87 すみませーん、村長さんいますかー?
いつもの違和感を抜け、浅い層へたどり着く。
浅い層は石投げ猿[投擲]、飛びつき猿[豪脚]、沼スライム[消化液]、発砲アリゲーター[噛みつく]、ビッグビー[突く]だ。沼には近づかないようにして、猿と蜂に備える。
ここでも[統率]と[祈り]の効果か、難なく猿を狩り続ける。
7人で広めの陣形で狩りを進めると、2時間程度で蜂の巣を2つ潰し蜜もゲットして、[投擲]が3、[豪脚]が4、[突く]が3とそれなりに収穫があった。4人もレベルが上がったようだ。
ユリアは蜂蜜をひと舐めすると、目を輝かせて「ホットケーキ作る!」と言っていた。相変わらずユリアの分からない単語に戸惑うが、多分ホットケーキと言うのは甘いお菓子か何かのことだろう。
[譲渡]については宿に戻ってからと決め、さらに中層を目指す。浅い層ではみんな力を持て余していた。中層にはゴブリン村もあるかもしれないので探してみるのも良いだろう。そう思って先を急いだ。
中層はリトルボアが『速』の能力玉、リトルモンキーは[識別]、牙蝙蝠が [吸血]、リトルワイバーンの[竜巻]、それにゴブリン村では各種ゴブリンが出るはずだ。 [吸血]は要らないので牙蝙蝠の出る洞窟には近づかないようにしよう。
そして順調に1時間ほど、少し開けた場所に出る。
葉を組み合わせた塊がいくつか連なって見える。中央には大きな木を使った雑な丸太小屋のようなものが見え、丸太の隙間からはハイゴブリンなどであろう巨体が見えている。
「ゴブリン村ですね」
クラウがそう声を上げる。
みんなヤル気充分で突撃の合図を待っているようだが、ちまちま戦うなんて選択肢はない。
「カロナ、[祈り]お願い」
「分かっておりますわ!アレスちゃんの為に![祈り]ましてよ!」
「クラウも準備は良い?」
「準備は万全です」
カロナの[祈り]により力が漲り、クラウの準備も抜かりないようだ。
この村全てを吹き飛ばすイメージで[不可視の風]を3度放つ。次の瞬間ゴブリンの住み家と思われるそれらが細切れになって吹き飛んだ。
当然の様に鮮血が舞う中、無防備になったゴブリンたちにクラウの[竜巻]がいくつも放たれ、手前から順に暴風の刃が切り裂いてゆく。
それでも倒し切れずにハイゴブリン3体が立ち上がりこちらを警戒するように見ている。さらに大きなキングゴブリンも、全身に傷を負いながらこちらを睨みつけるようにして立ち上がっていた。
「ハイゴブリンは[堅牢]ってスキル持ってるね。キングは[統率][堅牢][怪力]。そう言えば、魔物のスキルってランダムで獲れるってことでもないんだよね?」
「多分ね。今まで複数のスキルが出たことはないよ。スキル玉と能力玉の両方落とした魔物はいたけど…」
「うーん、やっぱレア度があるっぽい。通常獲れるスキルの他に稀に獲れるスキルもあるって感じ?」
「そうなんだ」
ユリアが[鑑定]を使いながら色々と教えてくれる。
便利だな鑑定。寝る前や夜中に起きてスキルレベルを上げているだけのことはある。早くLv4にならないかな。というか僕も[鑑定]欲しい。
そんなことを考えている間に、ハイゴブリンはサリアの[魔矢]とセシリの剣技で倒され、キングはリーゼの[斬]により真っ二つとなった。
そしてキングから出たスキル玉を嬉しそうにつんするリーゼ。
やっぱり[統率]だったが、スキルレベルを上げるにはもう一つ必要だ。まあいずれ上がるだろう。そう思いながら僕とセシリで解体をしてゆく。もちろん睾丸は僕が手早く回収しておいた。
男たるものこういう時に気を利かせないとね。
「兄ぃ、睾丸集めてコレクションでもする気?」
「ギルドに納品するんだよ!セシリにやらせるわけにはいかないでしょ!」
分かってて言っているであろうユリアに突っ込みを入れると「兄ぃ、セシリにやっさしー」と笑いながら僕を眺めている。いや、手伝ってくれても良いんだよ?
「旦那様、ご配慮ありがとうございます。お礼に今宵は旦那様のこ」
「セシリはそっちのハイゴブリンをお願いするね!」
良からぬことを口走ろうとするセシリを止めるように指示を飛ばす。
その後も狩りを続け、夕刻までにはかなりの数を狩ることができた。正直小さな魔石は無視して進んでいたのでスキル玉なども大漁だ。
僕以外はみんなレベルも上がったようで、適度に狩りをしながら北部分所へと戻ってきた。
中層での収穫は『速』の能力玉が3、[竜巻]が6、[臭気耐性]が1、[投擲]が3、[弓術]が2、『硬』の能力玉が1、[統率]が1だったので、宿に戻ると早めの夕食を頂き、部屋に戻った。
どうやら今後はスキルの[譲渡]についてはユリアとクラウ、2人の話し合いで決められるとのこと。
クラウは僕より博学だし、ユリアもスキルの恩恵で色々と分かっちゃうからね。僕は言われた通り[譲渡]を繰り返し、女性陣の悶える声を聞いて悶々とするだけさ。
そして今日も嬉しそうなユリアと顔を真っ赤にしたカロナに挟まれ、歌って眠り、分所での最後の一日が終わった。
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アレス クラス:大盗賊 Lv59
体力590 魔力770 外殻580
力74 硬68 速136 魔88
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Up [臭気耐性/Lv4+3/もう匂わない]
Up [弓術/Lv4+3/弓術の扱いがうまくなる]
Up [投擲/Max/投擲の扱いがうまくなる]
Up [統率/Lv2+1/仲間の力を底上げする強いリーダーシップ]
Up [噛みつく/Max+4/鋭い牙で噛み砕く]
Up [豪脚/Max/脚力強化]
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リーゼロッテ クラス:剣士 Lv48
体力480 魔力240 外殻960
力142 硬57 速85 魔28
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Up [突く/Max/強烈な一撃]
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クラウディア クラス:魔法使い Lv47
体力240 魔力1650 外殻470
力56 硬28 速84 魔196
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Up [竜巻/Lv4/暴風の渦を操る力]
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ユリア・ウイクエンド クラス:賢者 Lv24
体力360 魔力960 外殻1920
力49 硬33 速66 魔115
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New [豪脚/Lv2/脚力強化]
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カロリーナ・レイッヒ クラス:聖女 Lv24
体力120 魔力1200 外殻480
力33 硬16 速33 魔148
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New [竜巻/Lv1/暴風の渦を操る力]
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セシリーナ・ワルツ クラス:剣士 Lv29
体力450 魔力150 外殻870
力95 硬17 速76 魔19
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New [突く/Lv2/強烈な一撃]
New [豪脚/Lv1/脚力強化]
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サリアーナ・ワルツ クラス:弓使い Lv31
体力310 魔力930 外殻620
力60 硬40 速40 魔80
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New [風矢/Lv1/魔矢に風の魔力を付与する]
New [投擲/Lv1/投擲の扱いがうまくなる]
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翌朝、すでに2人は起きていたようでバスルームからはしゃぐ声が聞こえていた。
僕はゆっくりと起き、女性陣が戻ってくるまでベッドに座り惚けていた。うーん、女性ばかりで肩身が狭いな…
朝の支度を終え、いよいよ村へと向かう。
村に向かう乗合馬車に向かうと、御者が少し驚いていた。
時間通りに来たはずなのになんだろうと思っていたら「そんな若い人ばかり、団体で観光ですか?あんな何もない村に?そんな女ずれで?」と…まあ実際観光じゃないからね。
「ちょっと知り合いに会いに…」
そう言って誤魔化していた。
それでも時間通りに馬車は動き出し、途中で村側から出たであろう馬車とすれ違いざまに御者が「ウェーイ」とハイタッチしていた。それにつられてリーゼも「ウェーイ!」と声をあげ笑っていた。
お昼過ぎには目的地の村、ベイシ村へと到着した。
1人銀貨2枚と言うので金貨2枚を出したら少し嫌な顔された。
「釣り、無いんだよねー、無くて良い?」
そう言われたので、少しイラっとしつつも素直に7人分の銀貨14枚を渡すと、小声で「有るんなら最初から出せよ」とつぶやかれた。
まあそれなりにみんなで楽しくワイワイしてたし?それをチラ見していた御者さんも少し舌打ちしてたみたいだし?イラついちゃったかな?いやー、モテる男はつらいなー。なんちゃって。
そんなことを考えながら村の入り口に向かって歩きだす。
ここがベイシ村か…
木造の建物が20軒ぐらいが並ぶ小さな村。
広い畑に果樹園のようなものも見え、海の近くには作業場なのか大きな建物も見えた。ここならすぐに森にも入れるしのんびり暮らすのも悪くない。
少しウキウキしながら、畑で作業をしている男性に話しかけた。
「すみませーん、村長さんいますかー?」
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[魔の森]・中層 ※岩地が点在
ゴブリン村
ゴブリン[臭気耐性]、火炎ゴブリン[投擲]、弓ゴブリン[弓術]、ハイゴブリン『硬』の能力玉
キングゴブリン
群れの一番優れた個体が進化するハイゴブリンからさらに進化すると言われている5mを超えるゴブリンの最終進化種。キングが出現する群れにはハイゴブリンが次々に増えて行く。[統率]スキルにより群れ全体の能力が底上げされる。
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