第3話 何も無い
食堂。
既に空になったパフェのカップ。
スプーンだけがくるくると回されている。
セナ「暇だにゃあ」
今日は模擬戦の予定だった気がする。
まあ、よくあることだ。
覚えてないなら、重要じゃない。
模擬戦を終えた帝国兵たちが数人入ってくる。
「ほら居たぞ、DCの」
「白百合に負け帰ったくせに偉そうなアイツ」
「おい、模擬戦負けたんだから行けよ」
笑い声。
セナ「(うるさいなー)」
一人が近づいてくる。
帝国兵「なあDC……セナちゃんだっけ?」
セナ「んー?」
帝国兵「この後、空いてる?」
セナは視線だけ向ける。
帝国兵「疲れてそうだしさ。ちょっとマッサージしてあげるよ」
肩に触れる手。
奥で仲間たちがにやにやしている。
セナ「(あー、なるほど)」
少しだけ目を細める。
「分かったー。それじゃ行こ?」
自然に袖を掴む。
上目遣い。
帝国兵は一瞬戸惑い、それから笑った。
⸻
帝国兵の自室。
扉が閉まる。
乱暴な手。
荒い呼吸。
セナは抵抗しない。
されるまま。
視線は天井。
「DCは使われてりゃいいんだよ」
笑い声。
誰かの手。
誰かの声。
区別がつかない。
セナ「……」
身体は反応する。
声も出る。
でも。
心は動かない。
冷たい欲望。
それだけ。
何人いたか、分からない。
終わる。
男たちは満足げに出ていく。
「使われてよかったな」
扉が閉まる。
静か。
ベッドに沈んだまま、しばらく動かない。
ゆっくりと起き上がる。
脚に力が入らない。
知らない部屋。
知らない匂い。
セナ「……暇つぶしには、なったかにゃあ」
小さく呟く。
お腹が鳴る。
「あー……お腹すいた」
ゆっくり立ち上がる。
シャワーを浴びる。
水が流れる。
体温が戻る。
何も残らない。
興味がないから。
意味がないから。
ただの時間消費。
シャワーを止める。
鏡を見る。
濡れた黒髪。
片目が隠れている。
暗い桃色の瞳。
「……つまんない世界」
タオルを肩にかけたまま、部屋を出る。
また食堂へ向かう。
何もなかった顔で。




