第51話α
森。
静かな空気。
地面をかすめるように滑走する赤紫の機体。
UN-Σ《バスティト》。
草が揺れる。
木々の影が流れる。
セナはコックピットで足を軽く組み替えた。
残響が流れ込む。
フィルタなし。
むき出し。
それがもう普通になっていた。
「んー」
軽く首を回す。
「今日は静かだにゃあ」
その瞬間。
地面が震えた。
バスティトのセンサーが反応する。
振動。
地下反応。
セナが眉を上げる。
「ん?」
次の瞬間。
地面が割れる。
巨大な円形ハッチ。
森の地面がスライドする。
地下構造。
重い機械音。
そこから。
灰色の機体がせり上がる。
一機。
二機。
三機。
セナが目を細める。
「……あ」
笑う。
「下か」
⸻
灰色の機体。
丸い。
滑らかな装甲。
角がない。
曲面だけの構造。
人型ではある。
だが。
どこか人間らしくない。
兵器。
ただの兵器。
中央に赤いセンサー。
背部。
大口径レールキャノン
腕部。
大型ブレード
塗装はない。
灰色のまま。
戦場の色。
セナが小さく言う。
「かわいくない」
モニターに解析が流れる。
出力。
残響圧。
反応速度。
セナが少し笑う。
「……あー」
「これ」
肩をすくめる。
「100%じゃん」
常時出力。
接続値100%。
人間なら壊れる領域。
でも。
これは違う。
人が乗っていない。
迷いもない。
撤退もない。
ただ。
消すための兵器。
セナが呟く。
「カルネアの兵器ね」
⸻
αが動く。
一瞬。
距離が消える。
大型ブレード。
振り下ろし。
セナの目が光る。
「速っ」
バスティトが横へ跳ぶ。
地面が裂ける。
衝撃波。
木々が吹き飛ぶ。
セナが笑う。
「いいね」
「それっぽい」
⸻
二機目。
レールキャノン。
砲口が光る。
セナが言う。
「撃つよねー」
発射。
空気が裂ける。
一直線。
バスティトが消える。
変形。
自由形態。
四足。
地面を這う。
不規則な動き。
砲撃が外れる。
地面が蒸発する。
セナが言う。
「人間じゃ無理だねこれ」
⸻
三機のα。
包囲。
ブレード。
砲撃。
同時攻撃。
迷いがない。
撤退もない。
完全兵器。
セナは戦いながら。
モニターを見ていた。
地下構造。
出入口。
ハッチ。
エネルギー反応。
セナが呟く。
「へぇ」
バスティトが跳ぶ。
大型ブレード。
閃光。
αの腕を斬る。
火花。
だが。
αは止まらない。
兵器だから。
砲撃。
至近距離。
セナが笑う。
「すごいすごい」
機体を旋回させる。
回避。
加速。
「ちゃんと消しに来てるじゃん」
⸻
戦闘の中。
セナの視線は別の場所を見ていた。
さっきの地面。
ハッチ。
地下。
モニターに座標が残る。
セナが言う。
「入口」
一瞬。
ブレードが閃く。
αのセンサーが砕ける。
それでも動く。
兵器だから。
セナが操縦桿を倒す。
バスティトが滑走する。
森を抜ける。
戦闘離脱。
後ろで。
αが再び地面へ降りる。
ハッチが開く。
地下へ戻る。
セナはそれを見て笑う。
「なるほど」
モニターに座標が固定される。
地下構造。
カルネア。
セナが軽く背伸びする。
「場所は分かった」
バスティトの装甲を軽く叩く。
「いいね」
猫みたいに目を細める。
「じゃ」
遠く。
さっきのハッチ。
地面が静かに閉じる。
その下。
カルネア。
均衡の中枢。
セナが呟く。
「入口探そっか」
赤紫の機体が。
再び滑走する。
森の奥へ。
均衡の中心へ。
静かに。
近づいていった。




