第23話 自由への牙
格納庫最奥。
照明は最低限。
巨大な黒いフレームが吊られている。
まだ外装は未完成。
骨組みだけの異形。
「お、できてるじゃん」
セナが口笛を吹く。
アインスは端末を操作しながら振り返る。
「“ほぼ”ですけどね」
隣に立つエルは無言。
視線は機体とセナを交互に見る。
「型式番号はまだ未定です」
「識別名も」
ホログラムが展開される。
三つのシルエット。
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■ 白兵形態
人型。
キングスやクインスに近い骨格。
両脚、両腕、標準武装。
「対REV戦を想定した通常形態ですね」
アインスが淡々と説明する。
「あなたが今まで扱ってきたGRASPの延長線上です」
セナは顎に手を当てる。
「まあ普通だねー」
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■ 自由形態
ホログラムが歪む。
両腕が地面に接続。
四足。
いや、六点支持に近い姿勢。
脚部が増えたような可動構造。
頭部にブレード。
「白兵形態からの再構築です」
「腕部フレームを支持脚へ転用」
「腕が使えない分、頭部に主兵装を移設」
アインスが拡大表示する。
猫のような姿。
鋭い。
低い。
「不規則挙動に特化しています」
「予測しづらい動きが可能ですね」
「従来のGRASPやREVには無い形ですから」
セナの目が少しだけ光る。
「いいじゃん」
「かわいーじゃん」
⸻
■ 強行離脱形態
脚部が折り畳まれる。
フレームが水平に再配置。
ホバーバイクのような流線。
「脚部全収納」
「推進系を集中稼働」
「武装は胸部バルカンのみ」
「所謂離脱専用です」
セナは口を開ける。
「あー、それいい」
「逃げる時用」
アインスは肩をすくめる。
「生存率は大切ですから」
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沈黙。
エルが口を開く。
「あなたは、これで何をしようと言うんです?」
視線は真っ直ぐ。
探る。
責める。
試す。
セナは振り返らない。
機体を見上げたまま。
「いつも通り」
少しだけ笑う。
「退屈しのぎだよん」
エルの指先がわずかに動く。
「退屈しのぎのために、帝国を使うつもりですか」
「帝国も共和国も、どっちも使ってるじゃん」
さらり。
空気が止まる。
アインスは静かに観察している。
セナは機体の脚部フレームを見つめる。
「これさ」
「ちゃんと壊せるよね?」
「何をでしょう?」
「なーんでも」
アインスはわずかに笑う。
「構造物である限り、壊せないものはありません」
エルが小さく息を吐く。
セナは振り返る。
「壊せるってさ?」
エルの瞳が細くなる。
「何を壊すつもりなんですか?」
セナは肩をすくめる。
「今はひ・み・つ」
格納庫の天井灯が機体の影を落とす。
それはもう、キングスではなかった。
歪んだ何か。
変わるもの。
壊せるもの。
そして。
壊すための形。




