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[完結]侯爵家の三男だけど能力板には大盗賊って出ちゃいました。  作者: 安ころもっち
第五章 アレスと王族と不穏な影

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52 そんな怯えた目で何ができる!

魔の森の中層から昼食の為戻ろうとした僕たち。


「上だ!」

不意に背筋が凍るような危険を感じ、叫びながら空を見上げる。


そして、膝の震えを感じながらも殿下の前に出ると、[睨む]と[恐慌]を使い、[竜巻]を連発で放つと目の前に何枚もの[岩の盾]を作った。

同時にクラウも[火炎]を連発している。

リーゼも僕の近くまでくるといつでも飛び出せるように身構えている。だが3人共その表情には怯えが見えた。


上空には2体のグリーンドラゴンが、優雅に翼を動かし浮かんでいた。


「なんでこんなところに!」

近くにマルチスさんがやってきて身構えている。


「撤退だー!今すぐにげろー!」

ディークさんが叫んでいるが騎士たちの動きは悪い。みんな怯えているようで身動きができないようだ。


「アレス、先ほどの攻撃については何も問わん!何とか出来るなら頼む。せめて、殿下を…」

「ぼ、僕も!戦う!」

「そんな怯えた目で何ができる!」

足を震わせながら剣を構えている殿下に、マルチスさんが一喝する。不敬罪では?と思ったがそんな場合でないことは分かっている。


「倒すのは、無理ですよきっと」


空に浮かぶグリーンドラゴンは、先ほどの[睨む]などにも特に反応をしめしていない。[竜巻]だって効果はなかったようだ。その翼の一振りでかき消されてしまっている。

同じようにクラウの[火炎]にも動じていないようだ。


まだこちらを見ているだけのグリーンドラゴンを見て、まずは殿下に[回復]を使う。一瞬びっくりしたようだが、少し落ち着いたようだ。

そしてマルチスさんに殿下を任せ、このままゆっくり下がって逃げてもらう。


多分だけど2匹とも僕の方を見ている気がする。

先制攻撃でヘイトを集めたかもしれない。うまくいけば、殿下を逃がす時間が稼げる。殿下さえ馬車で安全な領域まで逃げてくれれば、3人で[隠蔽]を使いつつ、僕が[疾風]で2人を抱えて逃げよう。


周りの騎士さん達は…今は考えている場合じゃない。


グリーンドラゴンから目線を離さないようにしながら、ゆっくり後退していく殿下とマルチスさんを確認する。王族や国への忠誠心なんてないけど…侯爵家の誇りとかそんなもの微塵も持っていないけど…

それでもここ数日一緒に過ごした殿下は、エドは弟のように可愛いと思っている…僕の方が年下だけどね。


目の前に作った[岩の盾]は、ほとんどがすでに消えている。

翼をばたつかせた際の衝撃波だろうか?攻撃方法は不明だが、バキバキと音をたててほぼ全てが破壊され、さらに僕の体中に鈍痛のような強い衝撃を感じながら、それを必死で堪えながら立っていた。


[岩の盾]が崩れ去り、面と向かいあったことでさらに恐怖心が強くなる。だが魔力はまだ半分は残っている。何とかしなくては…


「わー!」

不意に横から騎士の一人が叫ぶ声が聞こえた。


混乱しているのか持っていた剣をグリーンドラゴンに投げつけている。そして視線がそちらに移った時、マルチスは殿下を抱え走り出した。これなら、大丈夫かも…


そう思っていると、片方のグリーンドラゴンが逃げて行く殿下たちの方に視線を送り、翼をばたつかせその口を大きく開ける。咄嗟に僕は[カマイタチ]を放つと、リーゼは[火炎]を放っていた。

カマイタチが火炎を巻き込むように大きくなった攻撃が、グリーンドラゴンの放った何かを打ち消したように見えた。


「もう一度!」

クラウにそう声をかけ、再度2人でスキルを放つ。


今度はしっかりその攻撃が届いたのだが、あまりダメージは無いようだ。

それでも怒りの矛先は変えられたようで、こちらに竜爪(りゅうそう)を向けて突っ込んでくる。身構え[突く]を放つタイミングを待ち構えていると、隣にいたはずのリーゼの姿かないことに気づく。


次の瞬間、横から突然気合の入った声と共に、リーゼがグリーンドラゴンの片翼に[斬]を放っていた。

その攻撃により傷を付けることに成功はしたが、とても致命傷と呼べるものでは無かった。


傷付いたグリーンドラゴンは一度上空へと上昇してリーゼを見る。もう1体も同じようにリーゼを見ていた。

その隙に、なんとか冷静さを取り戻せたのか騎士たちがこの場を離れて行く。すでにマルチスさんが森を出たのかな?もう大丈夫だよね?そう思いながら逃げることを考えはじめる。


先ほど傷を負った方のグリーンドラゴンがリーゼに再度迫ってくる。そのタイミングで僕も[隠蔽]を使い、今できる最大攻撃である魔短剣を使った[突く]を[疾風]込みで叩きつけた。

どこもでも当たれば良いやと思って放ったその一撃は、グリーンドラゴンの腹部に深くささり、耳が痛くなるような絶叫に怯みそうになりながら、僕はリーゼを抱きかかえ、[疾風]でクラウの元へ戻る。


魔短剣は刺さったままだ。勿体ないと思ったが命には替えられない。


そして2人を抱えようとしたのだが、[危険察知]が再度強く反応しグリーンドラゴンに視線を戻す。

こちらの様子を伺うように顔を向けている2体のグリーンドラゴン。


そのまま身動きできずに睨み合う。動いたら殺られると感じた。


しばらくして、腹部から血を流したグリーンドラゴンを庇っているのか、もう1体が寄り添うように翼を重ねると、僕たちに背を向け奥の方へと飛んで行った。その光景を見てやっと呼吸ができるようになった僕は、脚から力が抜けそのまま座り込む。


「なんとか、なったー!」

「死ぬかと思いました!」

リーゼとクラウも僕にもたれ掛かるように座ると、そうぼやいていた。


「いやー、2人が一緒で本当に良かった。年末のあれで狩りまくってなかったら、[譲渡]も出来てなかったら、絶対に無理だったよね」

「ほんとそれ!危険察知と隠蔽なかったら死んでるよ!」

「たしかにそうです。やはり私たちも、その2つについてはMaxまで上げておきたいですが…これは他の場所で隠蔽持ちを探すしか無いですよね」


やはりクラウの提案通り、色々な場所で有用なスキルをバンバン取ってくのが良いだろうと感じた。でも…


「いや、ちょっと待って?そもそもドラゴンと戦う予定は無かったよ?無理して強くならなくて良いんだから…のんびり行こうよ」

「まあ、そうですね」

「うんうん。楽しければそれでいいよね!」


やっと緊張が緩んできた僕たちは、そろそろ森の外へ戻るため重い腰を上げた。


――――――

アレス クラス:大盗賊 Lv52

体力470 魔力470 外殻450

力42 硬54 速30 魔54

――――――

Up [投擲/Lv4/投擲の扱いがうまくなる]

Up [豪脚/Lv3/脚力強化」

Up [消化液/Lv3+2/強い消化液を放出する」

Up [竜巻/Lv3/暴風の渦を操る力]

New [吸血/Lv2/他者の体力を吸い取り自身の糧とする]

――――――


――――――

リーゼロッテ クラス:剣士 Lv39

体力390 魔力200 外殻780

力120 硬48 速72 魔24

――――――

Up [危険察知/Lv2/身に及ぶ危険を察知する」

――――――


――――――

クラウディア クラス:魔法使い Lv37

体力190 魔力1300 外殻370

力46 硬23 速69 魔161

――――――


------------------------------------------------------------

グリーンドラゴン

本来は王都北西部・魔の森の最深層、岩山エリアに巣を作って生息している。

不可視の風のブレスと、破壊力抜群の竜爪(りゅうそう)での攻撃を繰り出してくる。その表皮は固く魔法耐性もあるので、固い表皮を貫くような物理攻撃スキルで倒すのが一般的。その体の全てが素材として有効活用される。

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