はまだあまり食欲ないので。」
二人の答えを聞き「そうですか。」とカッツは軽い足取りで部屋を出て行った。
部屋に残されたエルミスは。ネィルに思わず怒鳴りそうになる所を何とか抑え、正面に座り
「どういうつもりですか。あんなことをカッツさんに言うなんて。」
「どういうもなにも結果を見ただろう?これでこの先クーネが少し位カッツとの記憶に相違があっても問題は起きないだろう。」
ネィルの言に真意を知ったエルミスは驚きの後、ため息とともに椅子へと座り込む。
「クーネさんのためですか。」
「うむ。我らだけなら問題はなかったが、昔のクーネを知る者も一緒となると『演じている』故の違和感はどうしたって出るだろうからな。
しぐさや口調を記憶からなぞって演じたとしても性格だけはどこかしらで素が出るものだ。」
カッツの話の中にいるクーネと比べると、今のクーネは確かに活発すぎるように感じるネィル。
その後クーネにカッツとの会話の事を話し、少し気に留めるようにと注意したのだった。




