103 遠慮しておくよ。こっちも忙しいんだよね
--- 数日前
「親方!それは本当ですか?」
「ああ。村長から聞いたから間違いないだろう」
私は、兄ぃたちのことがチラホラ噂になっており、「近々、様子見と言う名の捕縛作戦が始まる可能性がある」とヘパイトスさんから聞いた。
村に滞在していた不審な冒険者たちが情報源らしい。
チャールズさんたち『世紀末ハッシャー』の面々は、ヘパイトスさんのところにも来てオートバイの小型な奴を注文し、「絶対にお金貯めてきますから!」と最近は分所に戻っているようだった。
問題はもう一組。
どうやらどこかの貴族からの命により、噂の真偽を確かめに来たのだろうと説明を受けた。私の兄ぃのラブラブ新婚生活を邪魔するなんて…躊躇せず〇っておけば良かったと後悔した。
「どうしたら、良いですか?」
「俺もまあ、お前たちが居てくれると助かるんだがな。面倒ごとになる前に別の場所に潜伏する方が良いかもな」
私は考えた。
脳内で[未知の知]により自問自答を繰り返す。そして…
「親方!森に潜伏する方法ありませんか?なんなら暫く王都に行かなきゃならないぐらいの素材使う奴で…」
「潜伏?それに素材集めに王都って…ああそうか。うーんそうだな…ちょっと待て!」
ヘパイトスさんは少し考えているようだが、"きっとこの問いに答えを出してくれるだろう"と私のスキルが言っている。
「王都には亀を狩りに行ってくれ。少なくとも100体程度は欲しい。後は大量の魔石だな。1週間もあればあの遺跡で鉱石も溜まるだろう。2週間程度行ってきたら良い!下準備はこっちでしておくから、お前たちが亀さえ持ってきたらすぐに森に潜伏できるよう準備しておく!」
「ありがとうございます!」
ヘパイトスさんはやはり頼りになる。
あの遺跡についても、グリンちゃんたちもすぐにゴーレムを狩れるようになることも分かっている。また私は全て分かったうえで行動することになるが、私が全て段取りしてしまえば結果は変わるだろう。何気なく誘導しなきゃ。
「親方!王都で活動するならもっと強力な偽装の魔道具が必要だよね?仮面なんてどうかな?」
「仮面か…いいな!」
興味を示したヘパイトスに笑顔を向けながら、兄ぃとの幸せを壊されてなるものか。そう思いながらもついつい趣味に走って兄ぃに似合う仮面のデザイン作りに没頭していた。
◆◇◆◇◆
まもなく王都。
すでに仮面は装着している。
途中の激しい揺れも、さすがにつらくてユリアに「のんびり行こう」と提案していた。
ユリアから「それもそうか」と返ってきてからはゆっくりのんびりと進んでいた。早歩きほどの速度で進み、夜はのんびり交代で見張りながら、家から持ってきたベッドを出して眠りについた。
5日かけて王都まで到着する。
日数がかかったのは途中で金策として『魔の森』深層で1日狩りをして、最深層でもグリーンドラゴンも5体ほど倒してきたからでもある。みんなのレベルアップやスキルも増えたのでそれなりに危険もなく狩れた。
そしてようやくたどり着く。
王都を離れてから数か月という短い間であったが、冒険者ギルドに少し懐かしさを感じてしまう。
仮面をつけているとはいえ、受付には見知った顔もいてさらに緊張してしまう。リオールさんにヘルベットさん、それと…なんでローラさんもいるの?あれ?ローラさんはクールビレで良かったんだよね?
少し混乱するが、確認することはできない。
とりあえずは解体所に移動すると、ユリアとカロナで『魔の森』深層のグリーンエルク、サラマンダースネーク、ブラックモンキーを大量に出してゆく。事前に魔石だけ抜いておいたが、当然の様に解体所がざわついた。
「お嬢ちゃんたちすげーな!そこの2人と、それに仮面の3人とも一緒に狩ったのかい?」
「私は、冒険者ではなく傭兵ですので、多少手伝った程度ですよ」
解体所のおじさんの言葉に口調を変えて返しておく。ユリアの口元が笑っているがやめてほしい。
預り証を書いてもらってカウンターに戻る。
「ユリアちゃんとカロリーナちゃんだね。でもまだ新人さんでしょ?若いのに凄いのね!それともレアクラス2人なら当然って感じ?」
ユリアが預り証を提出すると、リオールさんがその数に驚いていた。ユリアもカロナもドヤ顔を見せている。
「あっ、そこの3人もパーティだよね?冒険者カード出してくれる?」
「私は傭兵ですので、冒険者ではないのですよ」
「「私も」」
僕の返答にリーゼとクラウも追随する。ユリアは口元をヒクつかせるのホントやめて?僕もつられて笑っちゃうから…
「そうなの?ついでに冒険者登録しない?パーティってことならすぐにランク上がりそうだし…」
「機会があればそうしますよ」
とりあえずここは濁しておこう。
「あの…」
横から急に声をかけられビクっとしてしまう。
声の先にはローラさんが立っている。
「ギルマスがお呼びです。大量の素材提供に感謝したいと。良ければ来てくれるとありがたいです!」
どういうことだろう…
「いや、遠慮しておくよ。こっちも忙しいんだよね」
と言った僕の腕をがしっと掴まれた。
「ちょっ!」
「何するんですか!」
リーゼとクラウが僕の手にしがみつくローラの手をはがそうとするが、ローラさんのちょっと鋭い猫爪が食い込んで外殻が…
「わ、わかりました。ちょっとだけなら…」
「やった!じゃあ、案内するね」
根負けした僕は大人しくギルマスの部屋へと案内された。
移動中、冒険者カードを出していない僕たち3人は自己紹介をしておく。そしてローラさんが最近クールビレから王都に移動になった話も聞いた。
クールビレで担当の冒険者が高額な素材などを大量に納品したかららしい。凄い冒険者もいたもんだなー。
そして3階のギルドマスターの執務室にたどり着き、ローラさんのノックと共に室内へと通された。
「よく来たな。まずは座ってくれ!」
相変わらずそこに居たのは、ギルド本部会長のエルフ、ミューズ・ノルドオバストさんだった。
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ローラ
地方都市、クールビレ男爵領の冒険者ギルドの受付のひとりだったが、担当だった某新人冒険者たちの活躍で見事王都行きとなった。金色の長い髪で豊かなお胸、そして猫耳な猫人族のお姉さん。新天地で心機一転、頼れる彼氏を募集中。
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