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[完結]侯爵家の三男だけど能力板には大盗賊って出ちゃいました。  作者: 安ころもっち
第五章 アレスと王族と不穏な影

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57 もう来んなよ、バーカバーカ!ぺっぺっぺっ!

「はー!思い出しても腹が立つ!」

急遽呼び出しがあって王都で行われた会議に出席したが、その内容は予想だにしないものだった。


ウイクエンド領の屋敷に戻った俺は、自室のソファーに腰を下ろす。


あの追放したアレスが、今や皇太子殿下の護衛だと?まだ追い出してから1年たってないんだぞ?皇太子殿下の護衛としてドラゴンを退けて守ったと…ありえないことだった。

そしてアレスの身元も、大盗賊というクラスについてもバレてしまった。その批難の矛先は全て俺へと向いたのだから堪ったものでは無い。


咄嗟に「もう追放した奴の事、好きにしてくれ!」と返したが、周りからの目は厳しく見えた。皇太子殿下にも冷たい目で睨まれた。保守派だとは言え、今の段階で皇太子殿下に睨まれるのは不味い。

それでもレイッヒ公爵様がアレスを糾弾する側に立ってくれたので、俺としてもありがたかった。結局、皇太子殿下が必死でアレスを庇い、王都追放ということで落としどころが付いた。


そして逃げかえるようにして館へと戻ってきた。


今や我が侯爵家はかなり厳しいと言わざるえない。

長男であるルイズは剣士クラス、次男のバレンは戦士クラス。ルイズはまだ若い頃の俺に似てスリムで見た目も良い。だがバレンはルイズの後ばかりついて太ましくなってしまった。まったく、誰に似たのだろうか…


そして追い出したアレスの事を再度思い出す。

いっそ呼び戻すか?いやいや。大盗賊だぞ?だがこのままでは没落の危機ともなりえん。もうすぐユリアも開化の儀を受けるが…そこに賭けるしかないのかもしれない。

そのユリアからも何度か手紙が来ていた。「アレス兄ぃのクラスはどうなったのか?」と…もちろん彼是と濁してある。なんやかんや忙しいから、その内ちゃんと報告するから勉学に励めと…


あれはアレスに懐いていたからな。追い出したことが知れたら貴族院をほっぽりだして戻ってきてしまうかもしれん。そんなことにでもなれば益々我が侯爵家の信用は落ち、爵位はく奪もありえる!


それと同じように妻にもバレたとしたら…とんでもないことになるのは目に見えている。妻も何故かアレスとユリアだけは微笑ましく見ていたからな。

幸いなことに妻はここ数年、別邸で政務に精をだしている。たまに構ってほしいが帰ってすら来ない!だが今はこないでほしいと思っている。2人にはできる限り長く隠し通さなくては…


そんな中、隣町のドタコス・クールビス男爵が訪問してきた。今回の会議には呼ばれてすらいなかった男だ。だがドタコスは男爵ながら羽振りが良さそうで腹が立つ。嘗ては舎弟のように扱っていたのに…


「アレスという冒険者がなんでも大盗賊だとか…今回はその話だったんでしょ?たしかラルフ殿のご子息にもいましたよね?アレスってご子息様が…」


忌々しい事を言いやがる。

生意気にも俺に嫌味を言いに態々出向いて来たというのか?


最近は特に調子に乗って生意気になってきたように思える。

聞けばルークビレは迷宮によって領地経営は順調らしく、それを事あるごとに自慢している…此奴には一度、教育が必要かもしれん。


我が領もあのクソ迷宮さえなければ…

領土の東にある迷宮と森を思い出し歯噛みする。


ウイクエンドの迷宮にはかなり強い魔物が出現する。だがその素材にはうま味が無く稼ぎが悪い、いわゆるハズレ迷宮だった。その先に広がる森も同様にうま味の少ない森であった。

それゆえに経費をかけて兵を常駐させ、溢れ出た分のみ狩ってはいるのだが、迷宮中はどうなっているか分からない。あれさえなければもう少し農地を広げ、収入アップで妻の機嫌もアップ間違いなしなのだが…


「ラルフ殿?ラルフ殿ー?ラールーフーどーのー!」

そんなことを考えていると、ドタコスが私の名を呼んでいる。


「なんだ、うっとおしい!聞こえておるわ!」

「そ、そうでしたか…」

怒鳴りつけるとドタコスは汗を拭いながら縮こまっていた。


「それで、少し前ですが我がクールビレの迷宮の走破者のパーティの中にアレスという冒険者がいたのですが、その過程で白魔石を獲得されだそうで…王都のオークションで白金貨50枚で落札されたとか…」

「な、なに!白魔石だと!いや、しかしアレスは王都で…」

だが少し前だと言ったな。であればクールビレに寄ってから王都へ?オークションを見るついでに王都でも活躍して、それで王家の目に留まり?ありえるのかそんな都合の良い良くある冒険譚のような話…


「お前は、そんなことをわざわざ俺に報告にきたのか?」

「何をそんなに怒ってらっしゃるのですか?」

ドタコスの小首をかしげるその仕草にイラっと来る。


「もう良い!さっさと帰れ!もう来んなよ、バーカバーカ!ぺっぺっぺっ!」

「うわっ!ちょ、きたなっ!」

イラつきに任せドタコスに唾をひっかけてやった。


侍女に掃除を命じ少しスッキリしたのだが、今後の為にもアレスがどれほどの活動をしているのか、少し調べておく必要があるかもしれん。


白金貨50枚か…

たいした額ではないが、わずか1年で本当にそれほどを稼げる冒険者になったのなら…連れ戻すか?だが大盗賊だぞ?


どうしても嘗ての大盗賊ステイルレインを思い出す。

50年ほど前まで王都のみならず大陸中を渡り歩き、財宝も、女も、中には貴族令嬢や王家の娘まで略奪したというあの大盗賊ステイルレインの名を…


「やはり念のためだ。動向だけは探っておくか…」

私兵を動かし調査を命じる。本当に冒険者として大成するようであれば、こっそりと連れ戻しあの迷宮で警備でもやらせておけば良いかもしれない。そうなれば我が侯爵家の恥も晒さずに済むだろう。


色々考えていたら腹が減ったな…

侍女に食事の準備を命じソファーにだらりと寝そべった。


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ウイクエンドの迷宮

比較的上級者向けの迷宮ではあるが、ほぼ魔石しか落とさないアンデット系の魔物が多く出現するハズレ迷宮。20階層ぐらいまでは確認できているが、挑む者がほぼ居なくなって30年ほど。今はどのぐらいになっているか想像もつかない迷宮。私兵による警護で溢れた魔物をなんとか狩っている状態。本格的な魔物暴走(スタンピード)が起きれば終わってしまうだろう。


死霊の森

迷宮同様に冒険者には不人気な森が広範囲で広がっている。状態異常系のスキル持ちの魔物が多く、弱いがかなりやっかいな魔物が出現する。その為、得られる魔石も小さければ素材も安価なものが多い。

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