第22話 決定事項
訓練の翌日。
第4部隊内の空気は露骨だった。
セナが食堂に入ると、
一瞬だけ静まり、すぐにざわつく。
「あいつだ」
「味方を盾にしたって」
「DCってああいうもんなんだろ」
聞こえるように。
聞こえないふりをする。
セナはトレーを持ち、空席に座る。
「今日も平和だにゃあ」
誰も相席しない。
遠巻き。
それでいい。
どうでもいい。
⸻
共用廊下。
第4部隊隊長がエルを呼び止める。
「セルド」
「はい」
「お前はあれをどう思う」
エルは少しだけ考える。
「戦果は安定しています」
「聞いているのはそこじゃない」
沈黙。
「……制御不能の兆しはあります」
隊長は舌打ちする。
「上からも目を付けられている。これ以上好き勝手やらせるな」
「了解しました」
⸻
深夜。
格納庫奥。
人払い済み。
暗い。
エルの端末が静かに光る。
暗号通信。
発信元:非表示。
「報告」
エルは淡々と述べる。
「命令違反を継続。倫理的制御は希薄。独断傾向強化」
少しの沈黙。
音声が返る。
低く、機械的。
「観測対象セルド・セナを重要危険因子に再分類」
「次の重大違反を確認次第、排除対象へ移行」
エルの瞳がわずかに揺れる。
「……了解」
通信が切れる。
静寂。
エルは端末を閉じる。
拳を握る。
強く。
「あなたは……どこまで行くんですか」
⸻
翌日。
セナはまた勝手に動く。
命令は守る。
ぎりぎり。
線の上を歩く。
わざと。
怒号が飛ぶ。
「セルド!」
「なにー?」
エルは遠くから見ている。
視線を逸らさない。
“次”が来れば。
自分がやる。
そういう役目だ。
セナは気づいている。
視線に。
温度に。
「お隣さん、目怖いよ?」
エルは表情を変えない。
「監視ですから」
「正直だにゃあ」
セナは笑う。
その笑みの奥で、
少しだけ、退屈が深くなっていた。




