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79 死んだら死んだであっちが悪いんですよ?

ギルマスのバラクネスさんの謝罪から始まった話を聞く僕たち。


どうやら衛兵も男爵様の息が当然かかっている事を教えてくれた。多分あっちに非はないどころか、僕たちに難癖をつけてくるのは目に見えているとのことだった。

ギルドでもできる範囲で僕たちの側に立って協力はするが、期待しないでほしいとも言われ再度頭を下げられた。


「分かりました。僕たちは明日にはベイリン子爵領に戻りますので、バラクネスさんも無理はしないでくださいね」

「面目ない…」

そう言いながら、少し重みのある布袋をどさりと置いた。


「少ないが、今回の報酬だ。向こうでは別に用意してあるだろう。今回の面倒に対する俺の気持ちだ。何も言わずに受け取っておいてくれ」

そう言われ袋の中をチラリと見ると、金貨が数十枚は入っていた。


リーゼもそれをのぞき込んで「おーすごい」と声を漏らしていた。


「ありがとうございます」

「じゃあ、またいつでも来いとは言えた義理はないが、何事もなければまた顔を見せてほしい」

「はい、そうします。色々ご配慮頂きありがとうございました」

そうお礼を言って席を立つと、またすまなそうな顔をして頬を掻くバラクネスさんに見送られ、部屋を後にした。


その後、解体所に今日の狩った素材を出してカウンターに戻ると、受付の2人に3人共々甘やかされながらも、先ほどの布袋の中身を共有口座に入れてもらいギルドを後にした。

夜には近くの焼肉店で受付の2人とも再度合流し、お別れ会をしてくれると言うので少しだけ頬を緩ませる。


宿に戻るとシャワーを浴びる。

今更ながら死人が出なくて良かったと安堵した。やっぱり人を殺すのには抵抗があるが、いずれは覚悟を決めなくてはいけない時もくるかもしれない。


野盗などに人権はない。

その場で返り討ちにして首だけを回収しておけば懸賞金が出る。殺される前に殺せというのが常識だけど…僕にはさすがにまだすんなりとは割り切れない。


シャワーを浴び体を拭いてバスルームを出ると、先にシャワーを済ませていた2人が僕の顔を覗き込んだ。


「アレス?大丈夫?」

そう言って僕を抱きしめてくれるクラウ。とても良い匂いがした。


「アレス、大丈夫だよきっと!」

そう言ってリーゼもクラウと一緒に僕を抱きしめる。とても柔らかくて心地よい。


「大丈夫。死人が出なくて良かったなって思っただけだよ」

「そうだね」

リーゼが少ししゅんとして顔を伏せる。


「そうですが、死んだら死んだであっちが悪いんですよ?」

クラウはそう言うが、その表情は少し暗い。


僕は「ありがとう」と言いつつも[回復]を使いならが再度2人を抱きしめた。


その夜、焼肉店でバッグに収納しておいたグリーンエルクの大きな肉塊を、お店のカウンターに出し処理をお願いすると、店主が手を揉みながらやってきて言葉巧みにもうふた塊を提供することになった。

店主が「御代はいらない」というので、提供したエルク肉と共に野菜や煮物料理などを頂いた。ネビルさんとシオールさんも「初めて食べた!」「なにこれ凄すぎ!」と興奮気味に肉を口に詰め込んでいた。


お腹を満たした後は、受付の2人が僕に「お持ち帰りしてー!」「まとめてでいいから!」と絡んできたが、丁重に断った。すでに外殻が無い僕の横っ腹に、何度となく小さな痛みが突き刺さっている。

受付の2人から漂うアルコールの匂いに少しクラクラするが、なんとか理性を保って絡みつくその2人を突き放し「おやすみなさい、気を付けて帰ってくださいね」と伝え宿へと向かう。


背後から「捨てないでー!」「食べたらぽいですか―!」という、誤解を招きそうな叫び声が聞こえてくるが幸い人はまばらだ。心を無にして宿へと帰り着いた。

そして、大変だった一日も終わり、いつものように歌って眠り夜が明けた。


◆◇◆◇◆


ギルドから手配された馬車に乗り、ニガリッソ男爵領からで2日かけてベイリン子爵領に戻る。そのまま冒険者ギルドでギルマスのクライフさんに報告を済ませた僕たち。


それから3週間。

比較的のんびりとした毎日を過ごしていた。


戻って数日後には、冒険者ギルド経由で子爵様からは白金貨300枚という破格の報酬を貰うことになった。反面、「今回のことは他言無用」と釘を刺されたが、そもそもあんな話を広める気もしなかったので快諾しておく。


政治的に色々とあるのだろう。

子爵様となれば大変なんだなと思うばかりだ。


正直あまりやる気も出ず、以前泊った冒険者ホテル・トーキュオイーンのプチスイートトリプルBルームに連泊し、まったりと過ごしていた。

受付の時には「たまには(ベッドが3つある)Aルームなんてどうかな?」と2人に確認したが、少し冷たい目で「なんで?」と言われたので「やっぱりBルームだよねー!よろしくお願いしまーす!」とスタッフに笑顔で伝え、1ヵ月分を前払いした。


数日のんびりしていた僕たちは、多少の気分転換にと初心者向けだと言うベイリン遺跡に入ることにした。


ベイリンの遺跡はベイリンシティ内にある遺跡だ。

ボス部屋がないので攻略済みという概念も無いため、もしかしたらいつか魔物暴走(スタンピード)してしまう可能性もあるそうだが、出現する魔物が低級ばかりなので問題ないようだ。


街中を少し歩いてベイリンの遺跡に向かう。

そして、ピクニック気分で遺跡の階段を2人と一緒に降りてゆく。


入り口の周りにある建物は、全体的に今にも崩れ落ちそうなボロボロな見た目であったが、中に入ってみれば各階層は意外と広く、割としっかりとした青白いレンガの壁が続いていた。

チラホラと新米冒険者と思われるパーティが一生懸命魔物と戦って汗を流している姿が見えた。


この遺跡でも専用のダンジョンワープと一般的な帰還札は使えるようだ。全5階層のこの遺跡、5階層まで同種の魔物が徐々に強くなりつつ出現するという。まるで初心者を鍛えようと作られた施設のようにも感じた。


出現する魔物はゴーストにシャドースケルトン、シャドーウルフやミミックボックス、ピンクスライムの5種類。最深部の5階層であっても僕たちにとっては大した違いはないほどの魔物であった。

稀に宝箱もあると言うがその中身はほとんどが魔鉱石で、お世辞にも稼げる場所では無かった。だがいずれも初見の魔物達。新しいスキル玉の出現に期待して気持ちを高揚させながら足を踏み入れた。


------------------------------------------------------------

[ベイリンの遺跡]

下に向かう異界で魔物からはほぼ魔石しか落ちないが、稀に宝箱が出現する。全5階層でボス部屋などはないため、攻略済みとはなっていないので魔物暴走(スタンピード)の可能性は残っているが、出現する魔物が低級ばかりのため危険度は低い。ベイリンの遺跡用のダンジョンワープと一般的な帰還札は利用可能。出現する魔物はゴーストにシャドースケルトン、シャドーウルフやミミックボックス、ピンクスライムの5種類で、5階層まで徐々に強くなっている。

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