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第47話 観測室

カルネア連邦。


中央中枢。


地下深度数百メートル。


巨大な空間が広がっている。


壁一面のモニター。


無数の光。


戦場。


残響波形。


LNSネットワーク。


世界中の戦争が、ここに映し出されていた。


観測室。



観測官が報告する。


「均衡値、急落」


モニターに戦闘ログが流れる。


帝国第4部隊。


共和国部隊。


そして。


赤紫の機体。


UN-Σ《バスティト》。


解析官が言う。


「対象確認」


「セナ・セルド」


別の観測官。


「DC3rd個体」


中央席の男が静かに画面を見る。


「LNS反応は」


「……無し」


室内の空気がわずかに変わる。


ありえない。


REVも。


GRASPも。


すべての機体にはLNSが存在する。


それが接続の前提。


それが均衡の基盤。


しかし。


バスティトには。


それが無い。


モニターに残響波形が表示される。


荒い。


むき出し。


フィルタ無し。


直接接続。


観測官が呟く。


「均衡外……」



映像が切り替わる。


共和国戦場。


アルテミス。


バスティト。


援軍阻止。


戦況逆転。


共和国勝利。


解析官が言う。


「均衡誤差発生」


「補正不能」


中央席の男が静かに言う。


「セルド研究所の個体か」


「はい」


「DC3rd」


男はモニターに映るセナを見つめる。


猫のような目。


薄い笑み。


一拍。


「設計逸脱」



巨大モニターが展開する。


LNSネットワーク。


世界中のREV。


GRASP。


接続。


残響。


均衡。


すべてが繋がっている。


戦争は自然に起きているわけではない。


調整されている。


管理されている。


均衡。


それが。


揺れ始めている。


原因。


一人。



観測官が言う。


「対象」


「均衡破壊因子」


中央席の男が短く言う。


「排除」


モニターには


UN-Σ《バスティト》。


セナの顔。


その笑み。


観測官が小さく呟く。


「……排除できるのか」


男は静かに答える。


「できる」


少し間を置く。


「できなければ」


視線がモニターに落ちる。


「均衡は崩壊する」


観測室が静まり返る。



共和国。


軍本部。


フィーネリアの端末が静かに光る。


着信。


発信者表示。


グレイヴス


フィーナは一瞬だけ視線を落とす。


そして回線を開く。


「……グレイヴス代表」


モニターの向こうから、穏やかな声が返る。


「お久しぶりですね、フィーネリア王女」


落ち着いた声。


柔らかい口調。


まるで世間話のようだった。


フィーナは静かに答える。


「このような時間にご連絡とは、珍しいですね」


グレイヴスはわずかに笑う気配を見せる。


「ええ」


「少し、気になる事案がありまして」


一拍。


「本日の戦場で、所属不明機が確認されました」


フィーナの指がわずかに止まる。


「……ええ」


「確認しています」


グレイヴスは続ける。


「赤紫の機体」


「変形機構」


「LNS反応無し」


少しの沈黙。


そして穏やかに言う。


「ご存知の機体でしょう?」


フィーナはすぐには答えない。


窓の外を見る。


夕焼け。


戦場。


セナの声。


――ね?戦争、終わるかにゃあ?


フィーナはゆっくり言う。


「……ええ」


「心当たりがあります」


グレイヴスは否定もしない。


ただ、静かに言う。


「カルネアとしても」


「看過できない存在となりました」


その声は穏やかだった。


だが。


意味は重い。


フィーナは聞く。


「……排除命令ですか」


グレイヴスは少し間を置く。


それから優しく言う。


「王女」


「あなたは聡明な方です」


「お分かりでしょう」


直接は言わない。


しかし。


意味は同じだった。


フィーナは小さく目を閉じる。


「……そうですか」


グレイヴスが続ける。


「一度、お話ししたいと思いまして」


「お時間をいただけますか?」


丁寧な口調。


しかし断る余地はない。


フィーナは答える。


「分かりました」


「伺います」


グレイヴスは静かに言う。


「ありがとうございます、王女」


一拍。


「あなたとなら」


「きっと良い話ができるでしょう」


通信が切れる。


部屋が静かになる。


フィーナはしばらく動かなかった。


胸の奥で。


セナの言葉が響く。


――退屈が嫌なだけ


フィーナは小さく呟く。


「……セナ」


夕焼けが、ゆっくり沈んでいった。


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