26話目
エルミスを休ませるために小屋へと戻り、テーブルを囲む三人。クーネは座らずに先ほど見つけた『物』を手に取り、
「ルシール、少し聞きたいのだけど、これってあなたが作ったの?」
そう言ってテーブルにその『物』を置く。
「えぇまぁ。ただなんとなく頭に浮かんで形にしたものの、何でこんなものを作ったのか、作ったはいいが自分でこれが何なのかわからずにそのままそこに飾っておいたのだけど・・・。」
「それっていつ頃?前から考えてたとかじゃなく、急に思いついたの?」
真剣な表情でルシールを問い詰めるがネィルが制し、ごめんと謝るクーネ。少し落ち着いてから改めて同じ質問をすると大体10日くらい前に思い浮かんだと言う話だった。
「もっと言うなら14か15日位前か。確か依頼のオノを打とうとしてた時に一瞬だが眩暈に襲われてふらついたんだ。
それで意識をハッキリさせようと頭を振ったときに思いついた、と言うか閃いたんだ。」
「そう・・・。やっぱり私がこの世界に来た頃と同時期なのね。これはね、この世界には本来存在しない武器、設定はあったんだけど世界観に合わないから、と言うことで没にした案の一つなのよ。
この武器は、私が元いた世界では殺傷力が極めて高く、それでいて扱うだけなら誰でも扱えて簡単に人を殺せる武器。『銃』と言うものよ。」
クーネはテーブルに置かれた銃を手に取り、構えてみせる。銃口がルシールに向けられ、慌てて臨戦態勢に入るが、すぐにその銃は降ろされた。
「安心して。どうやら形だけで武器としては完成してないんでしょ?これだけじゃただの鈍器にしかならないわ。完成させるつもりはあるの?」
「もちろん鍛冶師として完成はさせたいさ。ただこれ以上はどうすればいいのか、何をすればいいのか思いつかなくて、結果そのまま飾り物さ。」
「じゃあお願いがあるんだけど、これ、私にくれない?それと強制はしないけど出来ればもうこの武器は作らないで欲しいの。
おそらくこの世界でこれを作れるのはルシールだけだから、あなたが作らないと約束してくれれば、世界に銃は出回らないはず。」
少し悩むルシールだが、条件をのむ事にし頷いた。
「ありがとう。お礼、と言うわけじゃないけど私が考えていたこの世界における銃を見せてあげる。」
そういうと銃を置き、クーネにしか見えないキーボードで、没にした案を打ち込み始め、決定させる。
目の前においてあった銃が光りだし、若干姿と大きさを変え光が収まる。
「はい完成っと。ルシール、手にとって見て。あなたならそれでこれがどんな武器かわかるでしょ。」
ルシールが四刑衆に成り得た特殊能力『武器理解』。どんな武器でもルシールは触れれば瞬時に理解し、扱いこなし、作成することが出来る。
武器師の由縁である。
銃を手に取った瞬間にルシールの頭へ銃の知識と扱い方、制作方法が流れ込む。そっと銃を戻し深く息を吐くと、
「あぁ、約束するよ、これはもう作らない、いや存在しないほうがいい。飛び道具と言う意味では弓矢と同じだが性能が違いすぎるうえに、魔法よりも凶悪だ。」
「実際はもっと扱いにくいんだけどこの世界の魔法と組み合わせるとね・・・。まぁ結局は使う人次第なんだけど。そういうわけでこの銃は私が使わせてもらうということで。」
銃を手に取ろうとして、その上にルシールの手が重ねられる。
「一つ、聞きたい。この銃と言うものをちゃんと扱いきれる自信は・・・?」
「・・・もしかして、そこまで見えちゃった?」
こくりと頷かれ、少しバツの悪そうな顔をするもののすぐに元の表情に戻り、
「大丈夫、確かに実際の銃には無い性能だけど、ちゃんと使って見せるから。それにそこまでの力を解放する事態になることは無いでしょう。ネィルたちもいるんだし、ね?」
「よくわからんがそれほど危険なものなのか?ならば使うことの無いように努める約束はしよう。安心していいぞ。」
「バルギス様がそうおっしゃるなら・・・。あ、今はネィル様とお呼びするべきですか。」
「この場ならどちらでも構わんさ。さて、人も待たせているしそろそろ行くか。」
ネィルが席を立ち外へと向かい、それについて行くエルミス。
クーネも後を追おうとし、一瞬ルシールのほうへ目を向けると少し寂しそうな表情を見せていたが視線に気付きすぐもとの表情へと戻った。
「ネィル、ちょっと待って。ルシールが何か言いたい事があるみたいよ?」
「な、おい!お前何を・・・!」
ネィルが足を止め振り返り、それとは逆にクーネは外へと出て行き雰囲気を察したエルミスもついて行く。
二人を小屋に残し、庭で待つクーネ達。その間にクーネは自分の設定を少し変更し一瞬光に包まれる。
いきなりの事に驚いたエルミスの目の前で徐々に光が収まり、そこには先ほどまでとは違う服装のクーネがいた。
「く、クーネさん?一体何を・・・?」
「あ、ごめんごめん。ルシールのところで銃を貰ったでしょ?せっかくだからそれを身に付けるように少し服を変えようかと思い立って、ね。」
覆っていたマントを開くと、今までの布製の服とは違い革製のベストを着込み、その下にはルシールから受け取った銃の収まったホルスターが下がっていた。
下も布製のズボンから革製のものへと変わっており、今まで腰に吊るしていた短剣は、背中側へと固定されていた。
銃を手に取りホルスターから引き抜くと、先ほどまでエルミスが練習で使っていた場所にある無傷の的に狙いを定めた。
ゆっくりと息を吸い、銃を持つ手に魔力を集中させ、引き金を引く。「カチッ!」と言う音ともに銃口から放たれた魔力弾が凄まじい速さで的へと向かい着弾と同時に粉々に粉砕される。
それを見ていたエルミスは目を見開いたまま、クーネのほうへと向き直りつつも言葉を失い、口をパクパクとさせるだけであった。
その表情に気をよくしたクーネは、さらに驚かそうと銃をすばやくホルスターへと滑り込ませようとするが、そこは残念ながら素人丸出しに地面へと落とすことになった。
「ありゃ、さすがにそこまではうまく行かないか。でもまぁ問題なく使えそうかな。あとは・・・っと。」
地面に落ちている銃に視線を向け、少し念じると銃がその場から消えクーネの手元へと現れる。
「召喚機能も問題ないみたいね。自分で設定しといてなんだけど、これもまたやりすぎちゃった感のある武器だなぁ。だからこそ没案にしたんだけど、まさかこんな形で日の目を見ることになるとはね。」
手にした銃を今度はちゃんとホルスターへと収め、マントで身体を覆い隠す。そしていまだに驚いたままのエルミスに
「大丈夫?そこまで驚くとは思わなかったんだけど・・・。」
「・・・え、あ、はい!大丈夫、大丈夫です!いえ、それにしてもその銃と言うものは何なのですか!?あんなに離れている的を一瞬で破壊するなんて!
その威力で魔法よりも速く行動できるとなったら、後ろで控えていても防ぎようがないじゃないですか!」
言葉を取り戻したエルミスは驚きのあまりクーネへと詰め寄り、質問攻めが始まるのだった。




