第15話 小さな無理
帝国東部戦線。
第6部隊、出撃。
接続開始。
GRASP-03《ガンズ》。
ユウリの接続値は6%。
規定内。
一般兵としては上出来。
共和国のREV部隊が前進してくる。
いつも通りの衝突。
砲撃。
砂煙。
命令。
「第6、右翼展開!」
「押し返せ!」
ユウリは前へ出る。
撃つ。
当たる。
相手のREVがよろける。
「よし……!」
その瞬間。
味方のガンズが被弾し、膝をつく。
「後退!」
通信が飛ぶ。
ユウリは迷う。
――セナさんなら。
きっと前に出る。
接続値を、上げる。
7%。
視界が少しざらつく。
でも動ける。
「いけます!」
前に滑る。
味方機の前に立つ。
射撃。
共和国機を一機撃破。
鼓動が速い。
「やった……!」
側面警告。
遅い。
死角。
REVの近接ブレード。
ユウリは振り向く。
動きが、わずかに鈍る。
8%。
一瞬、白く飛ぶ。
胸部装甲、貫通。
衝撃。
コックピットに赤い警告灯。
「……あ」
呼吸が浅い。
血の匂い。
通信が騒ぐ。
「ラシアル被弾!」
「救出急げ!」
視界が狭まる。
ああ。
やっぱり。
無理は、ダメなんだ。
「……ごめん、なさい」
それが誰に向けた言葉かも分からないまま。
GRASP-03《ガンズ》、機能停止。
⸻
戦闘は続く。
帝国は持ちこたえる。
共和国は退く。
奪い、奪い返す。
ただそれだけ。
⸻
数時間後。
帝国本土。
共用休憩室。
セナは端末を見ている。
戦闘ログ。
戦死者一覧。
ユウリ・ラシアル
17歳
GRASP-03《ガンズ》
接続過負荷による反応遅延、戦闘中死亡
セナの指が止まる。
しばらく無言。
端末を閉じる。
椅子にもたれる。
「……あーあ」
小さく。
怒りもない。
悲鳴もない。
「言ったのに」
天井を見上げる。
「無理すると死ぬよって」
静かだ。
何も変わらない。
外ではまた警報が鳴っている。
回っている。
回り続ける。
セナは立ち上がる。
感情は揺れない。
でも。
どこか一つ。
何かが、擦り減った。
それだけだった。




