第37話 崩れない線
二度目の出撃。
同じ境界帯。
同じ配置。
違うのは、セナの気分だけだった。
REV-II。
接続開始。
15%。
「軽いねえ」
制限内。
でも十分。
「今日はちょっとだけ、試してみよっか」
⸻
開戦。
帝国側の布陣。
前衛三。
中衛二。
後衛支援。
共和国も、ほぼ同じ。
「ほんと鏡みたい」
通常兵は5%運用。
重い。
遅い。
迷いがある。
セナは15%。
滑る。
一気に前へ。
「307、突出するな!」
「りょーかーい」
言いながら、加速。
振動刃を抜く。
一機。
二機。
三機。
崩れる。
帝国前衛が裂ける。
「わ、穴あいた」
連射銃で中衛を抑える。
距離を詰める。
「これで崩れなかったら、すごいよね」
四機目。
撃破。
明確にラインが折れる。
共和国側がざわつく。
「押せる!」
セナはさらに前へ。
「さあ、どうするの?」
⸻
一瞬。
静寂。
そして――
帝国側、増援。
共和国側も増援。
前進停止命令。
「307、下がれ!」
「えー」
止まらない。
もう一歩踏み込む。
けれど。
それ以上は広がらない。
押し込みすぎない。
奪いすぎない。
どこかで、きれいに止まる。
セナは中央で足を止めた。
「……へえ」
まるで。
壊れすぎないように。
増えすぎないように。
減りすぎないように。
誰かが調整してるみたいに。
⸻
「307!命令違反だぞ!」
「志願兵が出しゃばるな!」
怒声。
でも本気じゃない。
死者なし。
戦果十分。
ラインはほぼ元通り。
セナは小さく笑う。
「取ったら取り返す、ねえ」
「でもさ」
「崩れないんだよね、ぜんぜん」
通信越しに誰かが言う。
「戦争はそんな単純じゃない」
セナは半目になる。
「ほんとかなあ」
⸻
帰投。
整備兵が首を振る。
「また四機も落として……」
「15%でやりすぎだろ」
セナはメイルを見上げる。
量産機。
普通。
癖がない。
「でもね」
今日、分かった。
「自然じゃないよね、これ」
明らかに押せた。
でも壊れなかった。
偶然じゃない。
帝国のときもそうだった。
共和国も同じ。
⸻
夜。
兵舎。
天井を眺める。
静か。
でも。
「同じ匂い」
帝国と。
共和国と。
「ふーん……」
目を閉じる。
「壊れるかなあ」
怒りじゃない。
復讐でもない。
ただ。
「ちょっと見てみたいだけ」
猫みたいに、尻尾を揺らすような好奇心。
戦争はまだ、終わらない。
でも。
セナの中で何かが、確実に動き始めていた。




