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第16話 空白

食堂。


いつも通りの時間。


いつも通りの席。


セナの前にはパフェ。


スプーンですくう。


「あー、ん」


甘い。


……はず。


エルが向かいに座る。


静かに。


「戦死したみたいですね」


間。


「ユウリさん」


セナは顔を上げる。


「……あ」


少し考える。


「あ、その名前だった」


エルはまばたきする。


「……忘れてたんですか?」


「うん」


即答。


パフェをもう一口。


「悲しいとかは?」


「分かんないよ」


肩をすくめる。


「人は死ぬじゃん」


「だから?って感じ」


エルは視線を落とす。


「そうですか」


セナはスプーンを止める。


眉を寄せる。


「なんか不味くなった?」


「え?」


「これ」


パフェを指差す。


「美味しくない」


エルは自分のスプーンで一口すくう。


口に入れる。


「……変わりませんよ?」


セナはもう一度食べる。


「んー……」


味は同じ。


甘い。


冷たい。


なのに。


「前は、もうちょい美味しかった気がするんだけどなー」


視線が宙を泳ぐ。


「まあいっか」


スプーンを動かす。


エルはセナを見る。


表情は変わらない。


悲しみもない。


怒りもない。


空白。


ただ。


ほんの一瞬だけ。


“何かを探す目”をしていた。


でも。


すぐ消える。


セナは最後の一口を食べる。


「ごちそーさま」


立ち上がる。


「街にでも行こっかなー」


背伸び。


伸びをしながら歩いていく。


エルは残されたグラスを見る。


溶けかけたクリーム。


甘さは変わらない。


でも。


確かに何かが、薄れていた。


エルは小さく呟く。


「……空洞ですね」


その背中は。


誰よりも、人間らしくなく。


誰よりも、人間だった。


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