表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
42/56

第42話 フィルタのない声

REVR-IVアルテミス


接続。


共有率、上昇。


40%。


残響が広がる。


澄んだ感覚。


整えられた世界。


アルテミスの残響はいつも穏やかだ。


柔らかく、包むように広がる。


「第1部隊、出撃」


帝国軍の侵攻。


いつもの戦場。


いつもの空。


フィーナは静かに息を吐く。


「行くよ」


アルテミスが滑走する。



戦場。


共和国軍は押されていた。


帝国GRASP。


数が多い。


ラインが崩れかけている。


「第3部隊、後退!」


「持ちこたえろ!」


通信が荒れる。


フィーナは加速する。


「援軍に入る」


アルテミスが前線へ向かう。


いつもの形。


白百合が戦場に入れば、流れは変わる。


そのはずだった。



警報。


新規反応。


識別不能。


「……?」


レーダーに一機。


細い機体。


赤紫の外装。


橙の発光ライン。


アルテミスの進路に、ゆっくり現れる。


フィーナの心臓が一瞬止まる。


「所属不明機?」


アルテミスが速度を落とす。


その機体は、静かに滑走してくる。


まるで。


道を塞ぐように。



残響。


感じる。


でも。


おかしい。


整っていない。


荒い。


むき出し。


フィルタがない。


「……なに、この残響」


アルテミスの残響が揺れる。


こんな感覚、初めてだった。



通信が開く。


少女の声。


「久しぶり」


フィーナの呼吸が止まる。


この声。


カフェ。


パフェ。


あの少女。


「……セナ?」


赤紫の機体が、少し傾く。


「正解」


軽い声。


いつも通り。


フィーナは言葉を失う。


「どうして……」


「そんな機体に」


セナが笑う。


「いいでしょ」


「自由で」



その瞬間。


バスティトが動く。


急加速。


予測不能の軌道。


アルテミスのブレードテイルが反応する。


でも。


遅れる。


「速い……!」


バスティトはアルテミスの周囲を滑る。


左右。


背後。


上。


動きが読めない。


アルテミスの残響共有が追いつかない。


「……っ」


フィーナは気づく。


この機体。


戦う気がない。


ただ。


止めている。


アルテミスを。


援軍に行かせない。



その間に。


戦場が動く。


共和国軍が押し返す。


帝国GRASPが崩れる。


ラインが逆転する。


「……え?」


通信が入る。


「帝国軍、後退!」


「第3部隊、押し返しました!」


フィーナは息を止める。


アルテミス無しで。


共和国軍が勝った。


そんな戦闘。


ほとんどない。



セナが機体を止める。


アルテミスの前。


距離、数十メートル。


フィーナは呟く。


「どうして……」


セナの声。


少し楽しそう。


「ね?」


一拍。


そして。


軽く言う。


「戦争」


「終わるかにゃあ?」


フィーナの心臓が大きく鳴る。


あの言葉。


カフェで聞いた言葉。


同じ。



バスティトが後退する。


赤紫の機体が距離を取る。


フィーナは追えない。


残響がまだ揺れている。


そして。


理解してしまう。


あの機体は。


均衡の外。



セナが最後に言う。


「じゃーね、白百合」


バスティトが急加速する。


赤紫の光が空へ消える。



戦場は静かになった。


共和国軍が勝った。


でも。


フィーナは動けない。


コックピットの中で、ただ呟く。


「……セナ」


胸の奥で、何かが揺れる。


もし。


あの子が。


均衡を壊す存在だとしたら。


この戦争は。


本当に。


終わるのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ