第55話 楽しいから
巨大な地下中枢。
無数の演算機。
静かな唸り。
中央。
白い機体。
REVR-IV。
赤紫の機体。
UN-Σ《バスティト》。
向き合う。
沈黙。
そして。
同時に動いた。
⸻
アルテミスが消える。
共有接続100%。
人間の限界を越えた加速。
ブレードテイル。
閃光。
バスティトへ。
火花。
衝突。
地下空間が震える。
セナがぽつりと言う。
「ねえ」
刃が滑る。
アルテミスの追撃。
セナは軽く避ける。
「フィーナってさ」
斬撃。
ブレードが装甲を削る。
「好きな人とかいた?」
フィーナの動きが一瞬だけ揺れる。
「……え?」
セナは普通の声で続ける。
「いるよね」
アルテミスが突撃。
斬撃。
連撃。
セナは壁を蹴る。
回避。
「だってさ」
小型ブレード。
火花。
「フィーナ可愛いし」
フィーナが困惑した声を出す。
「……今それ聞く?」
セナは答える。
「うん」
「今がいいかなって」
アルテミスが再加速。
100%。
連撃。
装甲が裂ける。
警告音。
セナは笑わない。
「で?」
フィーナが少しだけ息を整える。
「……いる」
一瞬。
アルテミスの刃が流れる。
セナが避ける。
「そうなんだ」
「いいね」
⸻
アルテミスが跳ぶ。
天井。
落下斬撃。
床が裂ける。
セナは軽く言う。
「甘いもの好き?」
フィーナの声が裏返る。
「……なに?」
バスティトが四足形態へ。
滑る。
回避。
「パフェとか」
「ケーキとか」
「甘いやつ」
アルテミスが追う。
白い残像。
セナは軽く続ける。
「フィーナ」
「甘いの好きそう」
フィーナが困ったように言う。
「……好き」
セナが小さく頷く。
「やっぱり」
⸻
アルテミスが突撃。
最大速度。
連撃。
ブレードテイル。
装甲が裂ける。
セナが呟く。
「強いね」
フィーナが言う。
「セナ」
「なんでそんな話してるの」
セナは答える。
「だって」
刃を受ける。
火花。
近距離。
二機の視界が重なる。
セナが言う。
「楽しいじゃん」
沈黙。
セナが続ける。
「戦うならさ」
「楽しいこと話そうよ」
フィーナの声が少し震える。
「……変」
セナはあっさり言う。
「知ってる」
⸻
アルテミスが再加速。
白い残像。
100%。
決定打。
ブレードテイル。
一直線。
セナの目が細くなる。
「見えた」
バスティトが一歩踏み込む。
刃の内側。
大型ブレード。
一閃。
⸻
静寂。
アルテミスが止まる。
ブレードテイルが落ちる。
白い機体。
胸部。
深い裂傷。
光が消える。
アルテミスが膝をつく。
共有接続。
停止。
⸻
バスティトも止まる。
装甲は裂け。
腕が歪む。
煙。
セナが息を吐く。
「……疲れた」
コックピットが開く。
二人。
地面に降りる。
沈黙。
フィーナが言う。
「セナ」
「ほんとに退屈なんだね」
セナが肩をすくめる。
「うん」
視線が中枢へ向く。
巨大装置。
LNS。
セナが言う。
「でも」
「もうすぐ静かになるよ」
フィーナがアルテミスに触れる。
残響。
レイの声。
「フィーナ」
「愛してる」
涙が落ちる。
それでも。
動かない。
セナが歩き出す。
中枢へ。
そして。
小さく呟く。
「さて」
「壊そっか」




