97 あんた達は中々見る目があるようだね!
改良された帰還札を使い村のすぐ近くの森の外周まで戻ってきた僕たち。
「これは便利」
「暇を見て作ってもらってる。でも時間も魔石もかなり使うって」
「そうなんだ。なら…」
そう言ってバッグに入れてあった魔石を全部渡す。
ついでに[魔法の箱]から野菜と肉を大量に出し、ユリアのバッグに収納してもらいヘパイトスさんへのお礼にしてもらう。改めてお礼も伝えに行かなきゃね。そう思いながら冒険者ギルト(仮)へと足を運び、今回の成果を出しておく。
魔石は無いがその他の素材は多少は取れた。お礼をするにもお金が大事。しっかり稼いで良いものをいっぱい作ってもらおう。
そうして尋ねたギルドには、3人組の冒険者が待ち構えていた。
あまり広くはないギルドの端に設置してある長椅子に座っている。
こちらをチラチラと伺っているその3人は、サイドの髪を刈り上げ真ん中はトサカのように立て、肩と膝には棘々のパットを装備している。顔に星やハートのペイントをしているのも不気味だ。
少し前からこの村をウロウロしている3人だ。
この棘々ファッションは王都でもたまに見かける人気のファッションではあるが、その3人を見たユリアが「また世紀末さんがいる」と言っていた。その意味は分からないがスルーする。
きっとどうでも良い何かなのだと思っていた。
警戒を強めながらもカウンター横から裏の解体所へ移動する。解体所のおじさんに素材を出し、カロナがカードを出して「報酬はパーティ口座へですわ!」と伝え戻ってきた。
そこを待ち構えていたように先ほどの3人組に声を掛けられる、
僕たちは警戒を最大限にして身構えることになった。
「すみません!アレスさん、ですよね?」
「そうだけど、何か用ですか?」
名前までバレている。これは逃げた方が良いのだろうか?
「あの、アレスさんたちが超イカす馬車に乗ってるって言うのを聞いて!」
「俺たち、声を掛けるチャンスをうかがってたんっす!」
「できれば!見せて頂くだけでいいんで!お願いできませんか?」
あまりに拍子抜けした僕は多分間抜けな顔をしているだろう。
「あんた達は中々見る目があるようだね!」
そんな中、ユリアがドヤ顔で一歩前に出た。
「あなたは…」
「私が、その馬車、オートバイの発案者!ということだよ!」
腰に手をあてそれなりの胸を張るユリアに、3人の「おお」という声が狭いギルド内に響いた。
「さっそくだが着いてきたまえ!」
ユリアのその"どういうキャラ設定?"と困惑するような喋り方で3人を先導し、ギルドの外へと出ていってしまった。
「どうする?」
困惑気味に聞いてみる。
「面白そうだし行こー」
「そうですね。警戒して損した気分ですが私たちも見に行きましょう」
「ほーほっほ!わたくしは分かっておりましてよ!あのオートバイの魅力には誰にも購えませんわ!」
3人がそう言って出ていった。
まあ行かない選択肢はないよね。僕もクラウ達の後ろを黙って付きそうセシリとサリアの後を追い外に出た。
すでに3人組にオートバイの説明をしていユリア。3人組の1人から小さめが魔石を大量に手渡され、そのままタンクに投入してゆく。
そしてリーダーっぽい最初に話しかけてきた1人がオートバイにまたがり、よろよろしながらも走り出し、数分もしないうちに「ヒャッハー!」と奇声を上げて走り出していた。ユリアが「生ヒャッハー、キター!」と叫んでいたが何のことやら。
その後も代わる代わるオートバイにまたがり走る出す3人組。それに女性陣も加わり鍛え上げられた技で3人組を魅了していた。前輪浮いてる!なにあれ凄い!
それなりに楽しい時間を過ごし、気付けば夕刻をとっくに過ぎて薄暗くなってしまった。オートバイの前から明るい光が照射されている機能を始めて知った僕は、3人組と一緒に感嘆の声をあげてしまった。
えっ?女性陣はすでに知ってた?いつの間に…
その後、「今度はもっと魔石持ってくるから!また機会があったら乗せてくれよな!」と、笑顔でそう言って3人組は宿へと戻って行った。
翌日、その3人組と森の近くで再会。
暫くは真面目に森に入って暫く稼ぐと言っていたのでお互い気を付けてと別れ、ダンジョンワープでグリンの場所まで移動する。
来て早々、アルラウネたちは整列するように移動して輪ができた。
「おはよう、お兄ちゃん!」
そう言って笑顔を見せるグリン。
「その、お兄ちゃんってのやめない?」
「えっ?なんでですか?グリンの事、嫌いになっちゃいました?蜜吸います?それとも一思いに魔石抜いちゃいます?」
縋り付く様にそう言うグリン。なにこれ?と頭が混乱する。
「兄ぃ、グリンを虐めないで!お兄ちゃんでしょ?」
そう言いながらグリンの頭を撫でるユリア。
「アレスちゃん…もっとグリンちゃんに優しくしてあげてくださいませ」
ユリアに続いてカロナもそう言い始め、結局女性陣みんなに責められる。
「まあ、そう呼びたいならいいけど…」
諦めた僕の言葉に、グリンとユリアが親指を立てから「イェーイ!」とハイタッチしていた。またユリアの仕業か…
「お兄ちゃんは今日も近くで狩りですか?」
「その予定だよ」
「じゃあ、疲れたらいつでも帰ってくださいね。お兄ちゃんが泊まるなら、柔らかい寝床を用意しておくからね!」
「寝床は、要らないかな?」
グリンに困惑しながら言った僕の言葉に、グリンは「ぶー」と不貞腐れている。ちょっと可愛いんですけど!と思ってしまう。
「じゃー行ってくるね」
そう言いながら忘れぬうちにとダンジョンワープを記録し、みんなで移動を開始する。
途中アルラウネはまったく襲い掛かってこなかったが、僕たちをサポートするように甘い香りがただよっていて、惚けるように無反応の他の魔物と遭遇する。僕たちはただそれを討伐してゆくだけの狩りとなった。
スキル玉も素材は次々に回収してゆくが、なんだか作業のようになってしまい飽きそうになる。
甘い匂いも相まって、気が緩みあくびをした僕は、見上げた先に視界を埋め尽くす黒い物体を確認した。
どうやらアラクネに囲まれているようだ。
「上、アラクネに注意して!」
そう叫び身構える。
[睨む]と[恐慌]を使い怯ませると、みんな動き出し遠距離スキルを飛ばしだした。これだけの数だが、みんながいれば大丈夫。そう思って僕も[不可視の風]を放つのだった。
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Bランク冒険者パーティ 『世紀末ハッシャー』
元々はベイリン子爵領の北部分所付近で活動していた『粋な男団』というパーティだったが、最近知り合った女の子からアイデアを貰い改名。3人共この名前をかなり気に入っているという。
メンバーはチャールズをリーダーとしたシュードルとメンヘーラの3人組。全員サイドの髪を刈り上げ真ん中はトサカのように立てている。肩と膝には棘々のパットを装備し、顔にはそれぞれ、星、ハート、剣のペイントが描かれている。
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