琴葉と帰郷
「主人を放せ。」
帰郷が言う。私は琴葉。日菜梨様の相棒です。
「放してください。」
人志とはまた別の気配。
「相棒か。剣を使うとは面倒だな。お前名は?」
「帰郷。」
「黒い刃」
「帰郷!」
ここは逃げて青様に伝えるしかない。
「帰郷逃げるよ。」
「えっ?でも主人が。」
「必ず後で助けに行きます。」
戸惑ってる帰郷の手を引いて私は逃げた。向かう先は東海家の家。
「琴葉姉待ってください。なぜ逃げたんですか?」
逃げたことに帰郷は納得していないようだ。
「あの人志の気配私達が協力したところで必ず負ける。もしもそれで何も手がかりがない状態で青様たちはどうやって主人様を見つけるの?」
帰郷は何も言えずに黙り込んでいる。
「着いた、入るよ。」
私と帰郷は今、姿が見えない状態だ。家の中に入ると、帰郷の手を引きながら主人様の記憶をたどる。あった。青様の部屋、ネームプレートがかけてあるからすぐにわかった。
私達は青様の部屋に入った後、青様と晴人様の2人がいた。2人だけならありがたい。そう思いながら、私と帰郷は姿をあらわした。
「「うわ?」」
「あの、青様と晴人様でお間違いありません?」
「そうだよ。」
そこで帰郷が口を開く。
「主人様をお救いください。」
「どういうこと?」
2人は理解が追いついてないようだ。
「主人様が何者かに誘拐されたんです。」
私は帰郷が行ったことに付け足した。
「はあ?」
「ちょっと待って父さんを呼んでくる。」
そう言って青様は部屋を出た。
「日和様と遊んで家まで送ってたんですけど、その帰り道に主人様は誘拐されたんです。主人様は必死に抵抗したけどダメでした。」
晴人様は頭を悩ませた。
「琴葉達は戦ったのか?」
「俺が戦ったけど、琴葉姉に手を引かれてここにきました。」
「私と帰郷が一緒に戦っても勝てるような相手ではなかったのです。」
そこで青様が入ってきた。
「晴人、今日日和ちゃんが泊まるから。」
「な、なんで?」
「日の姫だから、何かあった時のために。」
晴人様は顔を真っ赤にしている。
「迎えに行くぞ。」
「お、おう」
日の姫様を迎えに行くのに私と帰郷も同行した。日の姫様はせわしない様子で玄関で待っていた。
「晴人くん、青くん、日菜梨が誘拐されたって本当?」
「ああ。」
「私が日菜梨と遊んだから。」
日の姫様は涙を流した。そこで私が口を開いた。
「そんなことは一切ないです。主人は日和様といる時はいつも楽しそうで、出会う前とはずいぶん変わりました。だからそのように感じなくて良いのです。」
「ありがとう琴葉ちゃん」
私達は日の姫様の家を出た。
青様の家に着くと、ご当主様が待っていた。
「日和さん、すいません、あなたにも迷惑をかけてしまって。今のところ日菜梨さんへの手がかりはぼぼないに等しいのです。最後の手がかりはあなただけです。思い出したことがあったら言ってください。」
「わかりました。」
そう言ってご当主様は自室に戻った。
「私ね、葉月さんに植物を教わったら、最近夢に私とそっくりなんだけど、青くんとも少し似てる人がでてくるんだよね。もしかしたら千代様なのかな。」
そこで光に包まれた人が出てきた。
「お見事。大当たり。私が細川千代。」
「なぜ、千代様が?」
沈黙があった中、日の姫様が口を開いた。
「日菜梨の居場所を言おうときたのだけどいらないかしら?そして日菜梨と華の秘密をね。」
「教えてください。」
「まず、あなた達」
そう言って私と帰郷の方を指さした。
「そろそろ消えるはずよ。」
単刀直入すぎない?
「どういうこと?」
「あなた達相棒は日菜梨そのものと言っても過言ではない。だから日菜梨に入ってから6時間後には強制的に日菜梨の中に戻るようになる。」
「俺達はもう少ししたら、主人の元に行けるのか?」
帰郷が言った。千代様が首を横に振った。
「いいえ、日菜梨の元に戻って6時間は日菜梨の前にも出られないし、日菜梨と話すことすらできない。帰郷は一度華の元にも戻って日菜梨の元に来るから2倍かかるわ。」
日の姫様や青様、晴人様は驚きのあまり声が出ない。
「そして、日菜梨が死んだ瞬間あなた達もいなくなる。それは知ってるわね?」
私達は首を縦に振った。
「つまり、琴葉達がいなくなった瞬間あなた達は日菜梨の生存確認もできないの。もしも日菜梨が死んだ後に助けに行って死んで戻ってこれなかったら、元も子もないわ。それでも日菜梨を助けたい?」
華様とは違って厳しい方だ。私に言った言葉じゃないのに、私の心にこの言葉が響いた。私が弱いから、主人様を守れなかったんだ。私が助けたい。そう思うと涙がポロポロと出てくる。
「勿論です。このまま何もしないなんて絶対に嫌だ。」
「俺も」
「僕もだ。このまま何もしないで大事な人を奪われるのは嫌だ。」
そんなふうに主人様を思ってくれていたんだ。そう思うと私は再び涙がでてくる。
「その答えを信じるわ。次に日菜梨と華の秘密は、さっき日和が言っていた、私と青が似てるって言ったわね?」
まさか、血縁関係のことを言うんじゃ。
「はい」
「その通りよ。日和と青は血がつながってる。そして晴人と日菜梨も。」
「「「え⁉︎」」」
やっぱり血縁のことだったんだ。
「だけどなんで日菜梨はそのことを秘密にしたんですか?」
日の姫様が口を開く。そこで私が答えた。
「晴人様は小さい頃に両親を亡くしてると聞きました。その中で血のつながった主人様だと知った場合、今回のように主人様に何かあったら、晴人様はご自分を責めますよね?」
「確かに責める。」
ここからは私の予想だ。
「そのせいで、晴人様まで怪我をしたり、亡くなったりした場合西海家は途切れます。そのようなことは断じてあってはいけません。」
晴人様は小さな声で「確かに」とつぶやいた。
「千代、それで主人はどこにいる?」
「それは、ヒルズダークの3番目の臣下のカズムのところよ。」
帰郷が「やっぱり」とつぶやいた。
「ここから遠いですか?」
青様が言った。
「いいえ、この近くに行けるループゾーンがあるの。場所は桜林公園よ。」
みんなまた驚きの声をあげた。
「桜林公園で日の姫と月の姫の相棒か月の姫自身と手を繋いである呪文を唱えるの。ルナと。」
まさか桜林公園がその場所だったなんて。
「あの、人志達に捕まった主人は今どうしてるの?」
「きっと、カズムの目的はヒルズダークの力になること。だからカズムの部屋で日菜梨は、カズムの帯のような紐に結ばれているわ。その帯で月の姫の力を奪ってるの。華はヒルズダークとの戦いであまり力が残ってないから、力を多く奪えなかったの。だけど、日菜梨は別よ。日菜梨は戦ってもないし、力が有り余ってる、だからカズムが力を一回奪うのを待てばまた奪える量が増える。その繰り返し。ただし、奪う量を間違えれば日菜梨は死ぬわ。」
主人様どうかご無事でいてください。
「今すぐに行こう。」
青様が叫んだ。
「行くなら、日菜梨の家族を連れて行った方がいいと思う。」
「すぐに日菜太さんに電話する。」
晴人様がいう。
「千代様?」
「日和、青、私はそろそろ元の場所に戻ります。必ず日菜梨をとりかえしてください。カズムならあなた達で倒せると思います。そして、必ず日海で人志を倒してください。」
「「はい」」
それが千代様の願い。
千代様が消えた後、晴人様の電話が終わった。
「日菜太さんと日菜梨の叔父さんが桜林公園にきてくれるって。」
「ほんと?」
「よかった。」
と言った。私も安心した。
「父さんを呼びに行こう。」
みんな続いていう。
「みな・・・みなさん本当に・・・ぐすっ・・・ありがとうございます。」
「みんなで必ず助けよう。」
そう言って青様、日の姫様、晴人様はみんなで手を中心に手を合わせた。私達が消えるまであと5時間15分。
「父さん、母さん、日菜梨の場所がわかりました。」
「本当か?」
ご当主様は安心したような顔に戻った。葉月様は安心しすぎて、声が出てない。
「はい。今みんな桜林公園から日菜梨の場所に向かいます。」
「君たちだけでは不安だ。私達も行く。」
「わかった」
一緒に行ってくれるのは、日菜太、叔父さん日和、青、晴人、ご当主様、葉月さんと帰郷と私含め9人だ。




