53 いや、成るようにしかならないんだろうなって…
グリーンドラゴンを追い返すことに成功し、森を出ようと歩き出す。
ふと気付けば僕の外殻は全損していた。
それはそうだろう。
[岩の盾]が破壊された時、鈍い痛みを感じたのだから…外殻は削り取られたあの時にもう一撃でも追撃があったら?そう思うと寒気がした。[物理耐性/Lv4]があるとはいえ、一歩間違えば次の一撃で本当に死んでいた可能性もある。
あのよく分からない一撃で[岩の盾]は破壊され、その余波で外殻が全損、さらに体力が削られたのだから…
「よく見たら、アレスはボロボロだね」
「うん。最初の良く分からない攻撃で、かなりのダメージを受けたからね。でも死ななくてホント良かったよ」
自分でも確認すると、胸部を守る鎧の一部が凹んでいたり、上着が破れていたりと無残な見た目になっているようだ。改めて買い替えるか…
「あれが、[不可視の風]と言うブレスなのでしょうね」
「何それカッコいい!」
「本当だね。いつかそのスキルをゲットしたい!って思っちゃうぐらいのカッコいいスキル名だよ」
まあ、ドラゴンと戦うなんでこりごりだけどね。
そして警戒しながらもおしゃべりしながら浅い層を抜け、森の出口の明かるさが見えてきた。そして騎士たちに守られながらこちらに気付き走ってくる殿下は、そのままバフリと僕に抱き着いてくる。
「良かったアレス!良く戻ってきてくれた!」
「心配してくれてありがとうエド。無事、とは言えないかもしれないけど、なんとか戻ってきたよ」
再会を喜びながら手を繋ぎ森を出る。
マルチスさんからも頭を何度も下げ、お礼を繰り返されてしまう。
「とりあえず、今回の実習は中止になった。もちろん報酬は約束通り支払われる。当然ではあるが殿下を危機から救ったお礼も後日、というところだな。後は追々、まずは体を休めてくれ!」
「分かりました。ご配慮ありがとうございます」
マルチスさんからの報告を受け、帰るかな?と思っていたら僕の正面まで歩いてきた1人の騎士さんが、僕の顔をじっと見ていた。
「大盗賊…大盗賊だ!」
その騎士は、腰の剣にゆっくりと手をかけ、そのまま抜くと僕に向かって構えた。
「何をしている!」
マルチスさんの声が聞こえた気がした。だが僕は、大盗賊と言われ剣を向けられたことに戸惑い、体を動かすことができなかった。
「剣を下ろして!」
気付けば僕はリーゼの背中を見ていた。
僕の前に剣を構え立つリーゼ。その隣には杖を胸の前に掲げるクラウもいる。だがそれもつかの間、「ぐわっ!」という声の後、2人が僕の前から後ろに下がる。
視線の先には、はマルチスさんに押さえつけられている先ほどの騎士さんが見えた。
そして僕は左手を見る。
左手首に付けていた偽装用のブレスレットが無くなっていた。なるほど、あのドラゴンの攻撃で破損してしまっていたのだろうと気が付いた。そして、僕はただ目の前の光景を見守ることしかできなかった。
マルチスさんから「少し待っていてくれ」という言葉にうなずき暫し待つ。
先ほどの騎士さんは他の騎士さんに連れられ、マルチスさんと殿下と一緒に大きなテントの中に消えて行った。
そして5分程度後、戻ってきたマルチスさんと殿下に頭を下げられる。
どうやらあの騎士は鑑定持ちで、僕のクラスで大罪人扱いだと思ったのだとか…やっぱり鑑定持ちだったのか…
殿下にも何度も謝罪され、「絶対に守るから!」と言われ少し感動してしまった。マルチスさんも「悪いようにはしない。必ず何とかする」と言ってくれた。
ディークさんは「やはり下賤なる者!大罪人は処刑だ!」と叫んでいたが、マルチスさんに殴り飛ばされ、殿下からは「お前こそ!役立たずだった聖騎士隊の責任はとってもらうぞ!」と言われ、死ぬんじゃないかと思うほどの汗を流していた。
「一応言っておくけど、聖騎士隊の方々もアレは仕方ないと思うよ?」
「それは、分かってるよ」
念のための助言であったが、殿下もそれは分かっていたようだ。
結局はさっき言った通りその場で解散となり、馬車で帰ることになった。
帰りの馬車の中では、殿下がしきりに僕の他のスキルについて聞いてきた。この際だからと一度見せた[回復]や[岩の盾]を見せる。その他のスキルは馬車内では使えそうにないのでいくつか口頭で説明した。
もちろん歌ったりはしなかった。
そして[隠密]ではなく[隠蔽]がLv5であることを伝え、目の前から消えるように居なくなる僕に驚いていた。[隠密]は本来動作からくる気配などを遮断して無風無音で移動できるスキルだ。
似ているが違うスキルであるのだと説明してみた。
殿下は目をキラキラさせてその話を聞いていた。クラスはばれてしまったけれど、可愛い弟ができたので本当に今回の任務を受けてよかったと思う。殿下の方が年上だけどね。
「じゃあエド、またね」
「そうだねアレス!それにリーゼとクラウも。今回は中途半端になっちゃったけど、落ち着いたらまた一緒に狩りに出よう!」
殿下は笑顔でそう言って、帰って行った。
「なんだか、あっと言う間だったね」
「そうですね。でも悪いようにはならないと思います。アレスの事は、マルチスさんとかがちゃんとしてくれるようですし」
「うんうん」
2人も移動中に体を休めることができたようで楽しそうに話をしている。でも僕は少し気がかりであった。
どんなクラスでも気にしないと言っていた父上が、「大盗賊はない」と言って僕を追い出したのだ。他人である、しかも王族である者たちが僕を見逃してくれるだろうか?
「アレス?」
「どうしましたか?」
気付けば僕は立ち止まっており、2人に顔を覗かれていた。
「いや、成るようにしかならないんだろうなって…」
僕がそう言うと、2人は一瞬寂しそうな顔をしたがすぐに笑顔になって僕の腕にくっついてきた。2人の体温が心地よかった。
歩きづらくはなったけど、心は軽くなってゆく。
そしてリーゼのお腹が可愛く鳴いた。
「そう言えば、お昼まだだったね」
「ううー」
恥ずかしそうに僕の腕に顔をすりつけるリーゼ。
「中途半端な時間なので、スイーツでも食べに行きませんか?」
「行く!行こう!」
リーゼが顔を上げ、僕の腕をひっぱるように歩き出す。
「分かったから。でも美味しいお店なんて僕知らないよ?」
「そこは大丈夫です。さあ行きましょう!」
「うわっ!ちょっと!待ってよー」
こうして、僕は2人に引きずられるようにして人気のスイーツ店、『デザート処・有等菓流都』という、女性客ばかりのお店へと連れ込まれた。
「「「おかえりなさいませ!お嬢様!…っと、男?男だ、男が来た…」」」
出迎えた可愛いメイドさんたちと、周りの女性客たちの視線が痛かった。
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デザート処・有等菓流都
王都で人気のスイーツ店。季節の果物を大量に盛り、ベリーソースをたっぷりかけたアイスクリームのバフェ、「パフェ有等菓流都」が人気。お値段はなんと銀貨3枚!その他にもプリン有等菓流都やフルーツ有等菓流都と店名を冠したスイーツが人気。もちろん普通のソフトクリームや各種パフェ、パンケーキにホットチョコなどなど。定番スイーツも多種多様に取り揃え、可愛いメイドたちがご来店をお待ちしております。
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