第50話 均衡保全
カルネア連邦。
中央中枢。
地下観測室。
巨大な空間に無数の光が浮かんでいた。
モニター。
戦場。
残響波形。
接続値。
REV。
GRASP。
世界中の戦争が、ここに流れ込んでいる。
観測官が報告する。
「対象、活動継続」
モニターに映る。
赤紫の機体。
UN-Σ《バスティト》。
共和国戦域。
アルテミスとの接触記録。
帝国第4部隊。
均衡誤差。
すべてが並んでいる。
解析官が言う。
「均衡値、逸脱」
「補正不能」
観測室が静まる。
中央席。
グレイヴスが静かにモニターを見る。
「予測通りですね」
観測官が続ける。
「対象、均衡構造を理解している可能性」
別のモニター。
バスティトの残響波形。
フィルタ無し。
むき出し。
解析官が言う。
「LNS未搭載機体」
「均衡干渉可能」
危険度表示。
S
観測官が呟く。
「イレギュラー」
グレイヴスは静かに言う。
「いいえ」
一拍。
「均衡破壊因子です」
モニターにセナの姿が映る。
退屈そうな顔。
猫のような目。
グレイヴスは続ける。
「彼女はセルド研究所の個体」
「理解力、逸脱率、行動傾向」
「すべて一致」
観測官が数字を表示する。
LNS中枢到達確率
82%
誰かが息を呑む。
グレイヴスは穏やかに言う。
「やはり」
「そこへ来ますね」
観測官が言う。
「排除対象指定を」
グレイヴスは短く答える。
「最優先」
モニターが切り替わる。
カルネア専用通信。
帝国。
共和国。
両軍に潜伏するカルネア構成員へ。
送信される。
⸻
イレギュラー対象
セナ・セルド
最優先排除対象
⸻
送信完了。
観測官が続ける。
「均衡維持戦力、展開準備」
モニターが切り替わる。
地下格納区画。
暗い空間。
そこに並ぶ機体。
GRASPでもない。
REVでもない。
黒い装甲。
異形のフレーム。
解析官が言う。
「αシリーズ」
「均衡維持専用兵器」
観測官が静かに言う。
「戦争干渉機」
グレイヴスが穏やかに言う。
「これは」
「世界を守る機体です」
観測室が静まる。
グレイヴスは続ける。
「さあ、守りましょう」
一拍。
「1匹の獣を駆除して」
モニターに表示される。
α-01 起動
α-02 起動
均衡維持兵器。
カルネア連邦の牙。
⸻
共和国。
郊外。
森。
静かな場所。
赤紫の機体が立っている。
UN-Σ《バスティト》。
セナはコックピットの中。
ユニオンスーツの発光ラインが淡く光る。
もう違和感はない。
残響が流れ込む。
むき出しの感覚。
セナは軽く肩を回す。
「んー」
少し笑う。
「慣れちゃったにゃあ」
モニターに通信断片が流れる。
カルネア。
均衡。
排除。
全部つながる。
セナは言う。
「やっぱり黒幕じゃん」
「で」
少し考える。
「追いかけてくるってことは」
センサーを見る。
遠く。
空の向こう。
微かな反応。
セナは笑う。
「そっちの方にあるってことだよね」
操縦桿を握る。
バスティトが静かに起動する。
残響が広がる。
むき出しの世界。
セナは前を見る。
遠くの空。
黒い機影が現れる。
カルネア。
αシリーズ。
均衡維持兵器。
セナはそれを見て。
楽しそうに言う。
「お」
「来たねお客さん」
バスティトが滑走する。
地面を削りながら加速する。
セナが小さく笑う。
「さて」
操縦桿を倒す。
赤紫の機体が走り出す。
「ご案内してもらいましょーか」
均衡は。
今。
初めて。
真正面から
壊されようとしていた。




