88 あんなスッケスケでペッラペラなものが…
「すみませーん、村長さんいますかー?」
近づきすぎると警戒されるだろうと遠目から畑で作業中の男性に声をかける。
こちらに気づき「村長ならあっちだー!」と奥の方の大き目の一軒家を指差している男性。日に焼けてムキムキマッチョなそのおじさんにお礼を言いながらその家を目指す。
「あの人…聖騎士クラスだったんだけど…」
「えー?」
この村はなんなんだろう。強者の隠居先か何かなのだろうか…
「レベルは55だから能力値も兄ぃよりは高かった。でもスキル過多で兄ぃが負ける未来は見えないけどね」
「ユリア?あの人と戦う未来は無いから安心して?」
戦う前提は良くない。
戦うぐらいなら逃げる方が気が楽だ。
そしてたどり着いた村長の家。縁側に日向ぼっこをするように座る男性…やっぱりベイリン子爵様に似ている。
「すみません。子爵様に紹介されたアレスと言います」
そう言いながら近づき、手紙を取り出し手渡した。
◆◇◆◇◆
「なるほどの。聞いては居たが確かに凄いスキルだ。一部の貴族連中が危険視するのも分かるな」
「[鑑定]スキルをお持ちなんですね。というか『貴族が危険視』ってどういうことか、教えて貰っても良いでしょうか?」
「うむ、そうじゃの。話しておくのも良いやも知れぬ」
そう言って話し始めたバイアル村長。
神官クラスで珍しく[鑑定]スキルを覚えた結果、教会ではなく冒険者として活動していたという。その後はひたすら[鑑定]と、[命運]という直感で何かを見抜くスキルを武器に、甥っ子である子爵様をサポートしていたという。
その結果、[鑑定]のスキルレベルは3となり、[命運]のスキル効果か隠居してこの場に村を作ることを何ともなしに思いついたとのこと。これが僕に会うため、なんて自惚れてはいないが、何かしらの運命を感じてしまう。
そして肝心の『一部の貴族の』と言う話を聞くと、どうやら保守派と中立派の一部の貴族たちが結託し、改革派のエド殿下と交流を深めてしまった僕を厄介な存在だと感じて排除に動いているようだ。
その中には、エド殿下を傀儡として操りたい一部の改革派の貴族も協力しているようだと言う。後は大盗賊というクラスの為、過去にステイルレインに娘を持っていかれたり、財産を奪われた一部の貴族の逆恨みのような私怨もあると言う。
もちろんステイルレインと僕は違う人間とは分かっているので、そう言う私怨で排除を狙っている貴族は多くないと言うが…そしてその部分で言えば、子爵様は母親をステイルレインに奪われていると…
何やってんのステイルレイン。まったく無関係だが先代ともいえる存在の大盗賊の悪行を聞かされ、ため息をつきつつ頭を押さえる。これが僕に向けられる嫌悪感の原因かと思った。
もちろん子爵様にそんな私怨の気持ちはまったくないそうだ。
今回はほとぼりが冷めるまでここに居住を用意しているというので、暫く御厄介になることを決めた。畑も漁も体験したいならいくらでも手伝ってくれとも言われている。
単純に村の労働力として送り込まれたわけじゃないよね?と勘繰ってしまうが、多分そうでは無いのだろう。…無いよね?
話しが終わると少し離れた森側の場所に村長自ら案内してくれた。
新しめの小さな家。その周りには畑の為だろうか、何も植えられた様子はないが草がしっかりと刈り取られ少し掘り返されたような場所も見えた。
家の中に入ると、ワンルームではあるが台所やトイレもシャワー室もあるようで、部屋の広さも十分であった。これならベッドを7人分置いても大丈夫そうだ。
早速村長に家具や雑貨などを売っている場所が無いか確認した。近くに販売所があると言うのでそこに向かうことになる。
それと「部屋に置くベッドについては作ってくれる奴がいる。私に言ってくれれば用意しておくが要望はあるか?」と言われ、「じゃあベッドを7つ」と言ったところで女性陣に囲まれた。
リーゼ以外は笑顔でこちらを見ているが、何故かプレッシャーを感じる。
リーゼは頬を膨らませているだけだ。ちょっと可愛い。
「では3人で眠れるサイズのベッドを3つ。こちらでお願いします」
そう言ってユリアが白金貨を3枚渡していた。白金貨1枚分なんて、どんな豪華なベッドだよ。と突っ込みたくなる。
村長もびっくりしていたようだが、すぐにいつの間にか隣に来ていたスリムな男性にそれを手渡した。いつ来たのだろう?その男性はうなずきそのまま出ていった数分後、3日後には搬入できるだろうと教えてくれた。
その後、必要なものを村の案内された販売所で購入する。
調理器具に調味料を含めた食料、各種生活雑貨をまとめ買い。
販売所のおばちゃんが大喜びで対応していたが、僕の方をチラリと見た後、裏へと消えて行った。
数分後、裏の方から箱を持って来た女性陣がワーキャーと賑やかな声を上げていた。ちらりと箱に視線を送ると、中にはふぁ~ぉな下着が入っていたのが見え、慌てて目を背け店を出た。
「あんなスッケスケでペッラペラなものが…そうだ!僕は今日、何も見なかった!そういう事にしておこう!」
そう口にして座り込み、しばしの暇を持て余した。
女性陣はしっかりと布団なども買ったようでそのまま家へと戻る。
まだ買い置きのある料理を新しいテーブルに出し、みんなでそれを囲み村での初めての団欒となった。そして夜。買った布団を敷くとリーゼとクラウがズザザと隣にやってきた。
そして2人に挟まれ、抵抗も虚しくいつものように歌って眠る。
閑静な村の夜空に僕の歌声が響き渡った。かもしれない…
明日は朝一で村長に頼んで家の壁に防音付与を依頼しなきゃ。そう固く決意した。
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ドイル・ジャストス
村民で元聖騎士隊所属。ベイシ村を守る最強の一角。聖騎士クラスでレベルは55。[剣術]は4、[斬]が3、[豪脚]が4、[鉄壁]が2という一点突破なスキル構成。普段は日焼けした肌に麦藁帽、作業服を着こんでいるマッチョさん。




