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51 リーゼも、クラウも、舐めてみてよ!

2日目。


外周で体を少しほぐしたら、殿下の意向で浅い層まで入ってゆく。石投げ猿やビッグビーの群れに殿下も少し驚きながらもクラウが[風刃]を連発して守り、それには殿下も感心していた。

僕も咄嗟な事とは言え、危うく[竜巻]を使いそうになる。発動前に気づいてやめたので大丈夫ではあったが、考えるより体が先に動いてしまうのでさらに気を付けねばと思った。


ビッグビーの群れを倒し終わった後、騎士のひとりが「巣はどうされますか?」と殿下に聞くと、「あっ」とクラウが声をあげる。


「そう言えば、巣からはちみつがとれるのでしたよね」

「そうなのかい!」

殿下の嬉しそうな声と共に、僕も「そうだったんだ」とクラウに耳打ちすると、「前に狩った時は忘れていました。惜しい事をしてしまいました」と少しシュンとしてしまったので、頭を撫でて慰めておいた。


すぐに隣のリーゼも頭を出すので同じように撫でておく。


そんなことをしている間に、騎士の一人が弱い火炎魔法を巣の下から出すと、巣に残っていたであろうビッグビーが散り散りに逃げて行った。

そして別の騎士が木を登り、巣の根元を剣で切り落とすと、下に待機していた2人の兵士が、大きな布を広げ上手く受け止めていた。


なるほど、ああやって採るのか。クラウに[風牙]で切り落としてもらって僕とリーゼで受け止めても良いな。と頭の中で想像を膨らませていた。


「殿下!いけません!」

「うるさいなー!」

ディークさんと殿下の声が聞こえ見てみると、殿下がハチの巣に指を突っ込んでいた。まあ、そうやりたいのも分かる。


ディークさんが騎士の一人を呼ぶと、巣に向かって手をかざし、薄い緑色の光が放たれたので、[浄化]か何かなのだろう。その後、指を口につっこみ味見した殿下はご満悦だった。


感想を聞きに行くと、「美味いよアレス!リーゼも、クラウも、舐めてみてよ!」とかなり興奮気味であった。めったにできない体験ではあるし仕方ないだろう。

そういう僕も、当然はじめてのことなので少し興奮している。


ハチミツ塗れの指はとても美味しかった。


もちろん全部は舐めきれないので、そのまま布に包まれ殿下の腰のバッグに収納された。クラウが「巣ごと煮込んで食べれるようです」と言うので、「今度僕たちも獲ろうね」と話していた。


その後も順調に狩りを進める僕たち。

[投擲]が3つ、[豪脚]が2つ、[消化液]は4つ獲得した。


そして夕刻、狩りを終えた僕たちは森の外へと戻る。

殿下やマルチスさんから、魔物の強さ的に問題はなさそうなので明日はいよいよ中層に、という話になった。そして多数の反対を押し切り中層行きは確定となった。


予想以上に早く殿下もレベルが26になっているが、僕としては、もう少し浅い層でレベル上げをしてもらいたいと思っている。正直僕たちがやりすぎな部分があり、殿下も楽に戦えている気もするからだ。

だがヤル気に満ちた殿下を止めることは、僕にはできなかった。


気を取り直し、夕食時には残ったハチの巣を全て巨大な寸胴鍋で煮込み、それに大量の肉と野菜、ハーブなどを加え、調理中から破壊力のある香りを漂わせていた。

皆が待ちきれない気持ちを抱えたまましばし待つ。リーゼは本当にそのまま鍋に飛び込んでしまうのではないかと言うほど、食い入るようにそれを見ていた。


そして美味しい夕食をお腹いっぱい食べると、眠気もすぐにやってくる。テントに潜り込むと話もそこそこに眠りについた。隣のリーゼはとても柔らかく、ハチミツの良い香りがした。


◆◇◆◇◆


3日目の朝。


「そろそろ疲れが出てないですか?」

「大丈夫!面倒な座学もないし、元気が有り余ってるよ!」


両手を上げ元気いっぱいの殿下。

そして再度反対の声をあげるディークさんを一喝し、中層へと足を進める。


やはり中層に入る際には空気の層を抜けるような不快感があり、森全体が異空間なのだと実感する。


この中層は森の所々に岩地が点在するエリアとなる。


リトルボアやオーク、さらにはリトルワイバーン、木の上にはリトルモンキーが出現する。洞窟もあり中には主に牙蝙蝠が生息しているらしい。稀に開けた場所にゴブリンの拠点が出現し、ゴブリン、火炎ゴブリン、弓ゴブリン、ハイゴブリン、キングゴブリンが出ることもある。


同じ中層でもゴブリンの拠点が出たら今の戦力では難しいだろう。もちろん僕たちが全力でとなればなんとかなると思うけど、こればっかりはやってみなければ分からない。

そもそもここ最近は、どの狩場でも余裕があったから、正直僕たち3人がどの程度まで強くなっているかが分からない。いざとなったら全力で殿下を守って撤退も視野に入れておこう。


「中々大変ではあるね」

リトルボアとオークを何とか倒しながら、素材を回収する殿下。


殿下の手持ちの短剣は多分僕の持っているやつの上位版なのだろう。オークの胸をすいすい切り開いていく。もしかしたら聖剣士のスキルなのかもしれないけど。


リトルボアからは『速』の能力玉がでた。これは何気にありがたい。ワイルドボアよりスリムなボディから繰り出す突進攻撃は、まっすぐに突っ込んでくるので狩り易かった。

オークからは今のところ何も出ていない。


木の上にはリトルモンキーをたまに見かけるが、確認と同時にすぐに居なくなっている。木々のかなり高い位置にいるため結局狩ることはできていないが、特に攻撃をされることもないので無視することにした。

途中、洞窟も見つけたのでクラウが[火炎]を入り口から打ち込むと、中から大量の牙蝙蝠が飛び出してきた。


びっくりはしたもののそれは散り散りに逃げて行ったので、落ち着いてから「ちょっとだけ中を見てきます」と殿下に伝え、洞窟内を確認する。スキル玉を2つ発見。[吸血]がLv2となった。


[吸血/Lv2/他者の体力を吸い取り自身の糧とする]


これは…

またお蔵入りのスキルが増えた。いや、一度使ってみる?誰に?変な考えはやめようと頭を左右にふって反省する。


そしてこの中層が危険地帯だという元凶、リトルワイバーンが岩地エリアで羽を休めているのが確認できた。リトルワイバーンはモレノの迷宮のボス部屋にも出現するが、ここにいる個体はかなりレベルが高いようで強い。

さらに言うと、上空から木々の間をすり抜けるように滑空してくるので、かなりの注意が必要だ。[竜巻]も飛ばしてくるし、鳥爪(ちょうそう)を向けて突っ込んでもくる。


その肉は迷宮産より少し硬いがそれなりの値で売られるため人気も高い。


今回は聖騎士隊の護衛が居るからか、初日から一般の冒険者は遠巻きにしていていた。そして昨日、今日と徐々に見かけなくなり今も周りに他の冒険者はいない。みんな何かあったら処罰されるのを恐れているのだろう。

森の入り口に王家の紋章入り馬車が止まっているのだから当然だろう。


そのためかエサを求めたリトルワイバーンが頻繁に飛来してきている。僕たちが[危険察知]持ちだとは言え、視界の悪い木々を抜けてくるため殿下を守るのには難儀した。

困った末にこっそり[疾風]と[突く]を使ってしまうが、殿下が訝しむ様子はみられないので気づかれてはいないだろう。


その甲斐あってお昼までに[竜巻]は2つ獲得している。

Lv3となったので早く使ってみたい気持ちを押さえ、昼食を取るため警戒しながら出口を目指し歩き始める。


そして僕とリーゼ、クラウが強い危険を感じ、空を見上げた。


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王都北西部・魔の森・中層 ※岩地が点在

出現する魔物はリトルボア、オーク、リトルワイバーン。木の上にはリトルモンキー。洞窟に牙蝙蝠。

稀に開けた場所にゴブリンの拠点。ゴブリン、火炎ゴブリン、弓ゴブリン、ハイゴブリン、キングゴブリン


リトルボア

ワイルドボアよりスリムなボディから繰り出す突進攻撃で、一直線に突っ込んでくる。『速』の能力玉を持つ。素材は魔石とお肉。少量だがコクのあるうま味があるので人気も高い。


リトルモンキー

木々のかなり高い位置で冒険者を見下ろしている。確認と同時にすぐに逃げてしまうので中々狩ることはできない。素材は小さな魔石のみと言うので、特に攻撃をされることもないため放置されることも多い。稀に高い位置から飛びつかれ、首筋などを齧られることがあると言う。


牙蝙蝠

洞窟内に生息して群れを形成する蝙蝠。噛まれると病気を移される危険があるので、噛まれた場合は協会で見てもらった方が良い。固有スキルは[吸血]を持っている。素材は小さな魔石と表皮が薬の原料になるようだ。


リトルワイバーン

迷宮産よりレベルの高い厄介な的。上空から森の中に突っ込んでくる。固有スキルの[竜巻]を使いながら鳥爪(ちょうそう)を向けて突っ込んでくる。素材は魔石とお肉、両翼にある翼の先の風魔法発生器官。魔の森産は迷宮産よりお肉は少し硬いが、それでもそれなりの値で買い取りされる。

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