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58 ではアレス、寂しいので早く帰ってきてくださいね

ベイリン迷宮を覗きにいった僕たち。

時間はあまりないけど初心者が集まるところという事で、時間いっぱい体験する気持ちで入り口に向かった。


周りには初々しい冒険者パーティが…この時期に新人ということは、反対する親をやっと説得出来た子たちなのかな?それともお使い系の依頼をこなしてきた子たちなのかな?

そんなことを推測しながら、少し気恥ずかしくなりながらも迷宮に入るための列に並ぶ。


「なんだか、ちょっと恥ずかしいですね」

「でもきっと僕たちと同い年だよ?恥ずかしがることないよ。きっと…」

クラウが少し顔を赤らめるので、僕もフォローしようとするのだが、僕自身も恥ずかしくて赤くなっている。どう考えても場違いですね。分かってますよ。


リーゼはあまり気にしてい無いようだ。


混雑している入り口を抜け、いよいよ迷宮へ足を踏み入れる。

とは言え1階層では人が溢れ狩りどころではないので、クラウが購入していたガイドブックに従い一気に6階層まで上がってきた。


そしてすでに既出となった迷宮ウルフ、コボルト、牙蝙蝠については新人さんのためにスルーしていたが、やっとのこと新しい魔物を発見することができた。


桃色の10cm程度の小さなベビースライムがリーゼに飛びついてきたが、[危険察知]が反応して難なくて魔石を叩いていた。布製品を溶かすので要注意だという。

ベビースライムのスキル玉からは[魔力耐性]が出た。何気に初めてのスキルだ。


―――スキル[魔力耐性]を覚えました。

[魔力耐性/Lv1/魔力による攻撃への耐性を得る]


そしてもう一種類、サンダーラットと呼ばれる30cm程度の黄色い鼠だ。3匹の群れが僕と目が合うと一斉に突進してきたので、反射的に[睨む]を使うと仰向けになってひっくり返っていた。

少し可哀そうに思ったけど心を鬼にして剣でその命を奪う。その後には能力玉が一つだけ出たので、ありがたくつんしておく。『速』の能力玉だった。


とりあえずこの2種類はもう少し狩っても良いかなと思っていたが、10階層でも冒険者たちがそれなりにいたため、これ以上の狩りは諦め、ボス部屋へと入ろうかと提案したのだが、クラウがもう一つだけ頑張ってみましょうと言ってきた。


僕としてはまた別の日の夜中とかに狩りに来ても良いかな?と思っていたのだが、クラウは今が良いらしく、10階層を徘徊していった。

そしてベビースライムから2つ目の[魔法耐性]をゲットすると…


―――スキル[魔法耐性]がレベルアップしました。

―――スキル[絆の心]を覚えました。


[魔力耐性/Lv2/魔力による攻撃への耐性を得る]

[絆の心/親愛なるものと心を繋げる絆]


「え?え?えー?」

突然でた新しいスキルにびっくりしてしまう。


「何か出ましたよね!」

「どゆ事?」

クラウが詰め寄ってきて、リーゼも困惑している。


「クラウ、もしかして200個目?」

「はい!多分もうひとつだって思っていました!」

クラウの意図が分かったが、このスキルは…多分あれだよなと、そのスキルの効果を何となく理解して少し頬が緩む。


「どう、ですか?」

『こう、かな?』

「ひゃ!」

クラウに返答する。心の中で…そして小さな悲鳴をあげたクラウに、リーゼが「クラウ?」と名を呼び首をかしげる。


『2人同時にはどう?聞こえる?』

「おお?」

今度はクラウは無言だ。そしてリーゼは何となくは僕の声?と分かったような、分からないようなとまた首をかしげている。


「念話、ですか?」

「念話!」

どうやら分かってくれたようだ。


「[絆の心]ってスキルで、『親愛なるものと心を繋げる絆』って説明だった。何となく念話みたいに使えそうだと感じてたけど、きっと2人にだけ使えるスキルだよね?」

『そうかもしれないですね』

「おおっ!」

今度はクラウが僕に、そして多分だけどリーゼにも念話しているのだろう。


『こう?聞こえてる?』

『聞こえていますよリーゼ。これは凄い便利ですね』

『そうだね。これで作戦会議とかでも使えるし、どのぐらいの距離まで使えるかも検証したいよね』

2人はうんうんと首をふるが、考えてみたら無言でこんなことをしているのだから、周りの冒険者たちがこちらをチラチラしているように見えた。


「じゃあ、さくっとボス倒して帰ろうか」

軽く咳ばらいをしてからそう提案する。


「そう、ですね」

「そうしよう!んで、ボスってオーガ?」

「そうですよ。リーゼに任せますね」

「はーい」


こうしてガイドブックどおりのオーガをリーゼが軽く倒し、戦利品として魔石だけは取り出して入り口まで戻る。こうして初めてのベイリン迷宮はあっさりと踏破してしまった。


そしてその夜。

夕食を食べ宿のベッドの上で座っているお風呂上がりの2人に、入口付近のドア前に立ち[絆の心]を使う。


『聞こえる?』

リーゼが笑顔でイエーイと手を親指を立てていた。


『じゃあ、ちょっと1階までいってこようかな?』

『わかりました』

『いってらっしゃーい!』


そして部屋を出ると、魔道昇降機で1階まで下りる。そしてロビーで再び2人に連絡を取る。


『どう?今1階のカウンター近くにいるけど』

『聞こえる聞こえる!』

『凄いですねこれ。これなら、別々の場所に狩りに出ても良いかもです』

たしかに、王都で別々に狩った時なんかにこれがあれば便利だったかも。


『だけど、これがどこまで聞こえるかは分からないから、これ以上は機会があったら要検証ってところだね』

『そうですね。ではアレス、寂しいので早く帰ってきてくださいね』

「うぇ!」

思わず変な声が出た。


『そうだよ!寂しいから早く帰ってきて。早く寝よう!』

『リーゼまで。変なこと言うから、ロビーで変な声出しちゃったよ、恥ずかしい。じゃあ戻るね』

『『はーい』』


まったく、2人はすぐ揶揄ってくるんだから。そう思いながらもドキドキする気持ちを押さえ、また部屋まで戻った。

そしてまた力の限り歌って眠るのだ。


――――――

アレス クラス:大盗賊 Lv52

体力470 魔力470 外殻450

力42 硬54 速36 魔54

――――――

New [魔力耐性/Lv2/魔力による攻撃への耐性を得る]

New [絆の心/親愛なるものと心を繋げる絆]

――――――


------------------------------------------------------------

ベイリン迷宮 最大10階層 ※既出魔物の[]内は取得可能な固有スキル


ベビースライム

10cm程度の桃色のスライム。気づけば忍び寄ってきて布製品を溶かすので要注意。固有スキルは[魔力耐性]を持っている。素材は小さな魔石。


サンダーラット

30cm程度の鼠で、冒険者を見つけると全力で突進してくる。『速』の能力玉を持っている。素材は小さな魔石。


迷宮ウルフ[疾風]、コボルト[剣術]、牙蝙蝠[吸血]。


10階層 ボス部屋

オーガ[睨む]


[絆の心/親愛なるものと心を繋げる絆]

解放条件は奪ったスキル玉の総数が200を超えた時。[親愛の絆]の対象になった愛すべき人と心を通わせ会話ができるスキル。会話が可能な距離については今後の検証が必要。

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