第46話 追跡者
森。
夜。
UN-Σ《バスティト》が低く唸る。
セナはコックピットで端末を眺めていた。
追跡信号。
いっぱい。
帝国。
共和国。
「わー」
半目で笑う。
「ほんとに全部敵だ」
レーダーが鳴る。
複数反応。
一直線。
「来たにゃあ」
⸻
森を裂く滑走音。
帝国GRASP部隊。
第4部隊。
黒い機体が展開する。
包囲。
通信が開く。
「セルド・セナ」
指揮官の声。
「抵抗する場合、排除する」
セナはため息。
「最初からそのつもりでしょ」
バスティトが立ち上がる。
四足形態。
背部の大型ブレードが展開する。
⸻
帝国GRASPが突撃。
振動刃。
銃撃。
弾幕。
バスティトが動く。
地面を蹴る。
滑る。
回る。
一機。
ブレード。
コックピット破壊。
二機。
脚部切断。
三機。
胸部電磁砲。
閃光。
爆散。
戦闘は一瞬だった。
残った帝国機が後退する。
「……なんだあれ」
「同じGRASPじゃない」
セナが小さく呟く。
「敵うわけ」
⸻
その時。
新しい機体が滑り込む。
白い装甲。
鋭いシルエット。
GRASP-10《ヴレイヴ》。
セナの口元が少し上がる。
「お隣さん」
通信が繋がる。
エルの声。
「……やはりあなたでしたか」
バスティトが向き直る。
セナは楽しそうに言う。
「新型?」
エル。
「ええ」
「あなたの為の機体です」
ヴレイヴが加速する。
突撃。
振動刃。
高速。
正確。
でも。
届かない。
バスティトが滑る。
四足。
回転。
跳躍。
予測不能。
セナが笑う。
「いいね」
「楽しい」
ヴレイヴが二度目の突撃。
交差。
火花。
次の瞬間。
大型ブレード。
ヴレイヴの脚部が切断される。
機体が崩れる。
地面を滑る。
停止。
⸻
森が静かになる。
バスティトが近づく。
ヴレイヴは動けない。
通信。
エルが言う。
「……理解できません」
セナが首を傾げる。
「なにが?」
エルの声は静かだった。
「あなたは」
「カルネア連邦で生まれた」
一瞬。
セナの目が細くなる。
カルネア。
聞き慣れた名前。
セルド研究所。
自分が生まれた場所。
エルは続ける。
「なのに」
「カルネア連邦を否定するというんですか……」
セナは少し黙る。
そして。
小さく呟く。
「……あー」
頭の中で何かが繋がる。
セルド研究所。
DC。
LNS。
戦争。
均衡。
終わらない理由。
セナは笑う。
「そっか」
「困るのか」
エル。
「……何がです」
セナはバスティトをゆっくり回す。
「戦争」
「終わったら」
少し考える。
それから。
猫みたいに笑う。
「カルネアが困るんだ」
沈黙。
エルは何も言えない。
セナが続ける。
「なるほどね」
「盲点だった」
バスティトが変形する。
強行離脱形態。
エンジンが唸る。
セナは軽く手を振る。
「ありがと、お隣さん」
一拍。
「ちょっと」
「実家に帰ってみよっかな」
エンジン全開。
森を裂く。
バスティトが夜の奥へ消える。
⸻
エルは空を見上げる。
静かな声。
「……止められない」
それは敗北ではない。
確信だった。
セナ・セルドは
もう
均衡の外にいる。




