84 私だけ仲間外れはいじめだよね?
宿の一室で、リーゼとクラウにもそれぞれを紹介し、今更ながら自己紹介タイムに入る。
だがその最中、ユリアが「兄ぃは私とも結婚するのは確定事項。それはカロナっちにも認められてる。2人も兄ぃと結婚するなら私たちのことも認めて貰わないと困るから!」と言い出した。いや待って?僕の意思は?
それに対して、リーゼとクラウも了承する流れになってるけど?僕の意思は?
さらには、セシリが「お嬢様とご結婚なさるなら私も親愛な女に!」と迫られ、それに便乗するようにカロリーナ様の侍女でセシリのお姉さんのサリアーナさんも「私もご主人様の親愛な女にして。これ絶対」と言い始めた。
仕えるお嬢様が結ばれる男性、それはつまりご主人様、そのご主人様の強さを底上げできるスキルのためなら、身を粉にして尽くすのが侍女の務めなんだとか。そう2人掛かりで詰め寄られてしまう。
だが声を大にして言いたい。僕の意思は?
そんなことを言いつつも、侍女の2人に抱き着かれ「「私たちのこと、嫌いですか?」」と潤んだ瞳で見つめられ、思わずゴクリと喉を鳴らした後、ささっと離れ能力板をそれぞれの主に見せていた。
僕の能力板にもしっかりと[5人からの親愛]と記されていた。
僕の意思ぃ…
「ということで、私だけ仲間外れはいじめだよね?」
そう言って僕に抱き着いてくるユリアはすでに涙目だ。
「兄ぃは、私の事、嫌い?」
「そんなこと、あるわけないだろ?」
「じゃあ、好き?」
「好きだよ。大好きだ」
僕の返事に頬をゆるめた後、ユリアが名残惜しそうに体を離し能力板を出していた。そして僕の顔を見て…声を上げて泣いた。
「なんで?なんで私だけ称号つかないの?兄ぃは私の事、本当は好きじゃないの?」
「いや違うよ?好きに決まってるよ?ユリアのこと大好きだよ!だけど、ユリアは僕の大事な妹で…だから、その、異性としての好きじゃないんだと思うから…」
僕の返事に涙を引っ込めたユリアは、能力板を出しながら僕を再び抱きしめる。
「称号出るまで離れない。このまま夜になったら…先に既成事実作る。私が兄ぃの一番になる!」
「ちょっと、ユリア?落ち着いて?僕はユリアを一番に思ってるよ?だけど僕たちは家族なんだから…」
どうしたら良いか分からないまま、本音をぶつけてみる。
暫く沈黙が続く。
「ユリア?」
「兄ぃは、私が裸で抱きついても欲情しない?」
「えっ?いや、するわけ…ないだろ?」
「私、この間の身体検査で、カロナっちより大きかったよ?」
何が大きかったのだろう?確かに柔らかな何かがあたり気持ち良いけど…
「やった!」
突然ユリアが能力板を掲げ僕から離れ、カロリーナ様の元へ…
僕も慌てて能力板を出し…
僕の意思ぃ…
こうして6人に増えた親愛な女性陣。
その後は6人が集まりルール作りといって話し合いを始めた。それは僕がお風呂でゆっくり心を落ち着かせ、ベッドに一人潜り込み眠りにつくまで終わらなかった。
そして翌朝、両隣に薄着のユリアとカロリーナ様に挟まれ目覚めた僕は、2人が目覚めるまで再び目を閉じるのだった。
◆◇◆◇◆
ウイクエンド侯爵家の一室。
ある日の朝、ユリアの侍女であるセシリーナから『アレスが領を追い出され冒険者として活動している』といった内容の手紙が届いたと、私の侍女のシセリーナが報告してくれた。
はらわたが煮えくり返る気持ちを押さえ、数年ぶりに侯爵家の本館を訪れた。
屋敷の前に馬車を止めると、すぐに執事セレバスが出迎えてくれる。
「すぐに旦那様を…」
そう言われるが呼ぶのをやめさせた。
中に入って応接室のドアを開ける。
見慣れた豚がイビキをたてているのを見て、今すぐ解体して出荷してしまおうかと思った。昔はあんなに魅力的だったのに…どこでどう間違えたのかと自分の見る目の無さを呪った。
そしてシセリーナに視線で合図を送ると、素早い動きでハゲしい豚の頭をバシンとぶっ叩いていた。
「痛っ!何をす……あ、カ、カ、カカカカカルシュ!なぜここに…」
「何故?ではありませんよ?」
私を見て即座に床に正座する一匹の豚を見て、仕方なしに笑顔を作る。
「は、はは、カルシュ、今日も相変わらず美しく…」
「ラールーフゥ?アレスは、どうしたのですか?」
「ひぃ!」
笑顔の私の問いに悲鳴で返す豚を見て、失礼しちゃうわと少し笑顔が崩れてしまう。
そして先ほど豚禿を叩いシセリーナが、ちょっとテカっている自分の手を見て何とも言えない表情をしたのに気付き「清めてらっしゃい」と伝えると、お礼を言いながら素敵な笑顔で部屋を出ていった。
その間も、人語をしゃべる豚はあーだこーだと言い訳を並べ立てていた。最後に「大盗賊という不名誉なクラスを授かってしまった愚かな息子を追放するのは当主たる私の務めだ」と言ったところで堪忍袋が破裂した。
「ラルフ!あなたはもう何もしなくても…いえ、そのだらしない体…森に行きなさい。森で、兵と共にこの領のため少しでも魔物を狩りなさい。近くに兵舎もあるでしょぅ?それ以外は何もしなくて良いわ?」
「そんなひぃっ!」
反論しようと口を開いた豚をひと睨みして黙らせ、室内に控えていたセルバスに「すぐに手配して。1年は住み込みで頑張ってもらいましょう」と伝えると、すぐに動き出したセルバスが豚を捕獲し、嘗て身につけていた装備を準備をするよう促していた。
まあ防具は着れそうにないだろう。あの国宝に指定されてもおかしくない魔法剣なら振れるだろう。1年もこもらせれば少しは昔の見た目に…いや、植毛スキル持ちを探さなくては無理だろう。
大きなため息をつきながら、手を綺麗にして戻ってきたシセリーナと共に馬車へと乗り込んだ。
アレスの元にはユリアも向かった。それに公爵様のところのカロリーナちゃんも同行しているという。まあそのうち見つけて帰ってくるだろう。そう思ってこの件は後回しと言う事に決めた。
そして今後の領土について悩みは尽きないと、本日何度目かのため息をついた。
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シセリーナ
ワルツ男爵家の次女でアレスの母であるカルシュ・ウイクエンドのの専属侍女をしている。クラスは魔法使い。
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