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85/164

85 では、夜伽の際のみ旦那様とお呼びしますね

微睡みの中、皆に揺り起こされ目を覚ます。


すっかり二度寝してしまった僕は、リーゼとクラウの顔を見て長い夢から覚めたのだと思ったが、次の瞬間、ユリアたちの姿も確認できたので夢じゃなかったのだとため息をついた。


チェックアウトの時間間近のため慌てて支度を終わらせ宿を出た。

そして北部分所まで乗合馬車で移動する。


本当は時間があれば今後の予定を話し合いたかったけど、なるべく早く移動をしておきたかった。また難癖をつける誰かに見つかり、子爵様へ迷惑をかけるわけにはいかない。


昨日の夜の女性陣の話し合いで何が決まったか気にはなるが、自分からは怖くて聞けそうにない。まずは宿を確保してからベイシ村に向かう馬車の予定を確認しよう。そして落ち着いてから今後の事を話し合おう。

そう考えている間に馬車は分所まで到着した。


「目的となる村への馬車は週末の聖の日、後2日後の朝晩に往復の乗合馬車が出ているようですね。なので2泊の予定で宿を探しませんか?さすがに今回もギルドの上を借りるわけにはいかないですし…」

「ギルドの上?」

クラウの説明にユリアが質問する。


「以前、依頼中にギルドの3階のゲストルームに泊まらせて頂いてました。ですが今回はご迷惑になりそうですし、普通に宿を探さなくてはならないでしょう」

「なるほど。護衛依頼の時のね」

ユリアの返事を聞く限り、どうやらユリアたち4名には、すでに殿下の依頼やその他のことも詳しく話しているのかもしれない。


「では、私たちでギルドに行って全員が泊まれる宿の情報を確認しますね」

「確認大事。行ってくる」

サリアとセシリがギルドに向かって走ってゆく。2人なら別に目立っても大丈夫だろう。追放扱いなのは僕だけなのだ。


暫くすると2人が戻ってきた。


「カロナ様、10人部屋あった」

「ユリア様、あちらの方へ100mほどの様です。旦那様、2泊で金貨20枚程とのこと。よろしいでしょうか?」

2人がそれぞれに報告しているが、旦那様って誰?って言うか僕を見て言ってるよね。


「セシリ?宿泊代は全然大丈夫だよ。で、一応聞くけど旦那様って僕の事?」

こくりと頷かれた。


「アレスでお願い。恥ずかしすぎるから旦那様はやめてね」

「分かりました。では、夜伽の際のみ旦那様とお呼びしますね」

「よと…」

セシリの揶揄いに戸惑いまくってしまうが、すぐにどうでも良くなった。早く宿で体を休め話し合いを…と思ったらカロリーナ様が「よと、よと…」と真っ赤な顔で僕以上に戸惑っていたのが見えた。


うーん。僕は悪くないよね?


その後、真っ赤なカロリーナ様をなんとか落ち着かせ、7人でその宿へと向かう。

冒険者が利用するのだろう飾り気のないシンプルだが大きな建物に入り、10人部屋を2泊借りて5階の一室に入ると、大きな長テーブルを挟んで、2人用であろうベッドが6つ左右に並んでいた。


リーゼとクラウは一緒に寝るのだろうし、これなら僕も1人でベッドが使えそうだな。そう思って安堵した。


「じゃあ、軽く何か食べながら色々話そうか?」


まだお昼には早いが朝を食べそこねていたので、中央の長テーブルの前に座りそれなりの量を[魔法の箱]から出して並べる。向かいに座っていたユリアとカロリーナ様にはサリアがバッグから出した豪華な料理が提供された。


「じゃあ、これからの予定を話したいんだけどいいかな?」

「兄ぃ、もう予定は決まってるよ?この後は余っているスキルを私たちに[譲渡]。明日はそれぞれが狩りでできるだけスキル玉集めを体験。そして聖の日にはベイシ村に行って寝床を確保したら、まったり森でスキル玉を乱獲」


もう決まってた。


「じゃ、じゃあ僕はユリアもそうだけどカロリーナ様やセシリもサリアも能力板(スキルボード)を確認しておきたいかな?」

そう提案するが、カロリーナ様がカタリと音を立て立ち上がると、僕の方を向いて話し始めた。


「その前に、アレスちゃんにはお願いがありますわ!わたくしのことは、その、あにょ、しょにょ…」

僕の提案をかき消すような勢いで話しに入ってきたカロリーナ様だが、後半はしどろもどろで赤い顔をしている。


「カロナ様、頑張って」

「わ、分かってますわ!アレスちゃん、わたくしも…カロナって呼んでほしいにょ、ですわ…」

うん。なんで?


いや、分かってるよ?カロリーナ様は僕の事が好き?で良いんだよね?ユリアも言ってたし。自惚れや勘違いじゃなくガチ?って奴なんだよね?でも、公爵令嬢を呼び捨てとか…良いのだろうか?


「アレスちゃん…だめ、なのかしら…」

「だめ、じゃないよ…カ、カロナ…」

戸惑いながらの僕の返答にカロリーナ様、カロナは両手で顔を押さえて俯き、「はぅぁー」と可笑しな声をあげその身をくねらせていた。うーん、気まずい。


しばらく沈黙の中、目の前の食事を胃に流し込み、全員が能力板(スキルボード)を見えるように出し確認しあった。僕も能力板(スキルボード)を出し余っているスキルを確認する。


[突く] 3

[物理耐性] 1

[剣術] 3

[危険察知] 3


[突く]についてはリーゼをMaxまで上げたいので後1つ集まるまでキープしておきたい。[物理耐性]はセシリが良いのかな?[剣術]はどうしようかな?[危険察知]は[結界]があるユリア以外の3人になどと考えていた。


「兄ぃは大体把握したよね?」

「まあ、大体は?」

笑顔のユリアが空いていた左隣に座った。


「あっ、[譲渡]するのはもう話し合って決めてあるから」

「えっ?そうなの?お兄ちゃん聞いてないよ?」


どうやら昨夜のうちにクラウにより余っているスキルについて確認済みで、相談もすでに終わっているのだとか…僕の意思は?と再度思う。


「[物理耐性]はセシリはきっと覚えるから[回復]持ちのカロナっちに。[剣術]は私が2個、カロナっちが1個。[危険察知]はサリアに2つ、セシリに1つで…でももっと色々スキルを集めるからそれは追々で。数に誤りはある?」

「間違っては無い、かな」

さすがクラウだ。数に間違いが無いようで感心する。そしてがセシリの後に覚えるスキルも分かるのはユリアのスキルなのだろうか?


その後、少し、いや、かなり戸惑いながらも言われた通りに[譲渡]する。ベッドの上に座って待機している4人の手を順番に握り、間違わないように確認しながらスキルを[譲渡]してゆく。


ユリアの手を握った際には抱きつかれてしまったが、[譲渡]の際には4人とも悶えるように声を漏らしていたので、夕食までの時間は僕1人だけ気まずい雰囲気となり、女性陣が集まり何やら雑談をしているのを見守った。

そして、このドキドキした気持ちをどう消化したら良いのかと、モヤモヤする気持ちを抱えながらベッドに身を委ね仮眠を取った。


――――――

ユリア・ウイクエンド クラス:賢者 Lv21

体力320 魔力840 外殻1680

力45 硬30 速60 魔105

――――――

Up [鑑定/Lv3/全てを見抜き解析する眼]

[結界/Lv1/害意から身を守る結界術]

New [並行処理/Lv1/複数同時思考が可能]

New [剣術/Lv2/剣の扱いがうまくなる]

――――――


――――――

カロリーナ・レイッヒ クラス:聖女 Lv21

体力110 魔力1050 外殻420

力30 硬15 速30 魔135

――――――

[祈り/Lv1/祈りの力で仲間の能力を底上げする]

New [回復/Lv1/治癒の光で傷を癒す]

New [物理耐性/Lv1/殴られてもへこたれない]

New [剣術/Lv1/剣の扱いがうまくなる]

――――――


――――――

セシリーナ・ワルツ クラス:剣士 Lv26

体力390 魔力130 外殻780

力87 硬17 速70 魔17

――――――

[剣術/Lv2/剣の扱いがうまくな]

Up [多撃/Lv2/物理攻撃が重複する]

New [危険察知/Lv1/身に及ぶ危険を察知する]

――――――


――――――

サリアーナ・ワルツ クラス:弓使い Lv29

体力290 魔力870 外殻580

力57 硬38 速95 魔76

――――――

[弓術/Lv2/弓術の扱いがうまくなる]

Up [魔矢/Lv2/魔力で矢を作り出す]

New [危険察知/Lv2/身に及ぶ危険を察知する]

――――――


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憩いと癒しの宿・ベイリンハート

ベイリン領・冒険者ギルト・北部分所から東へ100mほどにある宿屋。木造のシンプルな見た目の大きな建物には、御1人様用はもちろん、10名まで利用可能な大部屋(ベッドは6つ)も4部屋ご用意。嘗ては大盗賊ステイルレインや前代勇者のハーレムパーティ御一行も宿泊したという由緒正しき宿。

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