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93 ちょっとドキドキだけど、多分大丈夫だよ!

「兄ぃ!ドラゴンを狩りに行こう!」


森で初めての狩りから1週間。

順調に中層まで行っていた僕たちだが、ユリアがヘパイトスさんの元から戻ってきた午後、ドラゴン狩りのお願いが飛んできた。


「ドラゴンって、どこの?」

「兄ぃ、前に『魔の森』でグリーンドラゴン狩ったって聞いたけど、今なら軽く狩れそうじゃない?」

「そうかもしれないけど。でも危険な場所には変わりないよ?」

以前の事を思い出しそう忠告しておく。


「でも[統率]もレベルが上がったでしょ?それに4人増えてる。なんとかなるって私のスキルが言っている!」

「それなら、大丈夫なんだろうけど、どうして急に?」

「グリーンドラゴンの素材が欲しい。魔石と両翼が2~3匹分あれば大丈夫だから!ついでに装備も新しく作ってくれるって言うし」

「ああ、また何か作ってもらってるの?」

うんうんとうなずいているユリア。


どうやらヘパイトスさんにお願いして新しい魔道具か何かを作ってもらうのだろう。それにしても今回は素材がドラゴンか…何ができるのか気になるけどドラゴンか…

ユリアは扇風機やらの他に、自動で洗濯してくれる洗濯機と言うものや、電気?という奴で一瞬で物を温めてくれる電子レンジという魔道具も持って来ていた。

どちらも女性陣は大喜びしていた。


電子レンジで作った"揚げないポテトチップ"というのは最高に美味しかった。今も女性陣が色々な味を試して魔改造しているようだ。チーズ味は僕のお気に入りだ。

ユリアが「電気と基盤の原理さえ再現できればこっちのもの!」とレンジを持ってきた日に嬉しそうに言っていたから、今回は何かとんでもない魔道具を作ってもらうのかもしれない。


「確かに[統率]が上がったし、みんなもいるし妖精ズもいるからね」

その言葉に反応するようにウィンたちが顔の周りをグルグル回りながら『いやっほー!』と奇声を上げている。何か言うとまためんどくさいことになるから視界がうるさいけど放置だ。


「じゃあ行ってみる?」

「やった!兄ぃ大好き!」

こうして抱きついてくるユリア。僕はお兄ちゃんとして甘やかすように「よしよし」と抱きとめる。ユリアも中々成長しているようだ。とっても良いことだと思う。


取りあえず今日のところは夕刻前に出る馬車で移動して分所で一泊と思っていたら、ユリアがバッグから馬車の荷台を付けた何かを取り出した。


「じゃじゃーん!魔道ぉオートバイー!かっこ荷台付きぃー!」

また新しいものが出てきた。


それはそうと、たまに言うユリアが使う"じゃじゃーん"ってなんだろう?


「中サイズの魔石1つで分所ぐらいまで移動できるんだよ!ということで魔石ちょーだい!」

そう言ってクルリと向きを変え、リーゼから魔石をいくつか貰っていた。


リーゼは魔石を出しつつそのオートバイという奴に興味深々だ。


試しにと、魔石をそのオートバイの真ん中付近の部分に入れ、荷台をはずしてユリアが家の周りを凄いスピードで回って見せてくれた。

戻ってきたユリアがオートバイから降りると、リーゼも待ちきれないとばかりに飛び乗り、少しの間だけふらふらしてたようだが、すぐに慣れたようでグルグルと家の周りを走り回っていた。


何それ凄い!と好奇心に負け、「僕も…」と言った時にはすでに他の女性陣が列になっていたので、仕方なくまた今度と諦めた。妖精ズは順番に乗っている女性陣の肩に捕まり『ウエーィ!』と奇声を上げていた。


そして時は過ぎ、もう出発しないと間に合わないかも?と言う時間になって、ようやく僕たちは出発することになる。


ユリアがオートバイに再度荷台をつけ、良く分からない頭の防具と、両目を覆う大きな眼鏡を付け『魔の森』へと向け東へと進む。悪路でガタンガタンと飛び跳ねながらも一直線に進んでゆく。


10分もしない内に『魔の森』の北部へとたどり着くが、激しい振動でしばし休憩せざるをえない。

ユリアがオートバイ一式をバッグにしまうと、バッグからリクライニングチェアを人数分出し10分ほど休憩後、全員で森へと入る。


そして以前の場所を保存しておいたダンジョンワープを2つ使って深層へと移動する。久しぶりの場所に少し懐かしさを感じる。


「こっちが最深層?」

「そう。ドラゴンしかいないから冒険者がドラゴン狩るならここで、って場所かな?まあそう考えるのはSランク冒険者ぐらいだけだろうけど」

そう言いながら最深層を覗き見る。


どうやら近くには居ないようだが、上空にはそれなりの数のグリーンドラゴンが見える。優雅に散歩でもしているようだ。さらに周りを確認すると、岩場に降り羽休めをしているようなドラゴンが遠くに見えた。


僕は「ちょっと行ってくる」と言って[隠蔽]を使ってから最深層へ入りスキルが届くギリギリから[黒牙]を3発撃って全力で逃げた。そして深層から最深層の様子を伺うが、僕の攻撃につられ1体のグリーンドラゴンが近づいてきたのが見えた。

キョロキョロと首を動かし探している動作を見ながら、1体だけ釣れたことにホッとする。


「じゃあ、行ってみる?」

「うん。ちょっとドキドキだけど、多分大丈夫だよ!」

リーゼもやる気のようだ。


ユリアとカロナは少し緊張しているようだが、まずはユリアの[結界]で守ってもらえば良いかと思っている。


「まずは僕が行くから、リーゼとクラウは追撃できそうならお願い。ユリアは[結界]でみんなを守って。カロナ、[祈り]お願い」

僕の言葉にうなずき動く女性陣。


[祈り]を受けた僕は再度[隠蔽]を使って最下層へと入る。女性陣もゆっくりと追随する。妖精ズは僕の周りを飛びながら『イケー!』『やっちまえー!』『ドラゴンがなんぼのもんじゃー!』と叫んでいる。


まだ20m程の距離はあったが、こちらに気付いたのか大きく口を開ける。

[危険察知]が反応するのですぐに[不可視の風]で相殺する。ついでとばかりに3発ほど追加で放ち、さらに[黒牙]を連発すると、ドラゴンの脇腹と片翼に命中し、大きな傷を負わせることができたようだ。


どうやら充分に戦えるようだ。

そしてクラウの[竜巻]が多数ぶつかり、嫌がるドラゴンにリーゼの[斬]が袈裟切りで叩き込まれた。苦悶の声をあげたドラゴンはそのまま絶命する。


ホッとするのもつかの間、急いでその亡骸をバッグの方に回収すると、こちらに気付き向かってくる2体のドラゴンを見てみんなに確認をする。


「2体きてるけど、どうする?」

僕の声に女性陣はヤル気のようだ。


取りあえず近づく前にとサリアが[風矢]を付与した[魔矢]で迎え撃つ。連射されたそれは吸い込まれるようにグリーンドラゴンに命中してゆく。大きな傷は出来てはいないが、それなりの傷はつけているようだ。


他の女性陣もユリア以外は遠距離攻撃を繰り出している。リーゼと僕は待機だ。そして距離は10m程と近づいた2体が口をあけ、反応した[危険察知]に合わせ[不可視の風]を連発する。

全てを相殺できかったようで、背後から女性陣の可愛い悲鳴も聞こえた。僕も少し外殻が削れてしまっている。やっぱり厄介なスキルだ。


今度は[カマイタチ]を何度かバラ撒く様に2体に向けて放っておく。それを嫌がるようにドラゴンは両翼をばたつかせて鳴き声を上げている。

あまり騒いでほしくはないが、こればかりは仕方ないだろう。


1体が少し飛び上がるとリーゼに向かって竜爪(りゅうそう)での攻撃を繰り出してくる。身構えるリーゼの前にユリアが[結界]を作り出すが、バリンと砕け散っていた。

それでも一瞬ドラゴンの動きが止まり、竜爪(りゅうそう)での攻撃がリーゼの肩を少しだけ抉る。外殻の硬いリーゼがすでに全損しているようだが、声には出さないがすでに何度か被弾していたのだろうか?

だがそれに怯むことなく身をひるがえしたリーゼは、背後からの[斬]により、地面に竜爪(りゅうそう)を突き刺したドラゴンを真横に切り裂いていた。


残りは1体。


片割れが倒されたことに激怒したのか鳴き声を上げならが口を開くドラゴンに、再び[不可視の風]を放ちその攻撃を相殺してゆく。最後はリーゼに合わせてセシリも飛び出し、2人一緒にドラゴンの両胸へ剣を深く突き刺していた。


これで3体。幸いなことにこの戦闘で集まってきたドラゴンはいないようだ。

吹き出す汗を拭いつつ、深層へと戻り大きく息をはいた。


最後の1体からスキル玉が出たので、めでたく[不可視の風]がLv2になったことを含め、全員無事の勝利を喜んだ。


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魔道オートバイ1号[荷台付き]

ヘパイトス作の魔石で走る二輪の移動用魔道具。魔石の力を両手で握るハンドル部分を捻ることにより、前後の2つの車輪が高速回転する。接続する荷台には2人用の座席が3列で6名乗車可能。中サイズの魔石で10kmほど走ることができる。最高時速は100km/h程だが荷台付きなら50km/h程。悪路では車体が跳ね、空中分解する危険性も…

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