80 エドウィンのお母さん
「それは心配だよ。母のことはすごく心配だよ」
エドウィンは18歳の時に、三ヶ月の予定でアメリカに来たのだと言いました。すぐに帰るはずだったけれど、いろいろなことがあって、アメリカに住むことになったのです。
エドウィンには事情があって、国にちょっと帰って、また戻ってくるというわけにはいきません。それで、彼がアメリカ市民になって、母親を招待しようと思いました。
「市民権をとったから招待できるのに、母は来ないと言うんだ。言葉もわからないし、仕事もない場所には行けないからと。きっとぼくのじゃまをしたくないと思っているんだよ」
「さみしいですか?」
「それはさみしいよ。たったふたりの母子なんだ。兄弟がいないんだよ」
「先生、どうするんじゃ」とそう太郎が言いました。
「どうすればいいと思う?」
「先生のお母さんの名前は何ですか」とれいかがききました。
「……ソフィアという名前だよ」
エドウィンはそう言って、めぐみのほうをちらりと見ました。
「数学者と同じ名前ですね」とくるみです。
「そうなんだよ」
ああ、そうなんだ。
ソフィアはお母さんの名前だったのですね。めぐみは、ソフィアはパリにいる恋人かと思っていました。じゃ、stupid《間抜けな》なガールフレンドって、だれですか。もしかして、それって……。
「エドウィン先生、わたし達子供の質問に、真剣に答えてくれてありがとうございます。先生から、わたしたちに、ききたいことが何かありますか」と愛子が言いました。
「ひとつあるよ。頼みたいことがあるよ」
みんなが耳をかたむけました。
「めぐみ先生と仲良くね。よろしくお願いします」
めぐみが驚いて、「〇〇〇〇、〇〇〇〇」とはや口で抗議するように言いました。
「わたしが先生なんだから、生徒の前で変なことは言わないで、とめぐみ先生が怒っています」
とれいかが日本語に訳したので、みんなが笑いました。




