91 まあ?私は兄ぃがどうあれこの愛はかわらないけど?
「兄ぃ、終わったの?」
「うん。これで助けだせたかな」
助け出したはいいけれど、これからどうしようかと悩んでしまう。
「なんだか兄ぃの周りを光が回っているように見えるけど、妖精?」
「うん。僕の周りをぐるぐるまわってる。なんだか虫みたいに見えてきた」
光に埋もれながら頬を掻く。
『失礼』『虫違う』『主、ひどい』
妖精たちが少し頬を膨らませている。それよりも…
「主って?」
確認しておくことが大事。
『私たちずっとずっと長く一緒にいた』『主の心、綺麗』『おいしいおいしい』
そう話す3匹がまた口を尖らせ何かを吸うように口をもにょもにょさせている。
「僕、何か吸い取られていた?」
『漏れた魔力だ問題無い』『だから私たち元気すごい』『よって主ってことにした』
なるほど。漏れ出た魔力を吸ってるってことで良いのかな?それで主って、そんな簡単に決めて良いのだろうか?
「兄ぃ!称号増えてる!」
「えっ?なんで?」
ユリアの指摘に慌てて能力板を確認すると、称号に『森の妖精からの祝福』と表示され、そのせいか魔力が倍ぐらいに増えていた。
「ちょっと待ってくださいね」
そう言ってクラウがメモを取り出すと、僕の能力板とにらめっこしている。
「どうやら基礎値が倍になっているようですね。これならスキル使い放題ですよ!」
「そうなんだ」
ちょっとクラウのテンションが高い。だが魔力が増えるというのは正直助かる。
その後も妖精たちと何度か話すと、緑色の子は風、青色の子は水、茶色の子は土の妖精とのことで、今後はそれぞれの属性のスキルの威力が上がるらしい。
そしてどれぐらい前から僕に付いていたのか尋ねると、『そこの女たちと一緒にイチャつき出した時?』『ああそうだ、一緒に寝てた。アツアツ』『熱気すごかった。興奮した』と言ってリーゼとクラウを指差し言っていた。
妖精の声が他の人に聞こえなくて本当に良かった。
その後、助け出した妖精たちは『いつか妖精の国に遊びに来てね』と言って夜空へ散り散りに飛んでいった。
「妖精の国ってどこにあるんだろうね」
『妖精の国、妖精の森にある』『女王様待ってる』『行こう!すぐに行こう!』
そう言ってまたグルグルと僕の周りを飛んでいる。
「いや、すぐには無理かな?」
そう返しておくと、3匹ともあからさまにがっかりしたように口を開いて『ガーン』と言っていた。
「クラウ、妖精の森ってどこかにあったりする?」
「妖精の森なら、王都から南西に位置する森です。貧困街の外壁周りにある森ですね」
「そうなんだ。妖精たちが来いっていってるから、その内行ってみたいね」
そんな話をしながらも、流石に眠気も出てきたので家に戻る。
3匹の妖精は『おやすみ』と言うとてどこかへ消えてしまった。そして僕たちも安心して歌って眠ることとなった。
◆◇◆◇◆
翌日。朝から妖精たちが顔に張り付いているのに気付き目を覚ます。多分満タンに魔力が回復した状態なので、溢れ出る魔力も多いのだろう。という事は、今までも朝はこんな感じだったのだろうか?
「ねえ、君たちは毎朝こうして魔力を吸ってたりしてたの?」
『日課』『当然』『うまうま』
どうやらそうだったようだ。
「兄ぃ、妖精ちゃんとの会話だと思うけど、端から見ると少し気持ち悪いよ?」
「お、おはようユリア。でも仕方なくない?」
「まあ?私は兄ぃがどうあれこの愛はかわらないけど?」
「わたくしだって変わりませんわ!」
便乗したいのかカロナもそんなことを言ってくる。なんとかならないかな?みんなは知ってるからいいけど、街中では極力喋らないようにしないと頭おかしい人扱いされちゃう。
「ねえ、君たちってみんなにも見えたり声が聞こえたりはできないの?」
『うーん。どうする?』『いいのかな?どうする?』『名前、つけてもらっちゃう?』
いつも緑、青、茶と順番に話しているが茶色の子が名前と言うや否や、『そうだ!』『それそれ!』と2匹が騒ぐ。
「妖精たち、名前をつけてって言ってる」
「あっ!名前つけたら正式な使い魔的な何かになってってやつ?テンプレキター!」
良く分からないけどまたユリアのテンションが上がっている。
「よく分からないけど、名前かー。何が良いかな?」
「分かりやすいのが良いと思うよ」
「じゃあ、ウィン、ラズリ、ソイル、でどうかな?」
そう言ってそれぞれを指差して命名してみる。
『ウィン!』『ラズリ!』『ソイル!』
僕の頭上をグルグル高速で回る3匹を見て、どうやら気に入ってくれたようだと思った。
そして、これでみんなにも見えたりしてくれるのだろうと…
「どう?ユリアたちも見えるようになった?」
「うーん、全然?」
「わたくしも見えませんわ」
ユリアとカロナも見えてはいないようだ。他の女性陣も見えていないと残念そうに首を横に振っていた。
「なんだか見えてないっぽいよ?」
『名前つけてもらっただけ』『見える見えないは無関係』『素敵な名前ありがとう』
思わずずっこけながら「関係ないんかーい!」と突込みを入れそうになったが、グッと堪えた。
「じゃあ、みんなが見えたりするのは難しいんだね」
『簡単』『うん簡単』『魔力吸う』
「簡単って、魔力吸う?吸えば見えるの?」
『吸えば見える』『多分見える』『主の嫁なら見えるかも?』
嫁というのは置いといて、魔力を吸えば見えるかもしれないのか…
「名前は関係ないんだって。魔力を吸ったら見えるかもって言ってる」
僕の言葉を聞いて、みんなが手の平を上にして魔力を出そうと頑張っている。
『吸っていいの?』『吸うべき?』『主、ゴーサイン出すべき!』
これは僕の確認待ちってこと?
「みんな、君たちに吸ってほしいんじゃないかな?」
『よっしゃー!』『ご馳走だぜー!』『宴だなおい!』
はしゃぐ妖精たち。
女性陣の手のひらに向かって口を尖らせ群がっている妖精たちを見て、僕の中での妖精としてのイメージが軽く崩壊していく。なんだか蜜に群がる虫のように思えてきた。
その後、妖精たちの姿も声も聞こえるようになった女性陣が、時間も忘れてその3人に魔力はもちろんお菓子を餌付けしたりして、1日が終わった。
僕はその妖精たちを置き去りにして、おばさんに依頼の完了を報告に行った。
それにしても、あの3匹は僕と離れても大丈夫っぽいんだよね。主ってなんだろう。謎は深まるばかりだった。
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ウィン
緑色の髪に同色のドレスを纏った風の妖精。
ラズリ
青色の髪に同色のドレスを纏った水の妖精。
ソイル
茶色の髪に同色のドレスを纏った土の妖精。
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