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68 先生!わたくしも父が、ハゲてまして旅に出ましてよ!

「行っちゃいましたわ…」

アレスちゃんの妹、いえ、いずれ私の妹、ユリアちゃんが教室を飛び出して行った。教室内では「兄が危篤?旅に出る?」と混乱する声が聞こえていた。

これは私も乗るしかないですわね…


「先生!わたくしも父が、ハゲてまして旅に出ましてよ!」

そう言って教室を出る。


そして公爵家の馬車に急ぎお付きのサリアーナに手を添えられ乗り込んだ。


「サリアちゃん!目指すは我がレイッヒ領の聖教会ですわよ!」

サリアは「かしこまりました」と言いながら御者に行き先を告げ、私の隣に乗り込み馬車は出発した。早く!あの方の元へ参らねば!可愛い可愛いアレスちゃんの元へ!


そして馬車は走り続ける。

夕刻にはレイッヒ領へと入った。途中街に宿泊を、とサリアには言われたが「下手な宿より馬車の中で寝た方が快適ですわよ!」と断り、馬車に備え付けの魔法の箱から取り出した食事で優雅に夕食を頂く。


どんな時にでも公爵令嬢という自覚を忘れてはならない。そんな思いで食事を終わらせた後はそのまま眠りについた。馬車の座席をサリアがいじればベッドに変形してしまうのだ。

私も知らない機能ではあったが驚きはない。いつも冷静沈着でいなくてはと常々考えて行動をしているつもりだ。


アレスちゃん!待っててくださいまし!今、お姉ちゃんが助けに行きますわよ!

そう思いながら眠りについた。


翌朝、朝食を終えた私は馬車で急ぐ。そしてお昼過ぎには聖教会へとたどり着いた。


中へ入るとすぐに神官たちがざわつき出していた。大神官がバタバタとこちらへ駆けてくる。


「カロリーナお嬢様、お待たせいたしました!本日はどのようなご用命で…」

汗をかきながらそう話す男が頭を下げてにこやかな笑みを浮かべている。


「急に来たのは謝罪するわ。わたくし、今日はお願いがありますの。早急に個室を用意して頂けるかしら?」

「はい!もちろんでございます!すぐに準備を!」

大神官の男は背筋を正しそう返すと、神官の一人に「すぐに準備を!」と叫んでいる。


そして数分後には個室に通された。


「今日は、わたくしの開化の儀を行って頂にきたのですわ!」

「お嬢様、それは4月に…」

「私はもう10になりましてよ?できるのでしょう?」

「た、たしかにできますが…」

開化の儀は4月にまとめてやる慣例ではあるが…


戸惑う目の前の男に「できませんの?」と少し睨みつける。

公爵令嬢として時には我を通すことも嗜みの一つだ。


「直ちに!」

その言葉で私はニッコリと笑顔を向けて完璧な所作でスカートの裾をつまんで少し頭を下げる。


それに気を良くしたのだろうか、目の前の男は笑顔で何やら得体の知れない呪文をもにゃもにゃと口ずさむ。


「カロリーナ様の能力板(スキルボード)よ、ここに…」

その言葉と共に目の前に初めて見る能力板(スキルボード)が…


「おお!カロリーナ様は聖女、聖女様!なんとも稀有で高貴なクラスを授かりました!おめでとうございます!さすがカロリーナ様!未来の大聖女様に幸あれー!」

そんなことを叫んでいたようだが、私は決して動じない。


私が高貴なクラスを授かるのはもはや運命で決まっていたのだ。そして授かったスキルも[運命]であった。自分の直感に従い行動することできっと未来が開けるはずだ。

稀有なクラスだと言うのに授かったスキルは一つのみ。きっと意味があるはずだそう信じて突き進むのみ。私は拳を握り決意を新たにした。


――――――

カロリーナ・レイッヒ クラス:聖女 Lv1

体力10 魔力50 外殻20

力10 硬5 速10 魔45

――――――

New [運命を導く直感のひらめき]

――――――


「さて、わたくしはこのままここを去ります。ですがこのことは絶対に秘密です。分かっていますね。たとえ、父であるナパーズ公に聞かれても、ですわよ!」

「へっ?いや、でも、さすがに公爵様に黙っているわけには…」

私はもう一度男を睨む。


「公爵様はカロリーナ様の事が大好き。そのカロリーナ様が言う事は絶対。分かる?」

聞き分けなく戸惑う男に、サリアが顔を近づけ優しく諭しているようだ。


「わかり、ました…」

その言葉に私もサリアもニッコリ。意気揚々とその教会を後にした。


聖女となった私に不可能は無い!授かった[運命]の赴くままに走り抜けば、きっとアレスちゃんの元にたどり着けるはず!

だがその前に…ハゲ父上にも話を聞く必要がありそうだ。


「サリアちゃん、あのハゲから何か聞いてまして?」

「いえ、何も」

「分かりましたわ!では我が公爵家まで!急ぎますわよー!」

私はふたたび馬車に乗り込むと、公爵家の本館まで走り出す。


まずはハゲ父上に事情を聴かなくてはいけない。なぜ、アレスちゃんが家をお出になったのを黙っていたのかを…


◆◇◆◇◆


そんな2人は、それほど遠くない日に王都の冒険者ギルドで再会する。

そして2人で結託する。アレスに愛されれば互いが1番でも2番でもどうでも良いのだと…


ユリア・ウイクエンド。カロリーナ・レイッヒ。


2人はいずれたどり着くだろう。愛するアレスの元へ…


二人の冒険は始まったばかりだ!


◆◇◆◇◆


「はっ、はっくしょーんっ!」

「アレス、風邪ですか?」

僕は布団の中で急激に寒気を感じくしゃみが出てしまう。そんな僕にクラウは心配そうな顔を向けている。


「いや、風邪では無いと思うけど…」

「温かくして寝よー!」

僕の返事に隣のリーゼがぎゅっとしがみ付いてくる。確かに温かい…


「リーゼ、温かいけどさ、寝づらいから放してもらっていいかな?」

「ぶー」

不貞腐れるリーゼのためにも、早く寝て体力を回復させなくては。


そう思って今日もいつもの様に全力で歌って深い眠りについた。


------------------------------------------------------------

カロリーナ・レイッヒ

レイッヒ公爵家の長女。クラスは聖女。アレスの元婚約者だが本人は婚約破棄されたことを知らない。アレスにベタ惚れだが素直になれない性格。


サリアーナ・ワルツ

ワルツ男爵家の長女。愛称はサリア。カロリーナの専属侍女。

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