98 サイズ計ってるのよ?変な勘違いしないでね?
アラクネの群れに襲われた僕たち。
それぞれが遠距離スキルを飛ばし撃破してる。どうやら大丈夫そうだな。反撃も来ないしスキル玉もいくつか出ている。高い場所のスキル玉は後でサリアに回収してもらおうかな?サリアは身軽だから…
「待って待って!待ってってばー!」
そんな女性の声が聞こえ、みんなの動きが止まる。
その声の方を向くと、黒髪の綺麗なお姉さんが…下半身の蜘蛛から出した糸を伝って上空から降りてきていた。3度目の話せる魔物の存在に戸惑いはそれほど無い、訳がない。そう簡単に順応できるわけが無い。けど…
「いきなり攻撃とか酷くない?」
「いや、魔物だし…」
「魔物だからって許されることじゃないと思うけど?」
「えっ、僕たち冒険者だし、素材集めとか…」
グリンと違い少し圧が強い。まあ、グリンは別方向で圧を感じるけどね。
「仲良くは出来ない感じ?」
「仲良くは、意思疎通ができるなら、大丈夫かな?」
「なら大丈夫!私、頭いいし!」
「でも僕たち、お仲間さんも結構その、殺っちゃったりしたけど、それはそれって感じで?」
グリンの時の事を考えたら杞憂になりそうだが、念のために聞いてみる。
「過ぎたことはいいわ!どうせ仲間とかじゃないし!適当に指示したら動いてくれる便利な存在だっただけだし!」
「そうなんだ」
結局グリンと同じような感じのようだ。
「じゃあ、後は仲良く、という事だね!」
そしてユリアがそのアラクネに話しかけ、それに続いて女性陣も輪に加わり話し合いタイムとなった。
僕はまた暇を持て余し、能力板にアラクネが新たに書き添えられたのを確認して軽くため息をついた。
そう言えは、あのアラクネのお姉さんの上半身は擬態じゃなく本物だよな。そう思いながら他のぶらんぶらんしているアラクネの上半身の擬態を再確認しつつ、話し合いが終わるのを待っていた。
◆◇◆◇◆
「ということで、名前だよ兄ぃ!」
「なんでかな?」
「説明は2度目だと思うけど?」
「いや、それは分かってるけど…なんで名づけがお兄ちゃんの役目になってんの?」
「それはもう、お約束ということで…」
これは何を言ってもダメな奴かな?
仕方ない。そう思って頭をフル回転。
アラ?アラク?問題外だよね。色見で言ったらクロ?犬かな?クモ?いやだめだろ。じゃあクロロ?女性っぽくないな?クロエ?うん、クロエかな?
「じゃあクロエで…」
僕の返答にユリアが固まっている。やっぱりダメだったか…
「なんで?兄ぃにしては良い名前!」
「お兄ちゃん泣くよ?」
かなり失礼なことを言われたが、どうやら良い名前だったようだ。そこは少し嬉しい。
「じゃあ私はクロエってことね。よろしくねアレスくん。お姉ちゃんって呼んで甘えてくれても良いからね!」
「言わないし甘えないよ?」
グリンといい、どうしてこんなクセが強いんだろう。
その後、アラクネが特定の魔力を使いながら糸を出すと、くっつかないキラキラした糸を出せると言うので、かなりの量を木の枝に巻き付け収納しておいた。
素材として高く売れたり、もしかしたらこれで何か作れるかも?そう思っていたのだが、「次来る時まで服でも編んでおくわね」と言われ、器用に足と手を使って糸を出しつつ試し編みを見せてくれた。
「1日で2~3着ぐらいかしら?」と言いつつ上半身の手で僕たちを弄るクロエに戸惑うが、「サイズ計ってるのよ?変な勘違いしないでね?」と言われてしまった。だがあんなに長い時間お尻をスリスリする必要は無いと思う。
こうして新たな仲間を獲た僕たち。
狩りを続けようと中層を移動するのだが、1時間もしない内に新たにドリュアスの少女とも出会い、リアスと命名することになる。
ユリアは「ダサい!どこの海岸!」と意味不明の文句を言っていたが、リアスが「私リアス。ありがとにーたん。ねーたんもよろしく」と言われ陥落し、新たな妹が誕生した。
連日出会う知的な魔物たちにもしかしたら夢でも見ているのだろうか?と頬をつねってみる。痛みを感じホッとするのだが、さすがにもう居ないよね?狼の女の子とか、鼻の長い女の子とか…
そんなことを考えている間に話は進み、定期的に良質な建材を融通してもらうことになった。さらにリアスからすぐ近くに秘密の場所があると教えてくれた。
「にーたん。ここ」
どちらが本体か分からないが、ドリュアスの大木から離れたリアスは幼い口調で蔦に巻かれた場所を指差していた。その背後から大木がゆっくり歩いて根を張ると、蔦に絡みとられる様にリアスが収まり「ふぅ」と可愛らしい息をはいた。
「ここがどうしたの?」
尋ねた言葉に返答はなかったが、リアスが手をふると絡み合っていた蔦が動き出し、中にまるで遺跡の入り口のような建物が現れた。
「ここ、にーたんにあげる」
僕は思わずリアスの頭を撫でる。妹、ホント可愛い。
それを見てリーゼとユリアがそばまで来ると頭を差し出してくる。仕方ないなと撫でるが、クラウとカロナもモジモジしていたので手招きして撫でておく。気遣いは大事。
『主ー!ゴーレムいたー!』『お宝いっぱいだぜ!』『探検!発掘!大冒険!』
すでに中に入っていた妖精ズが騒いでいる。
「ちょっと、入ってみようか」
僕も待ちきれず中へと入る。背後ではリアスが手を振って見送ってくれていた。
なぞの遺跡に入り通路を進み、その通路の先の空間に入る。
大きさは50m程度であろう岩壁の丸い空間には、すでに5体のゴーレムが湧いており、入ってきた僕たちに反応しゆっくりこちらへと向かってきた。
「ストーンゴーレム。[怪力][物理耐性]持ってるけど、スキル無しでもOKなレベルだよ」
「まあストーンゴーレムなら、そうだよねっと」
ユリアの[鑑定]結果を聞きつつ[カマイタチ]で倒し終わると、その場には黒く光る塊が5つ落ちていた。亡骸は残らないからやっぱりここは遺跡ということで良さそうだ。だがあれ、ぱっとみだけど魔石には見えない。
「これ、魔石じゃないよね?」
「そうですよね。遺跡なら魔石ばかり落ちると思うのですが…」
僕の疑問に、クラウもその黒く光る物を拾い首をかしげる。
「これ、石炭だよ兄ぃ」
その問いに答えてくれたのは当然の様にユリアだった。やっぱり[鑑定]スキル欲しい。
「石炭って、昔どっかの山で大量に採れたって言う燃える石?」
「うん。結局その後あまり採れなかったみたいだし普及していないけど、暖房には使えるしそれなりに売れそうじゃない?でもその大きさじゃ稼ぐほどではないかな?寒くなったら家で使う?」
やはりあまり価値は無いようだ。ユリアに「そうだね」と返しておく。
さらに奥にむかって通路があるので、少しだけワクワクしながら進んで行く。
新しい遺跡。何があるのか楽しみだ。
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アラクネの女王
通常の個体より一回り大きなアラクネの支配者。蜘蛛の上半身は黒髪の綺麗なお姉さんで擬態ではない。これがアラクネの完全体なんだとか。人語を話しアラクネを支配下にして操り、さらさらの良質な糸を出させることもできる。また、器用に手と足を使い、魔力をこめながら上質な衣服や布地を織ることもできる。
ドリュアスの女王
5m程と通常と同じ大きさの魔物ドリュアス。その根元に蔦により拘束されたように見える少女がその本体。蔦を外して自由に移動できるが、寄生先となったドリュアスの方の動きは遅く、根をうねらせて移動する。休憩する際は元の位置へと戻り体力を回復する。ドリュアスを支配して良質の建材を生み出し、高い建築技術も持っている。
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