第54話 中枢
地下。
通路はさらに深く続く。
人工の壁。
配線。
巨大なパイプ。
バスティトが滑走する。
背後。
灰色の機体。
αシリーズ。
消去兵器。
レールキャノンが向く。
だが。
撃たない。
距離。
十メートル。
二十メートル。
それでも撃たない。
セナがモニターを見る。
「……」
警告表示。
非戦闘区域
セナが小さく笑う。
「そっか」
「撃てないんだ」
バスティトが速度を落とす。
αは追う。
だが。
一定距離で止まる。
それ以上は来ない。
ただ監視している。
兵器だから。
セナは前を見る。
通路の奥。
巨大な扉。
開いている。
その先。
光。
⸻
バスティトが通路を抜ける。
視界が開く。
巨大空間。
天井は高い。
無数の柱。
装置。
演算機。
巨大な計算装置が林のように並んでいる。
中央。
巨大な円柱。
メインジェネレータ。
LNS中枢。
世界の均衡。
その中心。
セナがぽつりと言う。
「わぁ」
「ほんとにあった」
バスティトが止まる。
静かな空間。
戦闘音はない。
兵器もいない。
その代わり。
一機の機体。
白。
花のような装甲。
REVR-IV。
そこに立っていた。
⸻
セナが操縦桿を倒す。
バスティトが変形する。
脚部が展開。
四足が折り畳まれる。
人型形態。
赤紫の機体が立つ。
二機。
向き合う。
中枢の前。
静かな空間。
セナが言う。
「……ほんと」
少し笑う。
「歪んでるにゃあ」
アルテミスのコックピット。
フィーナが目を閉じる。
「ごめんね、セナ」
セナが肩をすくめる。
「謝んないでよ」
少し間。
「あたしが退屈なだけだから」
フィーナは静かに言う。
「ほんとに退屈なんだね……」
一瞬。
声が揺れる。
「私は」
言葉を選ぶ。
「失いたくないだけ」
セナが聞く。
「……戦争を?」
フィーナは小さく首を振る。
「……残響を」
沈黙。
巨大な計算機の音だけが響く。
セナが目を細める。
「……そっか」
短い沈黙。
そして。
小さく言う。
「それじゃ」
操縦桿を握る。
「やるしかないね」
アルテミスが構える。
白い装甲。
静かに光る。
フィーナが言う。
「私は残響を守る」
バスティトがブレードを抜く。
赤い刃。
セナが言う。
「あたしは残響を消す」
二機。
向き合う。
巨大な中枢の前。
フィーナが言う。
「自分のために」
セナが答える。
「自分のために」
沈黙。
次の瞬間。
二機が同時に動く。




