86 これはもう、運命というものですわね!
悶々とする[譲渡]が終わり仮眠から目覚めた僕は、明日は1日『魔の森』で狩るというので、少し早めの夕食をしっかりと頂いた。
その後、順番にお風呂を終える。
後は寝るだけだ、と端のベッドを寝床に決め布団に入り込むと、即座にリーゼとクラウが両端から入ってきた。
「えっ?ちょ…待って?ベッド空いてるけど?」
2人に睨まれた。
「昨日は私とカロナっちが独占したからね。今日は2人に譲る約束なの。明日はまた私たちだからね?と言う事で、兄ぃはいつも通りに寝たら良いよ」
納得がいかない部分もあるが、そもそも2人とも毎日のように寝てたのだから、今更照れる必要も無いだろう。そう思って「みんな、おやすみ」と言いながら布団をかぶり目を瞑る。
「アレス、いつものは無いのですか?」
「今日は歌ってくれないの?」
2人は何を言っているのかな?
「いや、ほら、今日は他の人もいるし?迷惑になったり?」
ガバリと上半身を起こした僕は、やんわりと[眠りの歌]を拒否をした。
「わたくしは!聴きたいですわ!」
「そうだよ兄ぃ。2人からはそれも聞いてたし、私も聴きたかったけど昨日は我慢したんだよ?」
「旦那様の歌声、お聞きしたいです」
「お歌。聞きたい」
真っ赤なカロナに少しニヤニヤしているユリア。セシリとサリアはいつも通り無表情だが、さてはあまり興味ないな?
「絶対に歌わないから!」
布団をぎゅっと掴み頭からかぶって寝に入る。
両隣の2人は僕に抱き着く様に、熱い肌を寄せてくる。
「絶対に絶対に!歌ったりしないからー!」
女性陣からのブーイングが室内に響く。
「僕は歌わない!歌ったりしないからね!おやすみっ!」
布団の中でそう絶叫した僕は…
結局歌った。
「ふぁーーー♪ふぁふぁーーあーー♪ああふぁーー♪」
◆◇◆◇◆
翌朝、僕たちは『魔の森』へと向かった。
みんな高まる気持ちを押さえて、と言う感じで森に突入していった。
「そういえばカロナの装備、凄く良い物だよね?」
「さすがアレスちゃん!目の付け所が違いますわね!アレスちゃんの元へ訪れる前に一度屋敷に戻りましたの。その時にハゲ父上をしばき上げ、お詫びの品として頂いてきた物ですのよ!」
「しばき上げ?お詫びの品?」
カロナがそれなりな胸を得意げに張り、横髪を空いた手でふわりとかき上げる。何を言っているのか分からない。
「アレス様とカロナ様、婚約破棄。カロナ様、激怒。杖とローブ戦利品。毛は毟って捨てた。20本ぐらい」
サリアの説明で何となく理解した。
「戯言を言うのですから、装備品も髪も毟られて当然ですわ!」
「毟ったんだ…」
「毟りましてよ!そして世界樹の枝と珍しい白魔石を埋め込んだこの魔法の杖と、この高貴なる白銀のローブを頂いてきたのですわ!」
なるほど、と理解できたことにする。
でもやっぱり白魔石は公爵様がカロナの為に必死になって落札したんだ。でもまさかカロナが聖女クラスになるとは思ってなかっただろうし、なんの感謝も無く持っていかれるとは思ってなかっただろうけどね。
「その白魔石、私たちがオークションに出した物だったりしないですよね?」
「そうだよ。公爵様が落札したの僕も見てたし」
「えっ、じゃああの御貴族様が、カロナのお父様、公爵様だったのですか?」
「あのハ、おじさんがカロナのお父さん?」
クラウの質問にうなずいておく。そしてリーゼ、言い間違いには気を付けようね。不敬罪になっちゃう。途中で言い直せたから良いけど…
「どう言うことですの?」
「いや、その杖の白魔石、僕たちでクールビレにある迷宮で採ってきた奴だなーって話」
「そうなんですの?」
カロナが小首をかしげる。
「うん。オークションでおじさんが落札してたの見てたし」
「まあ!まあまあ!ではこれはもう、運命というものですわね!アレスちゃんからの贈り物ですわね!」
「いや、おじさんからの、だと思うけど?」
杖を掲げうっとりしているカロナには、僕の言葉はもう聞こえていないようだった。
そんなこともありながら、狩りを始める。
外周は森ゴブリン [危険察知]、弓ゴブリン [弓術]、グリーンスネーク [噛みつく]、グリーンスライム 『魔』の能力玉だ。今までグリーンスライム以外はそれなりに狩っていたのですぐには出ないだろう。
だがここならレベルの低いユリアたちでもまったく危険は無いだろう。そう思って自由に狩ってもらった。
カロナは念のためと[祈り]を使ってくれたが流石聖女のスキル。持て余すほどの底上げとなった。
5分程度でユリアが狩ったグリーンスライムから『魔』の能力玉が出る。
「おお!これが、えっと能力玉?」
「そうだね。これで僕の魔力の基礎値が上がるんだよね」
僕の返答を聞いた後、ユリアが「へー」と言いながらつんしていた。
その後も30分程度狩り続ける。
魔矢を打つサリア以外は剣を持ちサクサクと倒してゆく。やはりユリアとカロナに[剣術]を渡しておいて良かった。ここぐらいなら十分に狩りをできる。
その間に[弓術]が2個と[噛みつく]が4個、『魔』が3つ出た。
狙っていた[危険察知]は出なかったけど、とりあえずは浅い層まで移動することにした。
「ねえ、剣術があるからというのもあると思うんだけど、体が凄く軽くなったように気がするんだけど、それって[統率]スキルの影響?」
「そうだね。一応この6人パーティリンクしてるけど、多分だけど僕が仲間認定してたら関係なしに、能力の底上げになると思う」
「それ、どの魔物が落とすの?Lv5にしておくべき」
ユリアがそう言いながら迫ってくるが、僕もできればそうしたいんだけどね。
「[統率]は異界でも群れを作る稀に湧くやつが落とすんだよね。大迷宮のゴールデンエルクとかリッチとか、多分だけどここの中層に稀にゴブリン村に遭遇できるんだけど、キングゴブリン辺りは持ってそうなんだよね」
「そうなんだ。残念だね。あー、うん。キングゴブリンは持ってると思う」
ユリアのスキル[未知の知]でわかるのか、どうやらキングゴブリンは[統率]持ちらしい。まだ遭遇してない稀に湧く群れる魔物達はいる。だが中々出会えないから集めるのはかなり厳しい。通常湧きする魔物で[統率]スキルを持っている種がいないか祈るばかりだ。
そうこうしているうちに、僕たちは浅い層へと移動を開始した。
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[統率]スキルについて
使用者が心から仲間と思い支配下に置いている物の能力を底上げするスキル。パーティリンクを結んでいても使用者の意識次第では底上げは行われない。逆にパーティリンクが無くても、さらに言えば距離に関係なく使用者の意識次第ではスキルの恩恵を受ける。
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