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92 どうか戦闘中に突然使うように言われませんように

妖精の甘やかしに1日を費やした翌日から、僕たちは森での狩りを再開した。


とは言っても午前中はユリアはヘパイトスさんのところへ行き、残りのメンバーで畑の手入れをしていた。

そして午後からは『最果ての森』の外周で狩りをする。


目的はもちろんスキル集めもあるが、魔石集めも重要な目的だ。村の魔道具の燃料となる魔石を集める冒険者がいないので、ほとんどの魔石を北部から買っているという。

それなら僕たちが、とギルド(仮)に魔石を納品するため森へと入ることになった。


『最果ての森』の外周では、クラフトトレント、パラライズシャドー、ビッグマウスに子守り蝙蝠、ビッグアントといった魔物がいるようだ。ビッグアントは女王アントがいる場合もあり、その場合は注意が必要だとギルド(仮)のおじさんが教えてくれた。


「女王アントなら[統率]持ってそうだよね?」

「持ってるみたいだね」

クラウの言葉にユリアがスキルを使い肯定する。ユリアの[未知の知]は正誤のある事柄に反応して正解が返ってくるからものすごく便利だ。


適当に散らばりながら狩りをする。

このぐらいの場所ならみんなソロでも狩れるから心配はない。


僕も適度に魔物を見つけては倒してゆく。

時折、[絆の心]で連絡が入る。


『アレス、クラフトトレントからスキル玉』

そう聞こえてからすぐにスキルを獲たと脳内にいつもの声が聞こえる。


クラフトトレントは[吸収]か、初めてのスキルだし後で検証が必要だ。

クラフトトレントは木の魔物で、冒険者に蔦を伸ばし捕獲する。そして枝に吊るして栄養を吸収するかなりエグイ事をする魔物だ。その本体は良い建材になり魔石もしっかりとれる。


『兄ぃ、パラライズシャドーからスキル玉でたよー』


今度は[混乱]か。ここは新しいスキルばかりかな?


パラライズシャドーは人影のような魔物で、その影が分裂したように増えたり動き回ったりと冒険者たちを惑わし、冒険者を混乱状態にする魔物である。

単体で攻撃はしてこないが、他の魔物に囲まれた際には注意が必要だ。魔石しか落とさないからちょっと面倒な魔物だ。


『旦那様、ビッグマウスから出た』


ビッグマウスは突然怖い顔をして逃げるだけの魔物だったはずだ。何気に使える[恐慌]スキルが出たのでここでMaxにしておきたい。


そして目の前には子守り蝙蝠が集団で僕を狙っている。こいつは甲高い超音波のような鳴き声を発し、獲物が眠ると少しだけ血を吸い逃げていく魔物らしい。なので即座に[睨む]からの[恐慌]で動きを止める。

そして[不可視の風]でまとめて蹴散らしておいた。

予想通りの[眠りの歌]を3つ獲得。これはスキルをMaxにしておかなくてはならない。クラウが多分出るだろうから、出るなら教えてと言っていたので一応報告していた。


『子守り蝙蝠はやっぱり[眠りの歌]だったよ。それと、アント以外は狩ったから報告不要かなー』

その声に反応して了解の声が返ってくる。


そしてほどなくして、ビッグアントと一緒に女王アントを発見したと、カロナとセシリのペアから[絆の心]で連絡が来た。


『大丈夫そう?』

『大丈夫ですわ!この程度の魔物!アレスちゃんから貰った[竜巻]で一網打尽ですわ!』

どうやら大丈夫そうだ。


そもそもビッグアントぐらいなら[竜巻]で余裕だろう。あとはセシリの魔矢で女王も狙えるし、と思っていたらすぐに[物理耐性]が3つと[統率]の獲得が脳内に響いた。


『多分アントから[物理耐性]。あとやっぱり[統率]のスキルレベル、上がったよー!』

この報告に喜ぶ女性陣。


そしてその後も増える[眠りの歌]。

誰か積極的に子守り蝙蝠を探して狩ってるのかもしれない。


夕刻を少し過ぎた時間帯、それなりの魔石を集め終わり家へと戻ってきた。

今回はかなり満足な収穫だっただろう。

何より女王アントに初日で出会うというのはラッキーだった。


「いやー、今日は運が良かったよね!初日に女王狩れたし!」

「何いってるの兄ぃ。カロナっちは[運命]持ちだから、適当にうろついただけでレアに出会えるに決まってるんだよ?」

ユリアにそう言われ、そう言えばそんなスキルだったかな?と思い出した。流石上級クラス。持ってるスキルが凄すぎる。


これなら王都のバッファローの群れとか行けるのでは?と思ってしまう。まあ王都は特に足を踏み入れるのは躊躇するけど…いや、カロナ達だけなら別に良いのだから、機会があれば牛さんを狩ってもらおう。

そんなことを考えながら、少し遅めの夕食を取る。


食事が終わったクラウとユリアという2人の参謀の相談の結果、[物理耐性]をカロナに1つ、サリアに2つ[譲渡]して2人ともLv2まで上げておく。そしてセシリには[恐慌]を1つ[譲渡]した。


[譲渡]も無事終わり、後は寝るだけだ。今日はリーゼとクラウの日なので、慣れた動作で僕の横に入り込んでくる2人。遂にレベルがMaxとなった[眠りの歌]の効果で歌った瞬間2人が幸せそうに寝息を立てていた。

もう大丈夫だろうと僕も[回復]を使い、ドキドキする心を落ち着けゆっくりと眠りについた。


翌日、顔に張り付く妖精たちに離れるようにお願いしベッドから出る。


女性陣に話を聞くと、僕が歌った瞬間に全員が即意識が途絶えたようで、気付けば朝を迎えていたのだとか。Maxと言えさすがに効果やばすぎない?


しかも昨日歌った感じだと、今なら"集団の中にいる1人だけを眠らせる"という芸当もできるようになった気がする。


これなら"乱戦の中でも味方に誤爆することなく眠らせる"ことのできる有能なスキルだと感じた。だがそれはみんなには内緒だ。そんなこと教えたら戦闘中も使ってと言われるに決まっている。


封印したいと思ってはいるが、さっきからユリアがニヤニヤしながらこちらを見ているので、[眠りの歌]の性能はバレているのかもしれない。


"どうか戦闘中に突然使うように言われませんように"


今はそう強く心に祈るばかりだ。


――――――

アレス クラス:大盗賊 Lv60

体力600 魔力1560 外殻590

力75 硬69 速138 魔179

――――――

New [赤い妖精眼/幻想に誘う視線]

New [吸収/Lv2+1/与えたダメージを吸収する]

New [混乱/Lv3/不可思議な動きで人を惑わす]

Up [恐慌/Max/恐怖を植え付ける悪意のあるオーラを放つ]

Up [統率/Lv3/仲間の力を底上げする強いリーダーシップ]

Up [眠りの歌/Max/治癒効果もある眠りの歌声]

――――――

称号 New『森の妖精からの祝福』

――――――


------------------------------------------------------------

称号 『森の妖精からの祝福』

『魔』の基礎値を倍に底上げしてくれる。複数の妖精に気に入られ、主となることで獲られる称号。


[最果ての森/外周]


クラフトトレント

木の魔物で、冒険者を蔦を伸ばして捕獲すると枝に吊るして栄養を吸収する魔物だ。固有スキルの[吸収]は、与えたダメージ分の外殻を回復するスキルだ。その本体は良い建材になる。


パラライズシャドー

人影のような魔物で、その影が分裂したように増えたり動き回ったりと冒険者たちを惑わし人を混乱状態にする魔物。単体で攻撃はしてこないが他の魔物に囲まれた際には注意が必要だ。固有スキルは[混乱]。素材は魔石のみ。


ビッグマウス

遭遇すると、突然恐怖を感じる怖い顔をして逃げるだけの30cm程度の鼠型の魔物。固有スキルは[恐慌]。素材は魔石のみ。


ビッグアント

全長1m程の黒く大きな蟻型の魔物。固有スキルの[物理耐性]により表皮が固く物理攻撃に強く、強靭な口で噛みついてくる。素材は固い胴の部分と上顎、小さな魔石。


女王アント

稀にビッグアントを引き連れて出現する全長2m程の赤茶けた体を持つ蟻型の魔物。固有スキルの[統率]で周りのビッグアントの能力を高める。表皮が固く物理攻撃に強い。短時間ではあるが飛翔して甘い粘液を獲物に飛ばす。その粘液はビッグアントが興奮する匂いを放っている。素材は固い胴の部分と上顎、中サイズの魔石。

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